白表紙に黒字で1文字題名の「0ゼロ」。なんだ、この本はという期待はあったのだがまさかの処女作盗作疑惑ミステリー・・・。「凄い原稿がある」ベストセラー作家が死の間際に残した一言より始まった原稿捜索。作家古谷悠は、自分の師と仰ぐ同郷の偉大な作家の岩佐が亡くなり出版社・礼山社の編集者仲本美知から、評伝を書く依頼を受ける。岩佐の遺品整理をやるかたわら人生を辿っていくうちに、未発表の原稿があることが分かってきたが、それはどうやら岩佐の人生の暗部に繋がりかねないものだった・・・。終盤の学生運動を背景にした挿入中編小説「屈曲の海」は面白かった。そんな6~70年時代だったのかあの時代は、哀れなNとK。「スタート地点―――ゼロ地点から間違っていたのだ。間違ったままスタートさせてしまった人生に何の意味があったのだろう。その後は全て“虚構” だと思っていなかったか?」(P348)
2022年2月河出書房新社刊
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