爽やかな秋晴れが続いていますが、皆さまお元気ですか?
秋といえば「読書」。
読書といえば「おはなし」ですね。
そんなわけで、今日は大人のためのおはなし会がありましたよ!
Wさんの司会で、始まり始まり~。
最初は絵本『ルピナスさん』
言わずと知れた、コルデコット賞作家バーバラ・クーニーの作品です。
1ページ1ページが、静謐に満ちた美しく繊細な絵で彩られていて、
眺めているだけでも、うっとりしますよね。
子どもの頃におじいさんと交わした約束どおり、
世界中を旅して、海を見下ろす丘の家に落ち着いた一人の女性。
「世の中を もっと うつくしくする」
という三つ目の約束を果たすために、老いてなお、なし得ることとは……?
大人になった今だからこそ、深く味わえる
「大人のためのおはなし会」にぴったりの絵本です。
読み手のYさんのやわらかく穏やかな声が、
聞く私たちの心を物語の中へとやさしく誘ってくれました。
二番手は紙芝居『ふしぎなはな』
藤田勝治さんの描くなんともエキゾチックな絵が印象的な作品。
むかしむかしのジャワ島にいた横暴な王様は、
自分をいさめにきた偉いお坊様を殺そうとしますが、
突然あらわれた竜の力の前に手も足も出ず、
王としての自信をすっかり失ってしまいます。
途方にくれる王様は、お坊様のすすめで、
遠い島に咲く、ふしぎなはなを手に入れるために、旅立ちますが……
演じる若人Kくんは、劇団にも所属する演技派で、
テノールの美声の持ち主。
改心して国の人々に仕える決意をした王様の
凛々しい声がキマッてたよ!
次は語り『ちょうふく山のやまんば』
ある夜のこと、
ちょうふく山のふもとの村に、ぶきみな声が響きわたります。
ちょうふく山の山姥が赤ん坊を産んだので、もちをついて持ってこい、
持ってこなければ、人も馬も食い殺すというのです。
威張り屋のただはちとねぎそべが、村人から選ばれて、
道案内のあかざばんばとともに、
もちの入った桶をかついで、山をのぼっていくのですが、
二人は途中で逃げてしまい、老骨のあかざばんば一人が、
山姥の家へ向かうことに……
この長い長い話を覚えて淀みなく語るには、
驚異的な記憶力と努力が必要かと思うのですが、
語り手のNさん、よく通る澄んだ声で、頑張って語り通してくれました!
続きましては、
詩の絵本『風のことば 空のことば』より『最初の質問』
「今日、あなたは空を見上げましたか」
そんな問いかけから始まる詩。
これまでの、そして今現在の自分の生き方を考えさせられるような、
数々の問いが胸に迫ってきます。
「『ありがとう』ということばを今日くちにしましたか」
……
「この前、川を見つめたのはいつでしたか」
「砂の上に座ったのは、草の上に座ったのはいつでしたか」
……
「あなたにとって『わたしたち』というのは、だれですか」
「何歳の時の自分が好きですか」
……
読み手のベテラン朗読家A井さんのあたたかく豊かな声が、
いつまでも消えずに耳に残っているような気がしました。
さて、ここで休憩が入り……
後半の一番手は絵本『ほうすけのひよこ』です。
身寄りもなく村はずれの洞穴にひとりで住む、ほうすけ。
彼の存在と、ささいな盗みを、
村人たちは鷹揚に笑って許していました。
ほうすけの方も、村の墓の手入れなどして、
人の役に立つことだってあるらしく、
何より、時折聞かせるその物悲しい歌声で、
村人の心をいっとき非日常へと連れて行ってくれます。
けれど、そんな微妙な均衡の上に成り立っていた村人とほうすけの関係は、
ある厳しく不安な冬に突然崩れ……
