わにの日々-中西部編

在米30年大阪産の普通のおばさんが、アメリカ中西部の街に暮らす日記

タトゥーについて

2016-02-18 | 時の話題
 NPR(National Public Radio)で聴いた話:オハイオ州とミシガン州の州境トレドで、その道20年のタトゥー・アーティスト、ブライアン・フィン氏は、自分のショップがお休みの日には、傷跡を隠すためのタトゥーを彫っています。自傷やDV等で傷跡が残ってしまった人達に、無料でサービスを提供しているのです。
「材料費や設備費は少しで済むし、掛かるのは自分の時間だけで、誰かの1日を…もしかしたら人生をよい良く出来るなら、気分良く眠れるってもんだ。」だって。

 20歳のマディーさんは、鬱病に罹り12歳頃から自傷を始めました。鬱病は克服しましたが、幾重にも傷跡の残る自分の左腕を見るたびに、過去を思い出して哀しくなったそうです。でも、Finnさんに、黒い薔薇を彫ってもらい、「心の痛みから、自分を身体的に痛みつけていた過去の名残が、自分が誇ることのできる美しい薔薇に変えてもらえて、今は人生が一巡して元のあるべき所に返ってきたような気持ちです。」このセグメントは、NPRホームページの、ここで聴けます。マディーさんのタトゥー前後の腕の写真も見られます。


 私自身はタトゥーって、言い方は変わっても刺青だし、あんまり良いイメージはないです。古い人間ですから。でも、かつての「絶対キライ!」からは寛容になって、例えばオリンピック選手の五輪マーク等、人生の記念碑を刻んだタトゥーには、そりゃ今までの人生ずっとこのために頑張ってきて、ついに目標を達成した記念だもんね、と、思います。自分自身は、タトゥーがあったら温泉やスーパー銭湯に入れないという理由で入れたくないですけど。でも、この、傷を隠すためのタトゥーには、私も

 視聴者からのコメントの中にも、自分も自傷の傷跡の上にタトゥーを入れて良かった、もっと早くそうするべきだったという声があります。中には皮肉なコメントを残す人や、マディーさんのタトゥーが黒一色で安っぽいなんて人もいます(本人のコメントで、黒の薔薇を入れたかったけどお金が無くて入れられなかったって書いてあるのに)。日本では同じ解決法は使えなそうですが、タトゥーが全く珍しくないアメリカでは、Finnさんの善意は、外野に文句を言われる筋合いは全くないと思う。

 このストーリーの舞台であるトレドは、私の住む町から車で3時間ほど北の都市。この辺り、今までに住んだ度の街よりもタトゥー率が高くて、私の働いている会社でも米人の少なくとも8割はタトゥー入りだと思う。だから、受け容れられやすい土地柄かもしれません。過去を振り切る手助けをするタトゥー、過去何年もの苦しみと、今後何年もその苦しみを思い起こさせる寄す処が1時間半で消え失せる。私のタトゥーに対する偏見が、すこし減りました。