謎に満ち惹かれて止まぬ書のありてそれ王羲之の蘭亭集序 丹人
なぞにみち ひかれてやまぬ しょのありて それおうぎしの らんていしゅうじょ
ここに掲げるは
昭和五十九年 予の齢二十八なる時に
蘭亭序(唐馮承素本)を臨したるものなり
予 十代なる時は
蘭亭序の文字が佇まひのやや端正さに欠けると見て
そのよろしさを感じることなく 時のうち過ぎてゆけり
欧陽詢「九成宮醴泉銘」の端正整美なる書こそよろしきとおもひていたり
されど
二十代に入りて
王羲之の書に徐々に惹かれてゆきにけるかな
それ 予が書の見方の変化したることが要因なり
書は文字が形の端美の追求のみにあらずして
運筆の妙 線の太細の妙 変幻極まらぬ結体の妙こそ重要であり
それが書の本質なりと捉へはじめたがためなり
以後 数回に亘り
予が蘭亭序へのおもひと
蘭亭序が謎への解明への道程を
記していかんとおもひぬるかな