<10日> 晴れ
天気待ち3日後、8時から開いているCOOPで買出し後、1:17発の登山電車に乗ってクライネシャイデック~ユングフラウヨッホへ。車中・ヨッホ駅ともに観光客でごった返している中、14時、雪原へのトンネル出口で身支度をして圧雪車のつけたトレースを歩き出す。<この前3日間で降った雪のせいか、ロッタルホルンとユングフラウ間の圏谷のトレースが消えてお、ロッタルホルンの東稜から登ることになった>
天気快晴、1時間ほどでメンヒスヨッホ小屋着、チェックイン。
(メンヒスヨッホ小屋)
2食付で一泊CHF64は物価の高いスイスでは安く感じられる。寝室は10部屋ほどで、各部屋10人強位の2段かいこ棚に雑魚寝する方式で、電気も点く。早く着いたので、夕食まで食堂で一杯やりながら時間をつぶす。小屋には剣岳のTシャツ姿の日本人従業員が居り忙しそうに立ち働いていた。
夕食はスープ・パン・メイン(特大ハム・ジャガイモ・インゲン)・デザート(フルーツ)のコースで、各部屋単位でテーブルにつき、各テーブルで大皿から取り分けて食事、飲み物は各自で手配。この日は食堂はほぼ満席(約100人)、我々の他に日本人は単独の一人のみでその他は全て白人、ドイツ語とフランス語でにぎやかだった。
<11日> 晴れ
3時からユングフラウ・Gフィーシャホルン組の朝食開始。(メンヒ組は5時から)パン・チーズ・シリアルに飲み物で、量の制限は無し。早いパーティは3時半頃から順次出発してゆき、我々は4時に小屋を出た。ヨッホのトンネル出口の照明のあるところでアイゼン・ロープを着け、氷河上のトレースを追う。暗い中前、ロッタルホルン東稜のノーマルルートに先行者のヘッドランプが連なっているのが見える。クレバスを幾筋も縫って氷河を下り気味に歩き、東稜に取り付く。<東稜には雨量計とともに謎の反射板があり、氷河上からヘッドランプで照らすと小さく赤く光り、いい目印となった。>雨量計のあるリッジに左上後リッジ沿いに踏み跡を行き、10m程の易しいクラック(Ⅲ級-)を登る。クラックの終了点にピトンの支点があり、小さな環付カラビナが設置してあった。(この辺で明るくなり、ランプを消した)ここから150mほどバンド伝いに左へ回り込み、その後Ⅱ級程度の岩尾根を登ると小広い雪の尾根に出る(6時)。周囲が見渡せて気持ちが良い。6時半ごろ、朝日が行く手のユングフラウを赤く照らし始めた。
(雪稜)
尾根は広めのまま南西に曲がり、ロッタルザッテルへの斜面へとつながっている。雪は締まっておりアイゼンを利かせて快適に登高する。
(ザッテルへの乗越し)
ザッテル直下の雪面は貴重な安全地帯で、他パーティもここで一息入れ、先へ進んでいた。ザッ
テルへはシュルンドを越えるが、雪が安定していれば問題ない。ザッテルは西面が完全に切れ落
ちていて非常に細い。<南東のリッジに出るまでに60m程雪稜の末端をトラバースするが氷が硬く非常に緊張した。> ここから先は頂上までずっと西面が切れている上にリッジの傾斜も強まり
気が抜けない。岩稜と氷の境目のような場所を200mほどあがる。高度も上がり足が重くなる上、
メンヒと同じく積雪の下は硬い氷なので、確実なアイゼン歩行技術が必要となる。<A岡の技術で
は氷にピックが刺さらずバイルを使った>
(リッジ)
ここから先は基本リッジ沿いだが、岩と雪(氷)のミックスで、コンテで登る際、中間支点を何箇所か取りながら登った。ガイド本にも注意書きがあるが、先行Pが多い時の落石には要注意。我々も雪面トラバース中に上部からの人の頭ほどの落石が2mほど横をかすめ、肝を冷やした。
傾斜がゆるくなると岩くずだらけの狭い頂上(9時)。既に十数人ほどが休んでおり、360度の展望を楽しむ。
(頂上にて)
下降は来た道を戻るが、雪の状態も良く、一部東側の雪面を下降に使った。ガイドパーティは氷の出ている部分や少しでも難度が高い岩場は客を上から確保して降ろし、自分はそのまま下る、というスタイルを貫いていた。ザッテルまで戻り、安全地帯で小休。
