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清須会議

2013-12-21 00:29:40 | 映画

先日の休みに、三谷幸喜 監督、

役所広司大泉洋 主演の映画、“清須会議を観てきた。

 

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三谷幸喜監督、6作目となる映画は初の時代劇。

(時代劇というより歴史ドラマだったが)

これまでのコメディ現代劇とは異なり、歴史上あった出来事を忠実にドラマ化した作品。

監督が10歳の頃に、この“清須会議”を題材にしたドラマの構想を描いていたらしく、

30年以上経て、少年時代の夢を叶えた格好になった。

 

いつものごとく、脚本を自ら書き、またそれ以前に小説として原作も手がけた。

小説の執筆も16年ぶりのことだという。

それほどまでに、この映画に力を入れていたということが判る。

実は今作、清須会議は、前作の、“ステキな金縛り”と、

企画段階で最終候補に挙がっていたが、ステキな金縛りが先に映画化決定し、

ほどなく清須会議も映画化が決定したという。

 

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役所広司演じる、織田家筆頭宿老・柴田勝家。 

 

まず清須会議について。

自分はこれを知らなかった。

とくに歴史オタクでもないため、日本の歴史について、

教科書に載っていたこと程度の知識しかない。

世界史になると、教科書に載っていたことすらほとんど覚えていない。

 

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大泉洋演じる、織田家家臣・羽柴秀吉(のちの豊臣秀吉)。

 

まあ、それはさておき、清須会議とは――。

1582年(安土桃山時代)、時の天下人・織田信長が、京の本能寺において、

家臣の明智光秀の謀反によって討たれる。

知らないひとは居ない、本能寺の変という戦国時代最大の事件。

その三日後、明智光秀は同じく信長の家臣だった羽柴秀吉によって討たれる。

 

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小日向文世演じる、織田家家臣・丹羽長秀。

織田四天王のひとりとして活躍し、清須会議では重要なポジションに居たキーマン。

清須会議後は、秀吉の元で重臣として活躍することに。

 

信長亡き後、尾張国・清須城に、織田家 家臣が一同に集い、

織田家の後継者および、遺領及び明智光秀の領土再配分などを話し合った。

日本史において大きく歴史が動いた会議だと言われている。

会議に参加した家臣は、柴田勝家,羽柴秀吉,丹羽長秀池田恒興の宿老4人だけで、

織田家の人間はひとりも参加することができず、

関東で北条氏と交戦中だった、織田四天王で宿老のひとり、滝川一益は参加できなかった。

 

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佐藤浩市演じる、織田家家臣・池田恒興。

信長とは乳母兄弟にあたる。

清須会議時に宿老に昇進する。

この二年後、長久手の戦いで徳川家康に討たれる。

 

信長の三男だった、織田信孝を後継者に推す柴田勝家に対し、

羽柴秀吉,丹羽長秀,池田恒興の三人は、信長の孫にあたる三法師(織田秀信)を後継者に推した。

多数決と血筋の正当性から、後継者には若干2歳の三法師が選出される。

このとき、筆頭家老であった柴田勝家は重臣のなかで孤立し急速に発言力を失う。

逆に光秀を討った秀吉の発言力が大きくなる。

会議の結果は、秀吉の家臣、黒田官兵衛が裏で全て手回ししており、

結果は決まっていたと言われている。

 

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寺島進 演じる織田家家臣・黒田官兵衛。

天才軍師として織田,豊臣,徳川と三英傑に仕える。

清須会議も彼の裏工作で秀吉の思惑通りに動かしたとされている。

最近では本能寺の変から、官兵衛が裏で光秀をそそのかして信長を討たせ、

秀吉が天下を獲るというシナリオを描き実行したのだという説も。

 

この織田~豊臣に権力が移る動乱の引き金となった、清須会議。

それを題材にしたのが今回の三谷映画。

史実に忠実にしつつ、細部には三谷テイストの人間ドラマが加えられ、

合戦のシーンがまったくない、新鮮な歴史ドラマの映画となった。

(冒頭の本能寺の変と、滝川一益と北条氏家臣との対峙シーンが少しある程度)。

 

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映画は本能寺の変から始まる。

織田信長(篠井英介)が明智光秀(浅野和之)の謀反によって討たれる。

本能寺の焼け跡に、柴田勝家(役所広司)と、丹羽長秀(小日向文世)が赴き、

志半ばにして討たれた信長のことを偲びつつも、後継問題や遺領問題について話す。

二人が一致して出した答えは、「藤吉郎(秀吉)の好きにはさせられない。」

冷静沈着で頭脳明晰な丹羽は、筆頭宿老である勝家に言う、

「すぐに各地の宿老を集めて評定を開き、なるべく早く後継者を選出すべき」と。

 

