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郷原信郎弁護士の「黒川検事長の定年後「勤務延長」には違法の疑い」と題する論考を是非ご一読いただきたいと思います。
https://news.yahoo.co.jp/byline/goharanobuo/20200201-00161318/
また、以下の愚考卑見もご笑覧いただきたく存じます。m(_ _)m
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ご承知の通り、政府は1月31日の閣議で、東京高検の検事長の勤務を国家公務員法の規定に基づいて今年8月まで延長することを決めたそうです。
しかし、この決定は違法ですね(ちなみに、ここで言う違法とは「窃盗は違法な行為だ!」という趣旨の違法ではなく、法律の解釈と適用を誤ったという意味の違法ですね。)。
このまま放置すると今後の検察事務に非常に大きな問題を残すことになるでしょう。
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法律上の疑義に対して、森法相は2月3日の衆院予算委員会で、法的に問題ないとの見解を示したそうです。
そして、その理由を「検察庁法は国家公務員法の特別法。特別法に書いていないことは一般法の国家公務員法が適用される」と説明したそうです。
https://www.sankei.com/economy/news/200203/ecn2002030018-n1.html
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この理屈は法学部の2年生あたりが法原則を誤解して導く誤りのレベルです。試験答案に書けば不可ですね。
確かに、検察庁法には定年について検事総長は65歳、それ以外の検察官は63歳と定められており、定年延長の規定はありません。しかし、定年延長の規定が無いのは定年を延長し、同じ人間が長期に検察権限を担う立場にとどまってはならないからです。
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周知の通り、検察官には「独任制の官庁」という言葉で象徴される通り強大な権限が付与されています。この権限が濫用されれば民主主義は破壊され、三権分立は崩れ、国は独裁国家に堕します。
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国家公務員であるとはいえ、他のそれに比し性質が全く異なるため、わざわざ法律に定年が数字で規定されているのです。数字で規定されている理由は任命権者の恣意を排すためです。
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森法相は上記の通り、「特別法に書いていないことは一般法の国家公務員法が適用される」と説明したそうですが、そもそも特別法と一般法との関係は、たとえば、商法(商事に関する民法の特別法)と民法との関係のように同じ社会的現象(たとえば、金銭の貸し借り)に対して前者には後者とは異なる特徴(=商人が金銭を借りるのは商売で利益を得るため)があるので、その特徴に鑑み特に必要な規定を置いているに過ぎません。
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さらに、特別法と一般法との関係には「特別法は一般法を破る」という法原則もあります。つまり、類似又は同じ社会現象について特別法と一般法とがあるときは一般法の適用は排除されるという原則です。
「特別法に規定が無いときは一般法に戻る」との一般法の原則を持ち出すならば「特別法は一般法を破る」という法原則との整合性を考慮しなければならないでしょう。
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この考慮をするとき指標となるのが法律の趣旨です。ここでは検察官の特殊性と、検察庁法が定年に関する規定を置きかつ数字で年齢を明示している点を重視しなければならないでしょう。
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検察官の定年延長や勤務の延長は違法です。したがって、延長後に延長された検察官が事務を処理した場合、その事務は違法に身分を持つものがした処理ですから無効となる危険があり検察事務が混乱する危険があると言ってよいでしょう。
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本件は速やかな撤回が必至だと愚考しております。
それが難しければ当該検察官が辞する外ないでしょう。
各位のご賢慮を願うばかりですね。
ちなみに、政府は「法務省の請議」があったからと言っていますが、これが真実ならば法務省の担当者による具体的な説明が必要ですね。
浅学非才愚考卑見乱文長文多謝