(小休止)
過去のノーマルルートであるザッテル下の雪面下降をガイドパーティが行っていたが、シュルンドが開いており難易度・リスクがわからないので、登りのルートを下る。
(アレッチ氷河をバックに)
岩場をトラバース後、クラックを懸垂10m、リッジから氷河に降りる地点の雪が緩んでいたので念のため確保。後は雪の緩んだ氷河をユングフラウヨッホに向けて登り返したが、暑さと疲労で足が重かった。ヨッホ駅トンネル入り口着12時半、無事下山を握手で祝った。
装備
ウェア;冬~春山装備に準じる、ロープ9mm×45m、ヘルメット・ハーネス・アイゼン・アックス、ランニング用カラビナ・スリング、アイススクリュー各自2本など
参考文献
次の2冊の組み合わせ
BERNER ALPEMN - topo.verlag:ルート図 ドイツ語だが写真にルートを記載したり詳細な図がわかりやすい
Bernese Oberland - Alpine club guide books:ガイド本 英語 図は無い
<氷河のクレバス渡りはわずかな雪のくぼみの筋を避けるイメージを持った。取り付き以降の岩稜はメンヒのほうが難しいかもしれない。南東稜の雪(氷)稜は、氷が硬く西面が切れておりとても緊張。ピンとなる鉄棒は大体40mおきに刺さっており、有効活用すべきと思った。登山者が多い場合は落石が多い。私たちが聞いた落石の叫びは4回ほど、そのうち一回はS原さんの左1-2mを掠めて落ちていった。-A岡>
*****
帰路、氷河を歩いていると、メンヒ南東稜上部付近にヘリ(レスキュー)が複数機旋回しており、吊り上げを行っているのが見えた。上部の岩稜帯は先日メンヒを登った際も一人救助されていたが、入門コースといえども決して侮れない場所と思う。
天気待ち3日後、8時から開いているCOOPで買出し後、1:17発の登山電車に乗ってクライネシャイデック~ユングフラウヨッホへ。車中・ヨッホ駅ともに観光客でごった返している中、14時、雪原へのトンネル出口で身支度をして圧雪車のつけたトレースを歩き出す。<この前3日間で降った雪のせいか、ロッタルホルンとユングフラウ間の圏谷のトレースが消えてお、ロッタルホルンの東稜から登ることになった>
天気快晴、1時間ほどでメンヒスヨッホ小屋着、チェックイン。
(メンヒスヨッホ小屋)
2食付で一泊CHF64は物価の高いスイスでは安く感じられる。寝室は10部屋ほどで、各部屋10人強位の2段かいこ棚に雑魚寝する方式で、電気も点く。早く着いたので、夕食まで食堂で一杯やりながら時間をつぶす。小屋には剣岳のTシャツ姿の日本人従業員が居り忙しそうに立ち働いていた。
夕食はスープ・パン・メイン(特大ハム・ジャガイモ・インゲン)・デザート(フルーツ)のコースで、各部屋単位でテーブルにつき、各テーブルで大皿から取り分けて食事、飲み物は各自で手配。この日は食堂はほぼ満席(約100人)、我々の他に日本人は単独の一人のみでその他は全て白人、ドイツ語とフランス語でにぎやかだった。
<11日> 晴れ
3時からユングフラウ・Gフィーシャホルン組の朝食開始。(メンヒ組は5時から)パン・チーズ・シリアルに飲み物で、量の制限は無し。早いパーティは3時半頃から順次出発してゆき、我々は4時に小屋を出た。ヨッホのトンネル出口の照明のあるところでアイゼン・ロープを着け、氷河上のトレースを追う。暗い中前、ロッタルホルン東稜のノーマルルートに先行者のヘッドランプが連なっているのが見える。クレバスを幾筋も縫って氷河を下り気味に歩き、東稜に取り付く。<東稜には雨量計とともに謎の反射板があり、氷河上からヘッドランプで照らすと小さく赤く光り、いい目印となった。>雨量計のあるリッジに左上後リッジ沿いに踏み跡を行き、10m程の易しいクラック(Ⅲ級-)を登る。クラックの終了点にピトンの支点があり、小さな環付カラビナが設置してあった。(この辺で明るくなり、ランプを消した)ここから150mほどバンド伝いに左へ回り込み、その後Ⅱ級程度の岩尾根を登ると小広い雪の尾根に出る(6時)。周囲が見渡せて気持ちが良い。6時半ごろ、朝日が行く手のユングフラウを赤く照らし始めた。
