ラヴェル「夜のガスパール」1曲目「オンディーヌ」を暗譜した。3曲目の「スカルボ」は20年近く前に暗譜し、いつか「オンディーヌ」も、と思っていた。
今の自分には、ラヴェルの真骨頂は豪放な「スカルボ」よりも、繊細の極みの「オンディーヌ」にあると思える。
この曲の形式はフーガに似ている。テーマと、対立する展開部が交互に現れ、転調しながらクライマックスを作るという点で。
和声の斬新さも、よく見ればバッハにルーツがある。冒頭、和音のさざ波とメロディーの調が異なるように聴こえ、複調かと惑わされるが、和音を1オクターブ低くすれば、単なる属九。
右手のトレモロと同じ音域で、左手の主題がその中を縫う形も、バッハの平均律第2巻、ヘ短調の前奏曲に例がある。
クライマックスに続く弛緩した部分はミステリーに満ちている。白鍵のグリッサンドの後、黒鍵のグリッサンドがマジックのように結びつく。
そして出現するd moll(主調Cis durのナポリの同主短調)の素朴な単旋律。こういう場面でこういう調で単旋律を持ってくる大胆な手法は、ベートーヴェンが多用する。
知れば知るほど、偉大な先例に倣いつつ、それらを高次元で独自の作風に昇華させたラヴェルのテクニックと霊感に驚嘆するばかりだ。
(写真:自宅浴槽の水をかき混ぜた)
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