読み手のK田さんの、抑制と情感のバランスがとれた語り口と、
ほうすけの歌のメロディは秀逸で、
ほうすけの孤独と、やるせない結末が、いっそう胸に堪えました。
次も絵本ですよ。『ぜつぼうの濁点』
言葉の世界にある「ひらがなの国」。
長年「ぜつぼう」という言葉に仕えてきた濁点「"」は、
常に絶望して苦しむあるじを見るに見かねて、
自らの意志で主人を離れ、意味をなさない点々となります。
受け入れてくれる言葉を探して、さまよい続けるものの、
悲しいかな、出会う言葉全てに拒絶されてしまい、
やがて「し」の沼に沈むことに……
読み手のT浜さんの愛らしいピュアボイスが、
古風な趣の文章にピタリとはまって、
可笑しくも健気な濁点の物語を、
いっそう味わい深いものにしてくれました。
そして、いよいよ最後のおはなし。朗読『おかあさんの木』
七人の息子たちを順に兵隊にとられてしまったお母さんは、
一人送り出す度に、家の裏手に桐の木の苗を植えます。
そして、それぞれの木を大切に育て、息子に見立てて話しかけるのです。
初めは、お国の役に立ってほしい、手柄を立ててほしいと、
言っていたお母さんですが、長男戦死の知らせが届いた後、
お母さんの言葉はがらりと変わります。
「死んだらいけん。生きて帰ってきておくれ」
「死なせるために生んだのではない。育てたのではない」
かつての日本のお母さんたちの苦しみ、
そして、今まさに世界のあちこちで子を戦地へ送りだすお母さんたちの苦しみに、
胸を貫かれたような気持になり、
A井さんの声が途切れた後も、なかなか現実には戻れませんでした。
さあ、フィナーレは詩の群読です。詩『アプローズ』
人生における失敗も、悲しみも、
時にユーモアの力を借りて、
全てを肯定し受け入れる。そんな詩の言葉に、
ようやく心が再浮上し、
肩の力を抜くことができました。
出演者の皆さん全員に拍手!
これで、大人のためのおはなし会は終了です。
ご来場下さった皆様、
図書館の皆様、
メンバーの皆さんに、
心からの感謝を!
秋といえば「読書」。
読書といえば「おはなし」ですね。
そんなわけで、今日は大人のためのおはなし会がありましたよ!
Wさんの司会で、始まり始まり~。
最初は絵本『ルピナスさん』
言わずと知れた、コルデコット賞作家バーバラ・クーニーの作品です。
1ページ1ページが、静謐に満ちた美しく繊細な絵で彩られていて、
眺めているだけでも、うっとりしますよね。
子どもの頃におじいさんと交わした約束どおり、
世界中を旅して、海を見下ろす丘の家に落ち着いた一人の女性。
「世の中を もっと うつくしくする」
という三つ目の約束を果たすために、老いてなお、なし得ることとは……?
大人になった今だからこそ、深く味わえる
「大人のためのおはなし会」にぴったりの絵本です。
読み手のYさんのやわらかく穏やかな声が、
聞く私たちの心を物語の中へとやさしく誘ってくれました。
二番手は紙芝居『ふしぎなはな』
藤田勝治さんの描くなんともエキゾチックな絵が印象的な作品。
むかしむかしのジャワ島にいた横暴な王様は、
自分をいさめにきた偉いお坊様を殺そうとしますが、
突然あらわれた竜の力の前に手も足も出ず、
王としての自信をすっかり失ってしまいます。
途方にくれる王様は、お坊様のすすめで、
遠い島に咲く、ふしぎなはなを手に入れるために、旅立ちますが……
演じる若人Kくんは、劇団にも所属する演技派で、
テノールの美声の持ち主。
改心して国の人々に仕える決意をした王様の
凛々しい声がキマッてたよ!
