詩・機械設計・森林蘇生・猫/POETRY/Machine design

杉山を自然林に戻したい。
黒っぽい杉山を見るたびに子供の頃見た青い自然林を想う。山のことのみならず生活ブログです。

詩・麦踏み

2015年05月06日 00時37分51秒 | 
久し振りの詩
タローが死んで、その頃作った詩集を急遽タロー追悼に変えて、3年経った。
それいらい詩も文章も書く気がしなくなって、書きたいことが何にも無いようになって、無聊の毎日だった。


「麦踏み」


麦は踏まれて強くなる
春まだ期
北風が吹いて子供たちが下顎を震わせる頃
お爺さんは麦を踏む
地下足袋を履いて
綿入れ半纏を着て
手拭で頬かむりして

若い麦の向日性は
つぶれた茎を立て直すから
お爺さんは麦を踏む
麦は踏まれて強くなる
冷たい風は春への刺激
冷たい刺激が春を呼ぶ
麦の細胞がうごめいて

真冬の風は冷たくて
海を渡って吹いてくる
西の山から吹いてくる
お爺さんは麦を踏む
強くなれよと一歩ずつ
祈りながら麦を踏む
寒さの中で麦を踏む

麦は踏まれて強くなる
踏まれなかった者より強くなる
踏んだ者より強くなる
踏ませた者より強くなる
強くするため麦を踏む
お爺さんは麦を踏む
霜柱に負けないように

幼い麦は知っている
誰にも言われず知っている
やがて湧き起る生命力が自分の奥底に
静かに潜んでいることを
知っている
踏まれて初めて気がつく自分の命の
強さたくましさ頼もしさ
背骨のような茎が自分を成長させ
日光から力を受け取り
根は太くなり地に伸びて
穂先に
たわわな実をつけて熟する日の来ることを
麦は密かに知っている
お爺さんは麦を踏む

鶯はまだ声を出さない
猫柳の芽も顔を出さず
川音も静かに耐えているようで
世間は寒さに鎮まっている
菜の花よ 来い 鶯よ 鳴け
踏まれた麦は命を起こす
踏まれたからこそ命を起こして
    *
北風や踏まるる麦と花を待ち

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