コロナウイルス自粛の中で書き上げました。短編童話ですのでご笑覧ください。
光の国の王女様
四つ葉のクローバー
小さな小学校の校庭は、お昼休みになるととても賑やかです。
「鬼ごっこする者、この指とまれ!」 「折り紙する人、この指とまれ!」
「すもうする者、この手つかめ!」 声の大きい子が、うでを高く上げて遊んでいる子供たちに呼びかけると、集まって来て腕につかまるのです。
「四つ葉クローバーさがす者、この指とまれ!」
いつもは、おとなしいヒサちゃんが大きい声で呼ぶと4人がかけ寄って来ました。四つ葉のクローバーを見つけると、しあわせになるのですが、なかなか見つからないのです。
「あれ、あなたは転校して来たの」
四つ葉のクローバー組に目のパッチリとした小柄の子がいることに四人が気づいたのです。少女は、にっこりとほほ笑んでぴょこんと頭を下げて言いました。
「わたしの名は、ひかり子です。仲良くしてね」
「今日は見つからないからまたあしたね」
ヒサちゃんたちは教室へ走って行きました。時間におくれると先生に注意されてしまうのです。でも、ひかり子ちゃんは教室にはいませんでした。
「あれ、どこへ行ったのかなぁ」
つぎの日もお昼休みには、ひかり子ちゃんは校庭でみんなを待っていました。4人組は
「今日こそ四つ葉を見つけるぞ」とはりきってクローバーのたくさん咲いている土手へ走って行きました。しばらくすると
「あっ、見つけた」ひかり子ちゃんが、四つ葉を見つけたのです。
「まぁ、ひかり子ちゃん、すごいね」
みんなは、クローバーの花の首飾りを作ってひかり子ちゃんの首にかけました。ひかり子ちゃんは、はずかしそうでした。
お昼休みの終わりのチャイムで、みんなは教室にもどりましたが、ひかり子ちゃんは、今日も教室にはかえりませんでした。
子ガメを守る子どもたち
その夜、ヒサちゃんはひかり子ちゃんを心配してベッドでうとうとしていると、クローバーの首飾りを下げたひかり子ちゃんが、にっこりほほ笑んでいました。
「あら、ひかり子ちゃん、どこにかくれていたの」
「わたしは、お空を飛んでいましたよ。毎日、おじいさまにお知らせしないといけませんから」
「ひかり子ちゃんのおじい様は、どこにいらっしゃるの」
「とても遠い光の国の王様です。満月の夜にキラキラと光っている砂浜を見たことがあるだろう。カメたちは、あの美しい浜辺に卵を産んでいるのだが、浜が人間に荒らされてしまうのじゃ。その浜辺を守りなさい、とわたしはと言われたのです」
その話を聞いてヒサちゃんは友だちと「子ガメ見守り隊」をさっそく作りました。
「朝早くから子ガメがみぞに落ちていないか、行く先をまちがえていないか、カメの卵を盗むものはいないかと見まわっています。それでかわいい子ガメが、たくさん産まれて海にかえっていくのです」
パパとママは原爆で死んだ
ひかり子ちゃんは、夢の中で姿を現しますからヒサちゃんは、楽しみに布団に入ります。
「家には、パパとママがいないのでさびしいです。パパとママは、小さい時に長崎と言う所で亡くなったから顔もおぼえていません。弟はまだ赤ちゃんでした。
長崎には平和をお祈りする人が昔からたくさんいるのでお会いして来なさいと、おじい様に言われてパパとママは、出かけたのですが、その日におそろしい爆弾が落とされたのです。その爆弾は太陽のようにあつい熱を出して町の人たちをあっと言う間に黒こげにしてしまったのです」
ヒサちゃんは、「はだしのゲン」というマンガを思い出しました。親を原爆で亡くしたゲンががんばって生きる話です。おとなたちは、どうして戦争をおこすのかお父さんにたずねました。
「それは国土の取り合いだよ。国土には、石油などの資源があるし、田畑をつくる土地もあるので勝った国は豊かになれるからだ。でも、勝っても負けても人々は沢山死ぬし、負けた国はとても貧しくなっちゃうから戦争はぜったいに起こしてはいけないね」
ヒサちゃんも人々を不幸にする戦争には、ぜったいに反対です。
「わたしは、戦争でおそろしい爆弾が落とされた長崎に来ていますよ。パパとママの亡くなった所を見たくて、おじい様のお許しをいただいて来たのですが、たくさんの人が亡くなったことを思うととてもつらくなってしまいました。坂の上の大浦天主堂と言う教会には、豊臣秀吉が命令して処刑した多くの人たちの石碑があります。秀吉などの将軍がよくない教えとしてきびしく取りしまったキリスト教の信者たちは、天草の島々にかくれて教えを守り、教会を建てて平和をお祈りしました。パパとママが戦争で亡くなったのもキリスト教の方たちがひどい目に合ったのも同じ戦いです」
夢の中のひかり子ちゃんは、とても大きく見えました。
おじい様へのお願い
「お帰り。ひかり子よ、長崎はどうであったかな」
「パパとママはここで亡くなったんだと思うと、とてもお会いしたくなりました。戦争は本当におそろしくて、なみだが止まりませんでした。
それから地球のどこでもみなさんがマスクをしていました。こわいウイルスとの戦争だという人もいました。肺炎と言う息の出来なくなる病気を恐れているのです。おじい様、地球に住む人たちにどうして苦しみをあたえるのですか」
「そのウイルスは、暗い星の王の使者じゃよ。人間たちが森を切り開き薬をまき、動物や虫たち鳥たちを飢えさせ、海を汚して魚や貝たちを苦しませるので、こらしめてやろうというのじゃ。わしも人間どもの行いには困っておるが、子どもたちが子ガメを救ってくれたり、若者たちが汚れた海をそうじしたり、荒れた森の手入れをしたりしているのでがまんしておるのじゃ」
「でも、こらしめてもだれも救われません。お願いです。どうか、おじい様のお力でウイルスを地球から引き上げさせてくださいませんか」
「暗い星の王と話し合ってみよう。かわいい孫のひかり子の頼みじゃからのう」
夢の中のひかり子ちゃんは、涙をながして必死でお願いしていました。気がつくとヒサちゃんの頬も涙がぬらしていました。きっとウイルスは暗い星へもどるでしょう。