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かくして評定が尾張国・清須城で開催されることとなった。

各地から続々集まる織田家家臣たち。

宿老筆頭の勝家は、信長の三男で勇敢で聡明な、信孝坂東巳之助)を後継に立てることに決め、

丹羽に促され、信長の妹・お市の方鈴木京香)へ挨拶へ行き、

信孝を後継にすることへの協力を申し入れる。

秀吉の先手を打って、織田家の有力者へ根回しをしておこうという魂胆。

 

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鈴木京香  演じるお市の方。

未亡人なので麿眉お歯黒姿で妖艶に迫る。

お市の方にぞっこんの勝家も縮み上がる。

 

秀吉側は秀吉側で、勝家側に信孝を取られたため、

大うつけ者として評判の悪い、次男の信雄(のぶかつ:妻夫木聡)を後継に立てることに決め、

官兵衛(寺島進)に促され、信長の弟・三十郎信包(さんじゅうろうのぶかね:伊勢谷友介)の元へ、

信雄を後継にすることへの協力を要請しに。

 

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伊勢谷友介 演じる、織田三十郎信包。

兄の信長同様、西洋の品を好んで収集し、和洋折衷な格好をしている。

後継問題には興味がない。

 

この後、会議開催までの間、信孝を推す勝家・丹羽陣営と、

信雄を推す秀吉・官兵衛陣営との間で、

織田家の人間や、優柔不断でどっち着かずの池田恒興(佐藤浩市)ら、

家臣を巻き込みながら、緻密な駆け引きが繰り広げられる。

それはさながら、合戦の様相を呈していた。

 

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妻夫木聡 演じる、信長の次男・織田信雄。

戦国時代きってのバカ殿として有名らしい。

その想像以上のバカっぷりに後継に推していた秀吉も官兵衛も絶句する。 

 

冷静な丹羽の判断とアイデアで、有利に展開する勝家側だが、

後継者選びの会議よりも、お市の方にぞっこんで、

丹羽の忠告や指示をおろそかにしてしまう勝家。

それに付け入り、丹羽の弱みを突いて、自分の陣営に引き込もうと画策する秀吉。

 

関東で北条氏と合戦中で到着が遅れている、宿老のひとり、滝川一益(阿南健治)。

彼の到着を待って、評定を開く予定ではあったが、

それを待たずに、かくして清須会議は開催された。

前田玄以でんでん)立ち会い進行のもと、

柴田勝家,丹羽長秀,羽柴秀吉,池田恒興の4人の宿老が対峙する――。

 

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純粋に面白かった。

合戦シーンのない時代劇がこうも面白いものだと思わなかった。

ただ、いつものコメディだと思って鑑賞に臨んではいけない。

細部に三谷チックな笑いどころはあれど、ストーリー自体はコメディではない。

むしろシビアな歴史ドラマだ。

 

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“清須会議”のことを知らなかったと冒頭で言ったものの、

会議の結果を受けて、秀吉が幼い三法師を抱いて大広間に姿を見せ、

勝家やお市の方を含む、全ての家臣をひれ伏させて織田家を掌握した瞬間。

あのシーンを見て、ああ!あれが清須会議だったのかと思い出した。

 

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中村勘九郎 演じる信長の長男・織田信忠。

本能寺の変の際、信長と共に討ち死にする。

彼の嫡男の三法師が後継に選ばれることに。

 

会議の結果というよりも、この後、秀吉が天下を取ることは誰もが知っている史実。

それに至る、この清須会議という出来事を題材にして、

そのたった5日間の間に繰り広げられた人間臭いドラマを緻密に描いた作品。

ラストのシーン、会議で秀吉に破れた勝家が、

滝川一益と前田利家浅野忠信)を率いて、清須城を後にし越前への帰路に就く。

大好きな清須の青空を見上げ、清々しい表情をつくる。

スクリーンいっぱいに広がる美しい青空。

そして聞こえてくるホラ貝の音とかけ声と合戦の音。

ほどなくして、勝鬨の声が上がる。

 

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この翌年、秀吉に反旗を翻した勝家が、織田信孝と滝川一益を率いて秀吉軍と争う、

