深く潜れ(Dive Deep)! キネシオロジー&クラニオセイクラル・ワーク(クラニオ)の蒼穹堂治療室

「ココロとカラダ」再生研究所、蒼穹堂治療室が送る、マニアックなまでに深く濃い、極私的治療論とお役立ち(?)情報の数々。

神々の住まう場所

2017-08-28 22:16:13 | 趣味人的レビュー

原作は『BLACK LAGOON』などを手がけた広江礼威、そして監督は『Fate/Zero』、『アルドノア・ゼロ』のあおきえいによる、アニメ・オリジナル作品『Re:CREATORS〈レクリエイターズ〉』(面倒なので以下『RC』)が佳境を迎えている。
『RC』は、よくあるバトルもののフォーマットを使いながら、その実、クリエイターたちが自らを語った作品でもある。

ある時、東京に、互いに作品として全く関連のないマンガ、アニメ、ゲームなどに登場するキャラクタが、作品に描かれたままの姿と能力を持って現界し、現実世界の中で戦いを始める。彼ら「被造物」が突然、実体を持って現界した裏には、やはり「被造物」として現界した軍服コート姿の女性キャラ(その姿から以降、「軍服の姫君」と呼称されるようになる)が関係しているらしい。
今は学生だが、将来はマンガやアニメなどのクリエイターを目指す主人公、水篠颯太(みずしの そうた)は、現界したキャラクタの元の作品を知っていたため、その作品の生みの親(『RC』では「創造主」そして「神」と呼ばれることになる)たちを訪ね、彼らと一緒に何が起こっているのかを探り始める。
この時点で現界したキャラは、颯太たちのところに集まった者たちと「軍服の姫君」のところに集まった者たちの2つに別れ、両者の間で戦いが勃発。現界した「被造物」の中にも死亡者が出る。また「被造物」によって自衛隊の武器が勝手に使われ、街にも被害が出るに至ったため、日本政府も秘密裏に動き、内閣官房参与である菊地原亜紀をトップとする対策室が組織される。菊地原の対策室には颯太の側の「被造物」たちと彼らを生み出したクリエイターたちが集められ、「軍服の姫君」はどの作品のキャラで、何を意図してこのような戦いを仕組んでいるのかを探るのだが、実は「軍服の姫君」は颯太と深い関わりがあった…。

──というのが物語前半となる第1クールの内容。ここでちょっと古いが第1クール開始時の予告編を貼っておこう。



第1クールでは颯太が「軍服の姫君」の正体について語り、ずっと隠していた自分自身の過去の「罪」と向き合うことで、対策室側が一丸となって「軍服の姫君」の陣営と戦う策を立て、その準備を整えるところまでが描かれる。
そして後半となる第2クールでは2つの陣営が入り乱れての戦いが繰り広げられるのだが、「軍服の姫君」の力は想像以上で、十全な準備を整えていたはずの対策室側の戦術に綻びが生じ、「被造物」たちが次々に傷つき死んでいく、というのが現時点での状況だ。

そういうわけで、『RC』は両陣営の戦いの行方はどうなる?ということが作品の大きな要素だが、それと同時に(というか実はそれ以上に)キャラクタである「被造物」にとって「神」、「創造主」であるクリエイターたちが日々どんな苦しみの中で作品を生み出し、またその中で作品や主人公に何を仮託しているか、そして「神」であるクリエイターも作品の上で決して万能などではないこと、その描かれる胸のうちが『RC』のもう1つの大きな要素になっている。
下手すると、そうした話は視聴者にはどうでもいいクリエイターの勝手な愚痴、あるいは楽屋落ちのようになってしまい、見ている側がシラけてしまう危険性があるが、『RC』は「作る側」と「作られる側」をいくつもの入れ子構造にすることで、そうした業界やクリエイターの姿がほどよい距離感を持って描かれているため、そうしたクリエイター自体を『RC』という物語のキャラとして楽しんで見ることができる。

そしてまた、『RC』はクリエイターの夢──自分の作ったキャラが現実のものとして目の前に現れてくれたらなー、という──を擬似的に実現させた作品でもあるのだと思う。『RC』という物語の中に現界したキャラクタたちの元々の作品は、ロボットものあり、中世を模した異世界ものあり、魔法少女ものあり、不良少年ものあり、近未来のハードボイルドあり、学園ホラーあり、エロゲーありと、作品の世界観もキャラデザも全く異なるもので、それを1つの作品の中に入れ込むのは相当な力業だと思われるが、それを実現しているのだから凄い。

『RC』は『SHIROBAKO』などとはまた違った意味で、「創造主」であり「神」であるクリエイターたちの喜び、悲しみ、苦しみ、そして彼らがなぜ物語を作り、その物語で何を語っているのか、そんな思いがぎっしり詰まった作品だ(ゼヒ第2クールのEDを見てほしい)。


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