英詩の宗教的合唱曲は一応完成した。しかし英詩による古典的な宗教合唱作品として、ヘンデル「メサイア」のスコアを見ると、過去分詞の音節の区切り方が辞書とは異なるのに気づいた。
例えば辞書では1音節とされている turned を turn-ed とし、CDを聴くと「ターニ」と歌っている。そこで過去分詞に的を絞って、そのスコアを見直すことにした。
《音節を切り、ed を延ばして発音している例》
辞書:de-spised→歌:des-pi-sed 「ディスパイゼー」
同じく:healed→歌:heal-ed 「ヒーレー」
re-ceived→歌:re-ceiv-ed 「リシーヴェー」…フランス語的扱い。
《同じ「メサイア」で ed を無声音として扱っている例》
辞書:ac-com-plished→歌:ac-com-plish'd
同じく:par-doned→歌:par-don'd
changed→歌:chang'd…実際の英会話に忠実。
それ以外に自分が持っている幾つかの英語の歌のスコアも調べた。
・"Oh! Susanna"から
第1の例―辞書:bur-ied→歌:bur-i-ed
・"Carry me back to Old Virginny"から
第2の例―long'd
辞書と一致している例―wan-dered
・シェーンベルク "A Survivor from Warsaw"から
start-ed, pre-ar-ranged, sep-a-rat-ed, hap-pened―すべて辞書通り…この作品は歌ではなく、ナレーションにリズムと大まかな高低を記譜したものなので、実際の英会話に忠実。
・カーペンターズ全集から
played, filled, re-turned, learned…ざっと見た限りでは、こちらも辞書以外の用法は見つけられなかった。
こうして見ると、英詩歌曲における過去分詞の扱いは必ずしも辞書通りではなく、音楽的な要求に応じ、ed を歌いたい時には慣用的に音節を切っているのだろう。
単語によって扱い方が決まっている訳でも無いようで、「メサイア」のあるページでは rais-ed と rais'd の両方が見られた。
turn-ed は「ターニ」…そう言えば静大に入学したばかりの頃、浜松出身の学生が、会話の後に「にー」を付けていた。
「行ったにー」「見たにー」「来たにー」、疑問文でも「提出したにー?」「食べたにー?」とか…。これと同じようなものなのかにー?
(写真:ニイニイゼミではなく、油蝉)
2020年、自作英詩歌曲を歌うにあたり、英会話のアメリカ人講師(音楽に詳しい人)に発音を教えてもらったら、歌う時も話す場合と同じ、との事。
http://www.jointconcert.com/kojinsanka%20halleluja%20Mr%20Haendel%202009.html
よろしくお願いいたします。
ジョイントコンサート国際委員会
垣沼佳則