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ヒポクラテスのものだという、こんな言葉がある。
『代替医療のトリック』(新潮社刊)(注1)
という本について著者たち(注2)
は、
だ。
(注1)原題は『Trick or Treatment ?』というが、これはもちろん「(代替医療は)トリックなのか治療なのか?」という意味だけでなく、ハロウィンで子供たちが家々をまわる時に言う"Trick or Treat"のもじりでもある。
(注2)この本は、ケンブリッジ大学で物理学の博士号を取得、BBCで科学関係のドキュメンタリーを数多く制作し、国内外で多くの賞を得たサイモン・シンと、ドイツで物理学の博士号を取得した後、ウィーン大学で代替医療の施術と研究に従事し、代替療法の分野で世界初の教授となったエツァート・エルンストの共著である。
この本は、第Ⅰ章で医学分野における科学的調査について述べた後、第Ⅱ章で鍼、第Ⅲ章でホメオパシー、第Ⅳ章でカイロプラクティック、第Ⅴ章でハーブ療法をそれぞれ取り上げ、科学的知見に基づく医学的有効性について論じている。そこに述べられた途中過程を全部すっ飛ばして
、それによって導かれた結論部分のみをここに引用すると、以下のようになる。
まずは鍼について。
。多分これを読んだら激怒する
鍼灸師もいるだろう。
(注3)偽薬効果、つまり本物の薬の代わりに偽の薬を飲ませても、一定の割合で治療効果が得られる現象のこと。
では、ホメオパシーはどうだろう?
・患者がプラセボ効果に頼って、正しい医療を受けるのが遅れるリスクがある。
・ホメオパシーのレメディはプラセボ効果しかないにも関わらず、不当に高い値段で売買されている。
といったことを指弾する。ホメオパスに真顔でこんなことを言ったら、殺されてしまいそうだ。![](https://blogimg.goo.ne.jp/img_emoji/m_0252.gif)
さて、次はカイロプラクティック。『代替医療のトリック』はカイロプラクティックの脊椎マニピュレーションが腰痛治療に、理学療法や運動療法などの通常治療と同じくらい効果がある(=同じくらい効果がない)とした上で、
。ついでに、医学的有効性とは違う意味でカイロプラクティックを![](https://blogimg.goo.ne.jp/img_emoji/m_0199.gif)
そしてハーブ療法については
を指摘している。
だが『代替医療のトリック』は、これで終わりではない。
だから本稿も2に続く。![](https://blogimg.goo.ne.jp/img_emoji/m_0164.gif)
科学と意見という、二つのものがある。そしてこの言葉から始まる
前者は知識を生み、後者は無知を生む。
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どんな答が出るにせよ、われわれがこの本を書くことにしたのは、真実を知るためだ。代替医療の真実を教えましょうと語る本はすでに山ほど出版されている。しかし本書は、厳正さ、根拠の確かさ、利害関係のなさという三つの点で、かつてない高い水準に達していると自負している。と述べているが、果たして本当にその言葉通りのものだろうか? いずれにせよ、これはなかなかどうして食えない本
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(注1)原題は『Trick or Treatment ?』というが、これはもちろん「(代替医療は)トリックなのか治療なのか?」という意味だけでなく、ハロウィンで子供たちが家々をまわる時に言う"Trick or Treat"のもじりでもある。
(注2)この本は、ケンブリッジ大学で物理学の博士号を取得、BBCで科学関係のドキュメンタリーを数多く制作し、国内外で多くの賞を得たサイモン・シンと、ドイツで物理学の博士号を取得した後、ウィーン大学で代替医療の施術と研究に従事し、代替療法の分野で世界初の教授となったエツァート・エルンストの共著である。
この本は、第Ⅰ章で医学分野における科学的調査について述べた後、第Ⅱ章で鍼、第Ⅲ章でホメオパシー、第Ⅳ章でカイロプラクティック、第Ⅴ章でハーブ療法をそれぞれ取り上げ、科学的知見に基づく医学的有効性について論じている。そこに述べられた途中過程を全部すっ飛ばして
![](https://blogimg.goo.ne.jp/img_emoji/m_0205.gif)
まずは鍼について。
本章では、鍼はプラセボ(注3)うーむ、これはひどい書かれようだにすぎないという可能性がきわめて高いことを明らかにした。しかし、本章を終えるにあたりひとつの問題を提起しなければならない──その問題に対する答いかんによっては、鍼が現代の医療システムのなかで一役演じる可能性があるからだ。すでに見たように、医療におけるプラセボ効果はきわめて強力であり、疑いようもない影響を及ぼす。そしてどうやら鍼という治療法は、きわめてプラセボ反応を引き出しやすいらしい。そうだとすれば、鍼治療師はプラセボ医療、つまり本質的には偽の治療を行って患者の役に立つことで、存在を正当化できるのではないだろうか?
