肩の凝らない漢方の話

漢方薬にまつわるあれこれを、気の向いた順に語っていきます。
私たちの生活に根差した漢方の世界をご紹介します。

「小腸」の話

2023-08-23 11:36:22 | 健康たより
 
朝夕に虫の声が聞こえてくるようになりました。そういえば、もう処暑ですね。
厳しい暑さも峠を越してくれるとよいのですが。

前回の「心」と今回の「小腸」は臓腑陰陽の関係にあり、対になっています。
「小腸」の働きは「受盛の官、化物出ず。上口は胃の下口で、下口は水分にあたり、水穀を分離し、大小便を分け、大腸、膀胱にわたす。」
つまり、「胃」で消化された糟粕を受け取り、栄養分を吸収し、固形物と水分に分けて大腸と膀胱にわたす働きをすると考えられます。
 「小腸」の働きが弱ると栄養分の吸収が十分できなくなり、エネルギー不足になりやすくなります。
 
お盆休みにおいしい物や冷たい物をたくさんとったという方は、特に注意が必要です。
この時期、夏バテになる方が増えます。
たまった疲れを取り除き、胃腸の働きを良くするように心がけましょう。
ぬるめのお風呂にゆっくりつかる。消化の良い、温かい物を食べる。
夜寝る前に足裏からふくらはぎをやさしくマッサージするのも効果的です。
それに合わせて、体質に合った漢方薬もお試しください。

最近、なんだか調子が悪い。
「どこも悪くないですよ。」「様子を見ましょう。」と言われたけれど…
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「心(しん)」の話

2023-08-03 16:27:30 | 太田薬局からのお知らせ
 
酷暑の夏、私たちの体は、汗をかくことで体温を下げます。発汗は、大切な生理現象です。
漢方では、汗を「心(しん)の液」ともいい、多すぎる発汗は「気」と「水」を消耗し、「心」を弱らせると考えます。

 「心」の働きは、現代医学の心臓と大体同じと考えられています。
 「心」は蓮の花の蕾のような形をしており、ただ血液を送り出すだけでなく、
いわゆる「こころ」の働きも「心」がやっていると考えられています。
君主の官、神明出ず。諸臓は、心の支配を受けます。生命活動の主観で、すべての精神意識、思惟は、「心」の大事な働きです。
精神のうち、神の入れ物です。

 「心」は陽気を生む場所です。その陽気が皮膚から抜け出すのが、汗です。だから、汗を心の液ともいうのですね。
夏の暑さに順応できない、苦み成分のとりすぎ、酸っぱい物のとりすぎでも「心」は弱るといわれています。
また、発汗過多、胸騒ぎ、憂愁、恐れ、悲しむ、などの心の動きも心を弱らせます。
 そして、心が弱ると悲しみすぎるようになります。悪循環です。

 「気」と「水」を補って心の働きを強めましょう。
暑さのせいか食欲がない、疲れが取れない、気が晴れない、汗をかきすぎる。
そんな方は一度ご相談ください。
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「湿」について

2023-06-30 16:31:01 | 薬食同源
店の睡蓮が花を咲かせました。
小さな花がひとつきりですが、可憐な姿は、湿気にやられた心を晴れやかにしてくれます。

梅雨とはいえ、このところの湿度の高さに心だけでなく、体調を崩す方もいらっしゃるのではないでしょうか?
漢方では、「湿」は五邪の一つ。病気を起こす原因と言われています。
消化を助ける「脾」は、湿を嫌います。
自然界に湿が多すぎると脾の働きが弱くなり、胃の調子が悪くなるといわれています。
この時期、食欲不振や消化不良、倦怠感などの不調を感じる方は、
ほんのり甘く、温かい飲食物をゆっくり味わって、食べてみてください。
しょうが湯、甘酒、おかゆ、ココアなど、
この時期に敬遠しがちな食べ物ですが、脾の働きを助けてくれると思います。

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こぶし

2023-03-07 15:46:00 | 薬食同源
 杉花粉が飛びだす前に鼻の薬が採集されているのをご存知ですか?
 そろそろ咲きだすコブシのことです。
 コブシ モクレン科の落葉低木です。蕾の形から拳(コブシ)が和名の由来です。 
 薬になるのはこの開花直前の花蕾を乾燥させたものです。生薬名を辛夷(しんい)といいます。

 辛夷は「九竅(人間の九つの穴で外に開いて、五臓の気が流通している場所)を通ず」と言われています。
 九竅とは鼻2穴(肺)眼2穴(肝)耳2穴(腎)口1穴(脾)前陰と後陰の2穴(腎・脾胃)の九つです。 
 特に肺の気が出入する鼻閉を通じ、鼻汁を収め、頭痛を治す働きが強いといわれています。
 辛夷の入った薬を調剤しているだけで鼻詰りが治ることを経験しています。蕾を割って臭いを嗅ぐだけで鼻がすーっと通ります。

 咲いてしまうとこの薬効が無くなる不思議な薬草です。採取する時期が最も短い薬草でもあります。
 辛夷の入った薬方は蓄膿症や鼻炎によく使われるものばかりです。

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桃 ~ 梅と桜の間に密やかに咲く花 ~

2023-02-15 16:47:03 | 薬食同源

3月3日は桃の節句です。

春の花と言えば日本では桜、中国では桃の花です。何故か日本では梅と桜に挟まれて桃の花は存在価値が少ないようです。
中国では桃は長寿を意味する仙果であり、桃の花咲き乱れる桃源郷は中国の故事にある理想郷を意味します。
天帝の庭の桃を盗み食いして不老不死になったのは孫悟空だそうです。

桃の果実は食物繊維が豊富で便秘に効果があります。
種子は「桃仁」と言って煎じて飲むと、咳や便秘、月経不順、打撲や捻挫やそれに伴う内出血・疼痛などに効果があります。
また血の道の薬の桃核承気湯や桂枝茯苓丸などに配合されています。月経障害、冷えのぼせ、肩凝り、便秘、打撲などに使われています。

桃の花と同じ時期に密やかに咲く花に「あんず」が有ります。
此の種子「杏仁」もアーモンドに似た形です。桃仁よりアミグダリン多く、咳、呼吸困難に欠かせない生薬です。
麻杏甘石湯、麻黄湯、茯苓杏仁甘草湯、苓甘姜味辛夏仁湯などに配合されています。

桜も梅も果肉は食用にしますが、種子は薬用にはなりません。間に挟まれた桃と杏の種子が重要な生薬になるとは何か皮肉ですね。
アミグダリンの香りはあの杏仁豆腐の香りです。
魅惑的な香りですね。

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