貴志祐介の『新世界より』は前々から興味があって読もうと思いながら、ずっとそのままになってしまっていた。だからアニメ化されると知った時は、心の中で思わず「おおっ」と叫んでしまったものだ。そのアニメ『新世界より』が、2クール全25話を費やして完結した。
舞台は1000年後の日本。小川が流れ水車が回り、水田が広がる昔懐かしき田園風景と、その社会秩序を保つための隠された仕組み、そして起こる壮絶な戦いの中を生きる、渡辺早季(さき)たちの姿を描く。物語はおおよそ3部構成になっていて、それぞれ早季たちが12歳、14歳、26歳の時のエピソードが語られる。
この『新世界より』は、幼くて世界のことを何も知らないままだった早季の成長とともに、読者/視聴者も少しずつ隠された世界の姿を知っていくようになっているため、何も知らないままこの作品に入っていくのがいい。だから、ここでも作品の具体的な内容に触れることは、これ以上何も書かない。
ただ私がアニメ『新世界より』を最後まで視て思うのは、この作品は早季たちの成長物語であると同時に、読者/視聴者にもまた成長を促す物語でもあったのではないか、ということだ。
では、ここから先はアニメのOSTから「影の伝承歌 第1部」とともに。
早季たちは、年を重ねて世界のことをより深く知ってしまうことによって、それまで信じてきた「正しさ」の根拠を失い、その「正しさ」が揺らいでいく。
あなたは自分が今、正しいと信じていること、あるいはそう表明していることを、2年後も、あるいは10年後も同じように確信を持って、正しいと言うことができるだろうか。そもそも、その「正しさ」の根拠とは何だろうか。そしてその根拠は、時を経てこの世界のことをより知ってしまった後も、同じように根拠たり得るだろうか。
そして、アニメには更なるサプライズが用意されている。
この記事の表題に掲げた「偽りの神に抗え。」は、アニメの『新世界より』が始まった当初からのキャッチコピーである。
このコピー、いろいろなところでたびたび目にしていたのだが、少し前から忘れてしまっていた。それが最終回を見終わった後にYouTubeでOSTを探していて、上の「Kage no denshouka dai ichibu」を見つけた時、そこについていた絵でこのコピーを改めて見た。
その瞬間、それまで視てきたアニメ『新世界より』の像が私の中で一気に崩れ落ち、全く違う姿で立ち現れてきたのだ。あのコピーによって視点が180°反転させられ、全く違う意味合いを持った『新世界より』という物語が、だまし絵のように浮かび上がってくる仕掛け──。
もし、あなたがこれからアニメ『新世界より』を視るのなら、最終回まで見終わった後、もう一度この「偽りの神に抗え。」というコピーを思い出してほしい。ついでに、このコピーが書かれた、「Kage no denshouka dai ichibu」についているあの絵も見てほしい。同じ言葉が、同じ絵が、それまでと全く違って見えてくるはずだ。
『新世界より』は、それを読む/見る者の意識を揺さぶり続ける。
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