次は語り『ちょうふく山のやまんば』
ある夜のこと、
ちょうふく山のふもとの村に、ぶきみな声が響きわたります。
ちょうふく山の山姥が赤ん坊を産んだので、もちをついて持ってこい、
持ってこなければ、人も馬も食い殺すというのです。
威張り屋のただはちとねぎそべが、村人から選ばれて、
道案内のあかざばんばとともに、
もちの入った桶をかついで、山をのぼっていくのですが、
二人は途中で逃げてしまい、老骨のあかざばんば一人が、
山姥の家へ向かうことに……
この長い長い話を覚えて淀みなく語るには、
驚異的な記憶力と努力が必要かと思うのですが、
語り手のNさん、よく通る澄んだ声で、頑張って語り通してくれました!
続きましては、
詩の絵本『風のことば 空のことば』より『最初の質問』
「今日、あなたは空を見上げましたか」
そんな問いかけから始まる詩。
これまでの、そして今現在の自分の生き方を考えさせられるような、
数々の問いが胸に迫ってきます。
「『ありがとう』ということばを今日くちにしましたか」
……
「この前、川を見つめたのはいつでしたか」
「砂の上に座ったのは、草の上に座ったのはいつでしたか」
……
「あなたにとって『わたしたち』というのは、だれですか」
「何歳の時の自分が好きですか」
……
読み手のベテラン朗読家A井さんのあたたかく豊かな声が、
いつまでも消えずに耳に残っているような気がしました。
さて、ここで休憩が入り……
後半の一番手は絵本『ほうすけのひよこ』です。
身寄りもなく村はずれの洞穴にひとりで住む、ほうすけ。
彼の存在と、ささいな盗みを、
村人たちは鷹揚に笑って許していました。
ほうすけの方も、村の墓の手入れなどして、
人の役に立つことだってあるらしく、
何より、時折聞かせるその物悲しい歌声で、
村人の心をいっとき非日常へと連れて行ってくれます。
けれど、そんな微妙な均衡の上に成り立っていた村人とほうすけの関係は、
ある厳しく不安な冬に突然崩れ……
読み手のK田さんの、抑制と情感のバランスがとれた語り口と、
ほうすけの歌のメロディは秀逸で、
ほうすけの孤独と、やるせない結末が、いっそう胸に堪えました。
次も絵本ですよ。『ぜつぼうの濁点』
言葉の世界にある「ひらがなの国」。
長年「ぜつぼう」という言葉に仕えてきた濁点「"」は、
常に絶望して苦しむあるじを見るに見かねて、
自らの意志で主人を離れ、意味をなさない点々となります。
受け入れてくれる言葉を探して、さまよい続けるものの、
悲しいかな、出会う言葉全てに拒絶されてしまい、
やがて「し」の沼に沈むことに……
読み手のT浜さんの愛らしいピュアボイスが、
古風な趣の文章にピタリとはまって、
可笑しくも健気な濁点の物語を、
いっそう味わい深いものにしてくれました。
そして、いよいよ最後のおはなし。朗読『おかあさんの木』
七人の息子たちを順に兵隊にとられてしまったお母さんは、
一人送り出す度に、家の裏手に桐の木の苗を植えます。
そして、それぞれの木を大切に育て、息子に見立てて話しかけるのです。
初めは、お国の役に立ってほしい、手柄を立ててほしいと、
言っていたお母さんですが、長男戦死の知らせが届いた後、
お母さんの言葉はがらりと変わります。
「死んだらいけん。生きて帰ってきておくれ」
「死なせるために生んだのではない。育てたのではない」
かつての日本のお母さんたちの苦しみ、
そして、今まさに世界のあちこちで子を戦地へ送りだすお母さんたちの苦しみに、
胸を貫かれたような気持になり、
A井さんの声が途切れた後も、なかなか現実には戻れませんでした。
さあ、フィナーレは詩の群読です。詩『アプローズ』
人生における失敗も、悲しみも、
時にユーモアの力を借りて、
全てを肯定し受け入れる。そんな詩の言葉に、
ようやく心が再浮上し、
肩の力を抜くことができました。
出演者の皆さん全員に拍手!
これで、大人のためのおはなし会は終了です。
ご来場下さった皆様、
図書館の皆様、
メンバーの皆さんに、
心からの感謝を!