(中略)
プラセボ効果に大きく頼った治療法は、早い話が中身がなく、メスマーの磁化水やパーキンスのトラクターに通じる。鍼は、患者が信じなければ効果がないので、もしも最新の研究結果が広く知れわたるようになれば、プラセボ効果がほとんど消えてしまう患者も出てくるだろう。そうなっては困るから、鍼がまとっている神秘的な雰囲気が消えないよう、そしてその威力が失われないよう、みんなで共謀して事実に口をつぐみ、患者がこれからも鍼の効果を得られるようにすべきだ、主張する人もいるかもしれない。
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(注3)偽薬効果、つまり本物の薬の代わりに偽の薬を飲ませても、一定の割合で治療効果が得られる現象のこと。
では、ホメオパシーはどうだろう?
長年ホメオパシーによる治療に携わり(そして自らも治療を受けた)エルンスト(←注:この本の著者の一人)は、この治療法は効くものと思っていた。(中略)そして更に、ホメオパシーの問題点として、
エルンストが考えを変えるにあたり重要な役割を果たしたのは、1991年にドイツの薬理学者、W・H・ホプフ教授によって行われた研究だった。ホプフ教授は、ハーネマンがシンコナを用いて行った最初の実験の再現を試みた。(中略)ところがホプフ教授が学生たちを被験者にしてシンコナと偽薬を比較してみたところ、まったく違いはみられなかった。(中略)要するに、ホメオパシーの基礎となったハーネマンの結果は事実と違っていたのである。臨床試験はエルンストに、ホメオパシーの薬はよくできた偽薬にすぎないことをはっきりと教えてくれた。
・患者がプラセボ効果に頼って、正しい医療を受けるのが遅れるリスクがある。
・ホメオパシーのレメディはプラセボ効果しかないにも関わらず、不当に高い値段で売買されている。
といったことを指弾する。ホメオパスに真顔でこんなことを言ったら、殺されてしまいそうだ。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/img_emoji/m_0252.gif)
さて、次はカイロプラクティック。『代替医療のトリック』はカイロプラクティックの脊椎マニピュレーションが腰痛治療に、理学療法や運動療法などの通常治療と同じくらい効果がある(=同じくらい効果がない)とした上で、
筋骨格系とは関係のない症状に苦しむ患者は、カイロプラクターには治療できないというのは妥当な結論だろう。なぜなら、カイロプラクティックを筋骨格系でない身体部分の症状に対する治療法として科学的に検証した場合、効果が認められたためしはないからだ。また(これは再度強調するに値する点だ)、脊椎マニピュレーションが、耳炎から過敏性腸症候群まで、多様な症状に有効だと考える理由はどこにもない。と断じる
以上をすべて考え合わせると、科学的根拠によれば、腰痛に直接かかわる問題を別にすれば、カイロプラクターの治療を受けるのは賢明ではないということになる。
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たとえばカイロプラクターは(とくにアメリカでは)新しい患者を獲得することにとても熱心で、必要もない治療をするというのはよく言われることだ。経営の実践セミナーがいたるところで開かれ、カイロプラクターが患者を獲得するにはどうするかという本が無数に出版されている。そうした本を見ると、医療よりむしろ金銭面に力点が置かれていることが多い。とも批判しているが、余計なお世話だ、と思うのはオイラだけ?
