読書備忘録

私が読んだ本等の日々の
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夏樹静子著「喪失 ある殺意のゆくえ」

2020-05-26 | な行
九州テレビ放送(KTB)の敏腕ディレクター・杉原渓子(29歳)は、仕事はできるが男に縁のない独身女性。ある日「彼氏がいる」と見栄を張ったために、悪趣味な同僚たちに尾行される羽目に。今さら嘘とも言えず公園へやってきた渓子は、噴水前に立つ人待ち顔の紳士に駆け寄り、「お待たせ」と声をかけた。男は「シロウズさんですか?」と尋ね、そのまま渓子と車に乗りやがて・・・ふとした行きちがいで出会ったその男と激しい恋に落ちる。しかし、その男の正体は謎に包まれており、男には、渓子が理想の男性像として描く、亡兄の面影があった。それきり消息を絶った男に、想いをつのらせる渓子は、ゆくえを捜しはじめるが二度と会うことのないまま殺害されてしまう。その男は何者か、何故殺害されなければならなかったのか。同僚のカメラマン・立花洋介とその謎解きに挑み、男の正体を突き詰めていく。・・・70年代に書かれたこの作品は、当時の時代を反映して国際線を利用したトリックが書かれており錯綜した人間関係、携帯の無い時代のモラルや世相が展開の遅さと相まって素人の俄探偵の調査に無理が感じられたのは仕方がないのかも。旅情豊かな吸収を舞台に主人公の処女喪失と幻の恋を追う青春の喪失が鮮やかに描かれている。
1998年2月光文社文庫刊

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