“独裁政治”の指導者は69歳が鬼門?―。
金正日総書記は69歳で急死したが、10月20日に殺害されたリビアの最高指導者、カダフィ大佐も69歳だった。
さかのぼれば、イラクのサダム・フセイン大統領、カンボジアのポル・ポト書記長も70歳を目前にしてこの世を去っていた―。
数え年なら古希と呼ばれる70歳。由来は唐の詩人、杜甫の詩で「70年生きる人生は稀(まれ)」という意味だが、現代では圧政を敷いた者にとっての寿命なのだろうか。
カダフィは北アフリカのリビアで約42年間、独裁体制を築いた。肩書は「大佐」だが、実質は最高実力者。27歳で無血革命を起こして国王を追放し、政権トップの座に就いて以来、度重なる米国への挑発や極端にして奇怪な言動から「砂漠の狂犬」の異名をとった。
今年2月、民主化を求める大規模デモが行われた後、逃避行を続けていたが、8か月後の10月20日、反カダフィ派の国民評議会にとらえられ、殺害された。血まみれ姿で命乞いする姿は世界中のTVで放送された。
湾岸戦争(1991年)、イラク戦争(2003年)を経て失脚したフセイン大統領もイラク戦争終結後、逃走していたが、米軍特殊部隊に隠れ家の地下穴に潜んでいたところを発見され逮捕。2006年12月30日に現政権により、69歳で絞首刑となった。
クメール・ルージュ(カンボジア共産党)を率いて、大量虐殺を指導したとされるポル・ポトは、自宅監禁中の1998年4月15日に69歳で死去とされる。死因は心臓発作とされているが、遺体の状態などから毒殺されたという説もある。
そして、金総書記も、健康問題が08年頃から伝えられており、やはり69歳で死期が訪れた。時期も状況も全く異なるが、世界にその名をとどろかせた指導者の奇妙な“つながり”。偶然なのか、運命なのか―。