賤ヶ岳の戦い(しずがたけのたたかい)が起こる。

前田利家の裏切りが致命傷となり、勝家軍は破れ、信孝は自害。

最後まで抵抗した一益は領地没収のうえ追放される。

勝家は妻の お市の方と共に自害し、さらに秀吉の天下が完全なものになる。

最後のシーンはこの賤ヶ岳の戦いだったのかもしれない。

 

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浅野忠信 演じる前田利家。

槍剣の達人らしく劇中で唯一殺陣を演じるのがこの利家。

勝家の忠実な家臣として仕えるが、やがて勝家と敵対する秀吉とは、

かつて家が隣同士で家族ぐるみの付き合いをしていた大親友の間柄。

賤ヶ岳の戦いのとき、主君と親友の間で板挟みとなって悩んだと思われる。

 

歴史おたくでなくても充分に楽しめる作品。

いや、これを機に歴史おたくになるのもいいかもしれない。

三谷監督独自の解釈や考察で描かれたシーンもあるが、

会議の結果や勢力の移ろいなど、史実のとおりなので歴史入門になると思う。

 

前作、“ステキな金縛り”で登場した、西田敏行演じる、主人公の更科六兵衛

劇中で「北条家家臣!」「北条氏政公から直接もらった陣羽織」といっていたが、ここで繋がる。

本能寺の変に乗じて、織田家と同盟を結び従っていた北条氏が一斉に反旗を翻し挙兵する。

織田家家臣として一帯を支配していた滝川一益が、これに応戦するも多勢に無勢で大敗。

関東地方最大の合戦となった、神流川の戦い(かんながわのたたかい)。

 

 

 

清須会議の劇中では、敗走しながらも評定に参加すべく、

一益は遠い武蔵国から尾張国の清須目指して一心不乱に走る。

だが途中、山林でひとりの北条氏の武将に追いつかれる。

「北条家家臣! 更科六兵衛!!」抜刀して名乗りを挙げたその敵将は、紛れもなく六兵衛さん!

「織田家家臣! 滝川一益!!」一益もこれに応じて抜刀し、二人が一騎打ちの様相で対峙するも、

すぐに一益は刀を鞘に収め、「今は戦などやっている暇はないのだ!ごめん!」と言い、

そのまま走り去ってしまう。

 

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強烈なインパクトを放っていたのが、剛力彩芽演じる松姫

(武田信玄の娘で、信長の長男・信忠の妻 後継に選出された三法師の母) 

麿眉にお歯黒姿でニタリと不適な笑みを浮かべるシーンは必見!

 

置いて行かれた六兵衛さん、安堵の表情を浮かべて、

「よかった・・死んでは何もならない・・・。」とつぶやく。

敵の総大将をみすみす逃してしまう・・・もしかしたら、これが内通疑惑がかけられた原因か?

などと思ったが、内通疑惑はこれよりずっと後の秀吉の小田原攻めときらしい。

ともあれ、ステキな金縛りを観たひとは、思わずニヤっとしてしまうシーンだ。

ただあんな臆病な感じじゃなく、もうちょっと勇猛であって欲しかった。

 

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ステキな金縛りからのゲスト出演の更科六兵衛さん。

ここで滝川一益とやり合ってたらやられてたやも。

 

歴史好き且つ、三谷ファンなひとならば見て損はない。

堅苦しいイメージを抱くかもしれないが、そんなことまったくない。

ただ歴史おたくだと、若干解釈が異なるところがあるのが気になるかもしれない。

逆に歴史に疎い方が純粋にドラマとして楽しめるかもしれない。

まだまだ公開は続いているので、興味を持ったひとは観に行くべし!

 

 

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購入したグッズ。

清須会議の特製風呂敷。

評定に参加した四武将の家紋がデザインされている。

バンダナとして利用予定。

 

映画パンフレットのキャスト紹介ページ。

織田信長や柴田勝家、羽柴秀吉など、実存する資料の肖像画などが併せて掲載されていたが、

資料に乏しい人物は、三谷監督直が描いた肖像画がコメント入りで掲載されていた。

例えば・・・。

 

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左:織田信孝 江戸期に描かれた『続・英雄百人一首』を参考に描きました

右:寧 北政所となってから描かれた肖像画を目いっぱい若返らせました

 

数名だけだったが、これがめちゃくちゃ面白い。

一番笑ったのが、これ。

 

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松姫 父、武田信玄の顔を女にしてみました

 

 

 

 

 

 

 

 

※ “清洲”と表記するのが一般的だが、映画タイトルに合わせ文中すべて、“清須会議”,“清須城”と表記した。

 

 

 

 

 



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