新宿・アーティストサロン《ドルチェ》にて「山根尊典フルートリサイタル」を聴く。共演者にクラリネットの杉山 伸氏を迎えて、二重奏とフルートソロによるプログラム。
山根氏のサウンドは繊細な透明感と言うより、力強く充実した音が持ち味。
バッハ「無伴奏チェロ組曲第5番」のフルート用編曲における「アルマンド」「サラバンド」には集中力があった。
マルコ・グラナドス(現存)の「2つのヴェネズエラン・エチュード」ではパガニーニ張りのテクニックを聴かせた。1]
リーバーマン (1961~) の「8つの小品(抜粋)」は、どんなフルートで演奏しても良いとの事で、バスフルートのソロで演奏された。
通常のコンサート・フルートは高音域ほど強い音になるが、バスフルートは反対に低音ほど強い。ファゴットの半分ほどの大きさの楽器を「重くて大変」と言いながら演奏した。2]
楽器が技術者によって改造され、吹き口に弁がつくようになっていて、それも活用し、葦笛のような音を出した。3]
クラリネットとの二重奏では、ベートーヴェンなど、フルートとクラリネットのために書かれているのでは無い作品に比べ、ゲイリー・ショッカー (1959~) の"Still Airheads"(世界初演)は、各楽器の特性が生かされていた。その平明な作風はプーランクのスタイルに近いように思える。
この作品の5曲目は切れの良いリズムで、クラリネットの5度上をフルートがなぞっていたが、これはクラリネットが奇数倍音のみを有するゆえの発想だろうか。
もし自分なら、奇数倍音により忠実に、1オクターブ+5度上をなぞらせるだろう。
==フランス人krysさんの質問に対する補足説明==
1] パガニーニ張りのテクニック;パガニーニ (1782 - 1840) は超絶技巧で大変有名なヴァイオリニストで作曲家。一例として、目が眩む速さのアルペジオがある。
2] バスフルートの長さはコンサートフルートの2倍、ファゴットの半分。J字型に折り曲げられた形で、長いだけでなく、太く重い。
3] 現代のバスフルートは技術者によって改造されつつある。山根氏が演奏したものは吹き口に補助弁が付けられ、オーボエのような音を出した。
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