引退選手同士の興業試合のような映画と評した人がいたが、なるほど元ジェームズ・ボンドと元バイオハザードのアリスを演じた2人のアクションに往年のキレは見られない。
しかし、プロ野球OB選手たちによるモルツの試合が結構盛況を博しているように、この映画前半のロンドンを舞台にした展開はなかなかスリリングで見応えがある。
ロンドンの米国大使館でビザ申請者の審査官として働いているケイト(ミラ・ジョボヴィッチ)が、ある不審な動きに気付いて上層部に報告するが、逆に反感を買い揉み消されそうに…
時計屋(ピアーズ・プロズナン)と呼ばれる暗殺者のテロ攻撃を寸前でかわしたケイトだったが実行犯に仕立てられたあげく、暗殺者、MI5、ロンドン警察から追われるはめに。味方の米国大使からも疑われ、孤立無援の逃亡を強いられる。
上層部から見逃せと指図を受けても頑として捜査の手をゆるめようとしないケイトを、そこまで突き動かす動機が9.11というのも納得感があり、テロ対策における米英の微妙な温度差にスポットを当てた点は十分評価できる。
しかし舞台をNYに移してからの展開は、ハショリすぎというよりご都合主義も甚だしい。ケイトをしつこく追いかける時計屋の動機こそ明確だったが、MI5や米国大使館がなぜそこまでケイトを敵視しなければならなかったのかがよくわからない。
テロリストから脅されていたのなら、最後それぞれきっちりと落とし前をつけていただかないと、ケイトはもちろん観客の皆様も納得しかねるだろう。モルツ恒例のハゲ乱闘?じゃないのだから「みんなケがなくてよかったね」ではすまされないのだ。
サバイバー
監督ジェームズ・マクティーグ(2015年)
[オススメ度 ]