シュメール神話では多くの神様が登場するが、登場する順番によって番号が振られている。
宇宙万物の創生神がいて、その夫婦神から系譜が続いていく。
天神アン(アヌ)が頂点に君臨し、その位を表す数字が「60」。
妃のキは「40」
風神エンリルが「50」
エンキは「35」
などなど…
天神アンは、北極星と同一視されていた。
天体考古学では、このころの北極星は、「ツバン」と呼ばれる龍座のおなか付近にあるα星で、紀元前3000年ころから輝き始め、紀元前2730年にその輝きがピークを迎えた。
古代エジプトのセティ17世のピラミッドには、玄室の壁画に、「北極星ツバンが北斗七星を使って海の水を宇宙より分け与える」と書かれている。
龍座というところから、北極星信仰が龍神信仰・水神信仰へとつながっていった。
日本も、龍神を水神として崇めている。
ナーガも水神である。
中国でも、北極星は北辰(ほくしん)という神になり、龍神アンを迎えるために天安(アン)門が作られた。
シュメールの最高神、天神アンは「60」の数字を持つ神である。
これをシュメール語で表すと「アブ・アッシャム・ディンギル・アン」という。
アブ=天の父
アッシャム=60神
ディンギル=北極星
この言葉を呪文のように唱えながら、天に祈りを捧げていた。
シュメール古拙文字では、「十」(じゅう)みたいな文字を二つ重ねた「十十」が「奉る」という意味を表す。
この十に八方位を表すように線を引いた文字が、北極星を表している。
8=「ヤ」
方位=「ホウ」
8方位を表す記号が「ヤホウ」
「ヤホウ」が「ヤハウェ」となったのではという説もある。
シュメールの世界は多神教であったが、天神アンは、その中でもかなりの信仰を集めていた。
しかし、天神アンと同一視されていた北極星ツバンは、地球の歳差運動(1周25000年くらい)で72年に1度づつずれていくので、真北ではなくなっていき、いずれ見えなくなる時がやってくる。
北極星が見えなくなるということは、天神アンが空から消えることを意味した。
祈る対象がいなくなった。
その後、信仰の対象は、アヌの次に位の高い風神エンリルへと移っていった。
シュメール神話で、アヌが消えていき、エンリルが王となる様子が描かれている。
このことは、日本の信仰にも通ずるところがあり、アメノミナカヌシも最初に現れるが姿を消している。
これも、もしかしたら北極星信仰を示すものなのかもしれない。
北極星が消えていき天神信仰の対象であるアヌの影響力が薄れていくと、風神エンリルが信仰の対象となった。
風神エンリルは「50」の数詞を持つ神様。
シュメールではエンリルを砂時計のようなマークで表している。
五=「イ」
十=「シュ」という発音になる。
シュメール読みだと、五十=「イシュ」
日本語読みだと、五十=「イス」「イセ」となる。
イセといえば、日本の総氏神である天照大御神を祀る伊勢神宮。
伊勢神宮の横に流れる川は、五十鈴川(いすずがわ)。
そして、五千円札の五は、漢字の五ではない。
砂時計の形を模していてエンリルを表している。
さらには、
第10代崇神天皇の名前は、「御間城入彦五十瓊殖」(みまきいりひこいにえ)。
第11代垂仁天皇の名前は、「活目入彦五十狭茅(いくめいりひこいさち)。
両者とも五十が入っている。
これは単なる偶然なのだろうか。
もしかしたら、わたしたち日本人は知らず知らずに、シュメールの神、風神エンリルを祀っているのかもしれない。