3.課題図書を読んで感じたこと、想ったことを文字化できたら最後に課題図書を離れ、感じたこと、想ったことを基礎に将来を眺めた意見を添えると豊かな感想文になると思います。
若い人に読書感想文を書いていただく目的の一つは読解力の向上にあると思います。
文字化された情報を読んで内容を理解するという能力は非常に重要なものです。
人が外界の状況や現象を理解する方法には大きく分けて二つあると言われています。
一つは映像と音声による方法、他の一つは文字による方法です。
未知のものを人に伝えるときは映像と音声による方法が適しています。
画像や動画を見せてしまえば説明がいらないという事象もたくさんあります。
しかし、画像や動画だけでは全く伝わらないこともあります。
それは人の頭の中(脳)で構築される様々な創造物です。
これを「物」と文字化してよいかどうかは別論としますが、人が考えたことを画像や動画にすることは非常に困難です。
人が他の人に、限りなく正確に脳内創造物を伝えるために言葉があると言ってよいでしょう。
私がいま並べている文字も読書感想文で困っている皆様にとって何かのお役に立てばいいなと思って並べているのですが、なかなかうまく行きません。
人が他の人に自分が見たことや感じたこと、想ったこと、考えたことを100%正確に伝えることは、おそらくできないのではないかと私は考えています。
したがって、不都合が生じない限度で共通認識を得るために様々な伝達手段があるのだと言ってよいでしょう。
文字はその中でも最も有力な手段の一つでしょう。
この文字を並べることで文ができ、文が並ぶことで文章ができていきます。
その文章を作者以外の人が作者の意図を可能な限り100%に近い確度で受け取るために読解の技術があるのでしょう。
読書感想文を作成する際に行う要約の過程はこの読解技術の向上に役立つ絶好の訓練の第一段階だといえるでしょう。
そして、感じたこと、想ったこと、そして場合によっては考えたことが文字化されることにより課題図書を正確に読んでいるかどうか、すなわち、作者の意図を正確につかんでいるかどうかを客観的に見ることができるのだと思います。
読書感想文の作成に込められたこのような意味を読書感想文を課された人々に十分伝えることができれば読書感想文の効果も向上するのではないでしょうか。
4.「読書感想文に優劣をつける必要は無い」と書きました。これは真実だと確信しています。
しかし、人々の中には「人は互いに競わせると能力が向上する」と信じているものがいます。
確かに、競技スポーツやその他、競争に馴染むものでは頻繁に競争が行われます。
しかし、私は「なぜ競うのだろうか?」といつも懐疑的に眺めています。
せめて人の感性を鍛える読書感想文では優劣をつけることは控えて欲しいものです。
本を読むことで他者の感じ方や考え方、生き方や価値観に触れることができ自分とは違ったものの見方を知ることができる。
これは大変素晴らしいことだと思います。
そして、自分とは異なる感じ方や考え方、生き方や価値観に触れたとき初めて世の中には様々な感じ方や考え方があることを知り、生き方や価値観があることを知ります。
この自分とは異なるものを自分と比較して眺めることで読書感想文が生まれるのではないでしょうか。
そうであるならば、感じたこと、想ったことを文字化した後に課題の本を離れ自分はどう考えるかということを将来の自分に向けて書き残すことは意味のあることだと思います。
以上一通り読書感想文作成のコツのようなものを書き連ねてきました。
やはり私の文字表現力が低いのでこの文も長く分かりづらくなってしまいました。
実際にお書きになったものを拝見できれば助言もできるのですがそれは難しいことですね。
皆様のご活躍をお祈り致しております。
合掌
(完)