突然、無差別に家族の命を奪われたら・・・。犯人は捕まっても死刑ではなく『無期懲役』だと遺された遺族は納得できないしやり切れない。重大事件を起こした懲役囚の家族母親・父親が相次いで殺され、犯行現場には「ネメシス」の血文字が残されていた。ギリシア神話の、復讐の女神「ネメシス」。犯人の正体は、被害者遺族の代弁者か、享楽殺人者か、あるいは日本の司法制度に対する挑戦か。『テミスの剣』・『贖罪の奏鳴曲』などに登場した渡瀬警部や岬検事が、犯人を追うのだが・・・・。
「理不尽に他人の命を奪った者に同等の死をあたえるなど、大局的に見れば慈悲のようなものです。長く恨みに思わせず、苦しませもせず。世の中には死よりも、もっと苛烈で残酷な刑罰がある。極刑というのは死刑ではない。」(P335)
後半にどんでん返しとは言い難いが衝撃の結末が用意されて、個人テロや死刑制度について考えさせられた。
2017年7月文芸春秋社刊
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