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絶望系

2018-09-29 22:27:02 | 趣味人的レビュー

『SWEET HURT』という曲でデビューしたReoNaというシンガーにつけられた「絶望系アニソンシンガー」というキャッチフレーズが、一部で批判にさらされている。「なんだよ絶望系って」、「絶望系とは?? こんなに癒されてるのに…?」、「絶望系アニソンシンガーとかいう無能宣伝、確実に逆効果説」、…。
だがReoNaの「絶望系アニソンシンガー」というのは、「絶望系+アニソンシンガー」じゃなくて「絶望系アニメ+テーマ曲シンガー」という意味なんだけどね。

その彼女がEDテーマを歌う絶望系アニメが『ハッピーシュガーライフ』(長いので以下『HSL』)だ。愛に憑かれた叔母の元で育ち、愛とは何かを知らないまま生きてきた松坂さとうは、母に捨てられた少女、神戸しおと出会い、初めて人を愛することの甘さを知る。そして彼女は、しおとの幸せな暮らしを守るために何でもすると心に誓った──。

主な登場人物がことごとく、どこか壊れている、というのは今の作品なら別に変わったものとは言えないし、物語の中で衝撃的な出来事が起こるのも全然珍しいことではない。特に魔法少女ものと呼ばれる作品は『まど☆マギ』にしろ『魔法少女育成計画(まほいく)』にしろ『魔法少女サイト』にしろ、かなり残酷でエグイ話だ。

ただ、この『HSL』がそれらを越えた「絶望系」たる所以は、最終回のクライマックスで、さとうとしおの2人が大きな気づきを得て幸せに終わるのだが、その2人の幸せが他の誰も幸せにしないどころか、絶望しか与えないものだった、というところにある(ちなみに原作はまだ完結していなくて、このラストはアニメオリジナルのようだ)。
自分たちの幸せが他の人たちの絶望と背中合わせである、あるいは他の人たちの絶望の果てにある──まさに「絶望系」アニメの名にふさわしい壊れっぷりではないか。

そして『HSL』に描かれた世界は決して絵空事ではない(制作会社は絵空(Ezo'la)なのだが)。そのこともまた『HSL』を見ているとたまらなく絶望的な気持ちになる所以である。

ただ、松坂さとうのCV・花澤香菜と神戸しおのCV・久野美咲の組み合わせは『3月のライオン』の仲良し三姉妹の次女と三女と同じなので、個人的には『HSL』を見ているとつい頭の中で『3月のライオン』がダブってしまう。『3月のライオン』は純粋なヒューマンドラマなので、自分の中でこの2つが重なってくるのは、かなりシュールな体験だった(だが嫌いじゃない)。

けれどまた、『3月のライオン』の三姉妹と『HSL』のさとうとしおは、正反対の位置にいるようでいて実はとても近いのかもしれない。その2つを分かつものは多分、彼女たちを取り巻くわずかな違いとそれがもたらす連鎖に過ぎない。その差をもたらすものは絶望的なほど小さなことなのだ。

さて、この「絶望系」というタイトルの記事を締めくくるには、やはり「絶望系アニソンシンガー」の歌声が必要だろう。だから──。




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