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そしてハーブ療法については
ハーブ療法を取り上げる本章が、鍼、ホメオパシー、カイロプラクティックを扱ったこれまでの章とは大きく異なるものになることは、すでに明らかだろう。(中略)存在してもいない経絡に鍼を打って耳が聞こえるようになるものだろうか? 有効成分を含まない超高度希釈のホメオパシー・レメディを飲んで、花粉症が治るだろうか? 脊椎をマニピュレートして、喘息が軽快するだろうか? それに対し、植物には薬理学的活性を持つ化学成分が多数含まれており、そのうちのいくつかが人間の健康に役立ったとしても驚くにはあたらない。そのためハーブ療法は、ほかの三つの治療法と比べて、はるかに広範に科学的に利用されている。と述べながらも
それどころか、今日の薬理学のかなりの部分がハーブ療法の伝統から発展してきたことは、いわば常識である。
1 ハーブ薬の直接的毒性というハーブ療法の潜在的な危険性
2 他の薬との相互作用によって引き起こされる間接的反応
3 汚染及び混ぜ物の危険性
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だが『代替医療のトリック』は、これで終わりではない。
代替医療は、年間数百億ポンドものグローバル産業になっているが、全般に、言われているような医療上の効果はない。つまり、何百万人という患者があてにならない治療法に頼って、金を無駄に費やし、健康を危険にさらしているということになる。として更なる攻撃が展開されるのだ。
だから本稿も2に続く。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/img_emoji/m_0164.gif)
それにしても代替医療の最も代表的なものがことごとくけちょんけちょんな言われようですね。
逆に言うと、それくらい数ある代替医療の中では脅威に見られてるってことなんでしょうね。
ところで先の筋反射テスト考といい、気になる話が軒並み次回に続くにするあたり、ひきが上手いですね。
思わず気になって、頻繁にスイッチングの有無を確認しちゃったりしてるので、早めに続きを書いていただけると嬉しいです。
『代替医療のトリック』、結構刺激的な本でしょ。本当は立ち読みですます予定が、つい購入しちまいましたよ(だから、こうやって、それをネタに記事を書いてるわけですが)。
>ところで先の筋反射テスト考といい、気になる話が軒並み次回に続くにするあたり、ひきが上手いですね。
いや、これは「読み手をじらしてやろう」として、わざとそうしてるのではなく、途中で切らないと身が持たないためです。何しろ何度も書き直しを繰り返すため、毎回1本書くのに3時間
検証する前からあらすじが決まっているような印象を受けそうですね
わからないところはわからないと正直に書くと出版に至らないので強引な手法をとっているのでは・・・
そんな穿った見かたをしてしまいます
>検証する前からあらすじが決まっているような印象を受けそうですね
>わからないところはわからないと正直に書くと出版に至らないので強引な手法をとっているのでは・・・
この本のコンセプトは「あくまで公正、中立な立場から、代替医療の有効性を科学的に検証する
まぁ 信じない人を信じさせる様な治療が出来ない治療側にも(もちろん治療家のチョイスも問題はあるかと・・)問題はあるのだと受け止めなければなりませんね。。
僕も精進して先生の様にならなくてはです!!
この本では、例えば鍼の有効性を確認するための「科学的」検査として、実際に鍼を打った場合と打つふりをした場合、経穴に打った場合と経穴から外れた点に打った場合を比較して、効果に有意な差が認められない、として鍼はプラセボと結論づけていますが、(鍼灸師なら既におわかりの通り)所詮は「科学的」ということのアリバイ作りのための「実験のための実験
これでは、著者たちの立派なプロフィールが泣いて