読書備忘録

私が読んだ本等の日々の
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重松清著「木曜日の子ども」

2020-12-16 | 重松清
7年前、旭ヶ丘の中学校で起きた、クラスメイト9人の無差別毒殺事件。給食の鍋に殺鼠剤を入れた中学生の事件だ。犯人はただ一人スープに口をつけなかった生徒上田祐太郎であり、動機は不明だった。結婚を機にその地毒殺した舞台の中学校のあるに越してきた私(清水)は、妻の連れ子である14歳の晴彦との距離をつかみかねていた。前の学校でひどいいじめに遭っていた晴彦は、毒殺事件の犯人・上田祐太郎と面影が似ているらしい。この夏、上田は少年院から社会に復帰し、ひそかに噂が流れる・・・「世界の終わりを見せるために、ウエダサマが降臨した。」
 やがて旭ヶ丘に相次ぐ、不審者情報、飼い犬の変死、学校への脅迫状。一方、晴彦は「友だちができたんだ」と笑う。信じたい。けれど、確かめるのが怖い。そして再び、「事件」は起きた。子供の精神的暴力の痛みと肉体的暴力の痛みの深刻さ、その傷と後遺症の深さが描かれ、連れ子とのギクシャクした関係からきちんと家族に父親になりたいと死線を越えて奮闘する主人公の姿が眩しい。それに犯人が家族の至近距離まで近づいてくる恐怖や不気味さの描写が怖い。いつもの重松ワールドには珍しいサスペンス・ミステリーかと期待したが、終盤の展開・失速ともいえる終わり方にもガッカリ。いつもの感動と読み応えある内容ではなかった。
2019年1月角川書店刊

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