仙丈亭日乘

あやしうこそ物狂ほしけれ

「本当は怖ろしい万葉集」  小林惠子

2005-10-16 11:36:06 | 讀書録(歴史)
本当は怖ろしい万葉集―歌が告発する血塗られた古代史

祥伝社

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お薦め度:☆☆


この人の本は15年程前に「聖徳太子の正体」といふ本(下記参考)を読んだ。
聖徳太子は西突厥の達頭(タルドゥ)可汗だといふ内容だった。
これは世界の歴史、特にアジア史を視野に入れた壮大なロマンでとても面白かつた。

その面白さをこの本にも期待したのだが、期待外れだつた。
先年流行した、朝鮮語で萬葉集を讀み解くといふ試みを採り入れて、自分の歴史觀を補強しようといふ意圖はわかるが、かなり無理がある。
小林氏には、萬葉集には手を出さないはうが身のためだつたね、と申し上げるしかない。

そもそも、小林氏も認めてゐる通り、古代朝鮮語での詩歌で殘つてゐるのはわづかに14首。
ここから何か普遍的な法則を見出すことはできない。
小林氏は、古代朝鮮語で萬葉集を讀むといふ、李寧煕氏の著書を下敷にしてをられるが、そもそもそれが間違ひだと云はざるを得ない。
自らの主張に少しでも客觀性を持たやうとするならば、根據のあやふやな他人の著作などをあてにすべきではないと思ふ。

「聖徳太子の正体」がスケール豐かな、それなりに説得力のあるものだつただけに、
本書のやうなものを出したことは小林氏のためにも惜しまれる。


2005年9月1日讀了


<參考>
お薦め度:☆☆☆☆

聖徳太子の正体―英雄は海を渡ってやってきた

文芸春秋

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