東京都内最高齢の古谷ふみさん所在不明に揺れる杉並区で、何とも皮肉な事実が明らかになった。古谷さんの所在確認を怠ってきた歴代高齢者施策課長の1人が、あの悪名高い「後期高齢者医療制度」の生みの親とされる厚生労働省の担当者だったのだ。
古谷さんは長女(79)と次男の3人で千葉県市川市内のアパートに住んでいたが、長女は1986年に1人で杉並区に転居し住民登録。98年に古谷さんの住民票も移したが、実際には「母は住民票を移しただけ」(長女)だった。
長女は「弟と一緒にいると思う」と説明していたが、次男は常習累犯窃盗の罪で服役中だったことが判明。3日、警視庁の捜査員が服役先の府中刑務所で事情聴取を行ったところ、次男は「母親とは10年以上会っていない」と話し、生死については明確な説明をしなかったことも分かった。
杉並区は少なくとも12年間、居住しない“都内最高齢者”を住民登録させていたことになる。その高齢者政策の責任者を勤めていたのが、土佐和男・厚労省国民健康保険課課長補佐(57)だ。
土佐氏は78年、杉並区に入庁。区在職中の98年から02年にかけて、国民健康保険課長や高齢者施策課の課長を歴任。
2004年、全国で初めて国民保険料をコンビニで支払えるシステムを構築した実績が高く評価され、鳴り物入りで厚労省にヘッドハンティングされた異色の経歴の持ち主だ。
厚労省で土佐氏が手がけたのが、後期高齢者医療制度。厚労省関係者は次のように言う。
「土佐氏は制度を立案した当時、高齢者に対し『医療費が際限なく上がっていく痛みを自分の感覚で感じ取っていただくことにした』などと発言し、大顰蹙を買いました。その発言から推測すると、100歳超の住民のことなど眼中にないのかもしれません」