(雪稜)
尾根は広めのまま南西に曲がり、ロッタルザッテルへの斜面へとつながっている。雪は締まっておりアイゼンを利かせて快適に登高する。
(ザッテルへの乗越し)
ザッテル直下の雪面は貴重な安全地帯で、他パーティもここで一息入れ、先へ進んでいた。ザッ
テルへはシュルンドを越えるが、雪が安定していれば問題ない。ザッテルは西面が完全に切れ落
ちていて非常に細い。<南東のリッジに出るまでに60m程雪稜の末端をトラバースするが氷が硬く非常に緊張した。> ここから先は頂上までずっと西面が切れている上にリッジの傾斜も強まり
気が抜けない。岩稜と氷の境目のような場所を200mほどあがる。高度も上がり足が重くなる上、
メンヒと同じく積雪の下は硬い氷なので、確実なアイゼン歩行技術が必要となる。<A岡の技術で
は氷にピックが刺さらずバイルを使った>
(リッジ)
ここから先は基本リッジ沿いだが、岩と雪(氷)のミックスで、コンテで登る際、中間支点を何箇所か取りながら登った。ガイド本にも注意書きがあるが、先行Pが多い時の落石には要注意。我々も雪面トラバース中に上部からの人の頭ほどの落石が2mほど横をかすめ、肝を冷やした。
傾斜がゆるくなると岩くずだらけの狭い頂上(9時)。既に十数人ほどが休んでおり、360度の展望を楽しむ。
(頂上にて)
下降は来た道を戻るが、雪の状態も良く、一部東側の雪面を下降に使った。ガイドパーティは氷の出ている部分や少しでも難度が高い岩場は客を上から確保して降ろし、自分はそのまま下る、というスタイルを貫いていた。ザッテルまで戻り、安全地帯で小休。
(小休止)
過去のノーマルルートであるザッテル下の雪面下降をガイドパーティが行っていたが、シュルンドが開いており難易度・リスクがわからないので、登りのルートを下る。
(アレッチ氷河をバックに)
岩場をトラバース後、クラックを懸垂10m、リッジから氷河に降りる地点の雪が緩んでいたので念のため確保。後は雪の緩んだ氷河をユングフラウヨッホに向けて登り返したが、暑さと疲労で足が重かった。ヨッホ駅トンネル入り口着12時半、無事下山を握手で祝った。
装備
ウェア;冬~春山装備に準じる、ロープ9mm×45m、ヘルメット・ハーネス・アイゼン・アックス、ランニング用カラビナ・スリング、アイススクリュー各自2本など
参考文献
次の2冊の組み合わせ
BERNER ALPEMN - topo.verlag:ルート図 ドイツ語だが写真にルートを記載したり詳細な図がわかりやすい
Bernese Oberland - Alpine club guide books:ガイド本 英語 図は無い
<氷河のクレバス渡りはわずかな雪のくぼみの筋を避けるイメージを持った。取り付き以降の岩稜はメンヒのほうが難しいかもしれない。南東稜の雪(氷)稜は、氷が硬く西面が切れておりとても緊張。ピンとなる鉄棒は大体40mおきに刺さっており、有効活用すべきと思った。登山者が多い場合は落石が多い。私たちが聞いた落石の叫びは4回ほど、そのうち一回はS原さんの左1-2mを掠めて落ちていった。-A岡>
*****
帰路、氷河を歩いていると、メンヒ南東稜上部付近にヘリ(レスキュー)が複数機旋回しており、吊り上げを行っているのが見えた。上部の岩稜帯は先日メンヒを登った際も一人救助されていたが、入門コースといえども決して侮れない場所と思う。
強い日差しと緑におおわれた景色を見ながら記事を読んでいると、こうしたエリアならでこそピッケル・アイゼン・氷雪技術が発明され発展してきたことが実感をともなって理解出来ます。