詩・機械設計・森林蘇生・猫/POETRY/Machine design

杉山を自然林に戻したい。
黒っぽい杉山を見るたびに子供の頃見た青い自然林を想う。山のことのみならず生活ブログです。

2011年10月19日 14時45分07秒 | 
  念 偈  ―俗歌のように―


 [第一章]

何があったか
何事か
肩や背中に
間断無く
わたしらの日々に重く 重く
季節の移ろいさえ思い出させず
もうすぐ桜が
そして
気がつけば雪模様
春も夏も秋も いつのまにか
過ぎ消え去った忙殺
友の困難を見過ごすしかなかった後悔
涙をさえ見過ごして

世は移る
そのことをあなたは知っている
滅びの体験のさ中
父も母も兄弟も
押し流され何処とも知れず
助けは無く
いたずらな無為が続く
地磁気のみが時を続ける

僕は悔しい
でも

時代の中には
死火山さえよみがえる

勇気
不快なことは水に流そう
みずに流しておくれ
みずに流して
心気を足下に降ろして
丹田に力を籠め
肉体の向かう方向を信じて良い
過去よりも先の世界に
優る美しさを作りたいから
フットワーク軽快に
顔を上げよう
やがて青空に涼風吹いて
晴れやかに
命が上昇する
自然は残酷だが

電話のむこうで
九十二才の叔母が言った
「過去のことばかり言うのか
わたしは未来のために働く
いいことがいつまでも続くわけじゃないように
悪いこともいつまでも続くわけじゃない」

[第二章]

それだから旅の人、あなたよ
いたずらに悩みの渕を
たどり給うな
早暁
訪ね歩いた果ての
東方の尾根を越え
峠に立てば
朝日が湾の向こうに
現れるを見るだろう
金色の日輪は
一分刻みにきらめきを増し
清澄の大気に今日の命を注ぎ込む
水蒸気は朝露を生み
未だ目覚めぬ鳥達の羽交いを濡らす

黒い潮の押し寄せる黒い日は
記憶から去るわけではないが
あなたは命を持っている

 [第三章]

いつか旅した旅の途中
立ち寄った
茶屋の裏手を流れる川は
音も涼しげな滝の瀬
時は盛夏 
川面をギンヤンマが舞っていた
わたしらも
清冽な水に体をひたし
己が身の 気海に古里を満たそう
この国は
清冽な国なのだ

友の悲しみを見過ごしたことを
後悔しつつも
過去よりも勝るよい日を
そんな日をまた作るだけ
作ればいいだけ
わたしらの友は
勇気

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