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『ホールド・オーヴァース』が久々のスマッシュヒットとなったアレクサンダー・ペイン。この人が撮った映画にハル・アシュビーの影響を認める人は多いが、2003年のゴールデングローブ賞を総ナメした本作も、保険会社を定年退職した男が妻に先立たれ、娘の結婚式会場へとキャンピングカーを一人走らせるロードムービーになっている。
この映画を劇場で見たときは、ジャック・ニコルソンのいかにもという役作りが鼻について今一ピンと来なかったのだが、自分自身が主人公シュミットの年齢に実際に近づいてくると、だんだんと骨身に染みて主人公の気持ちがこちらに伝わってくる、同世代特化型ヒューマンコメディなのである。なので『ホールド...』の本当の良さを理解できるのも、50歳を超えてからと言っても過言ではないだろう。
今まで仕事をわりとチャランポランにこなしてきた私でさえ、近頃の若者は💢と思うときが度々。まして大学を卒業して同じ会社に半生を捧げてきたシュミットが、新任の部長代理に何がわかるとキレたくなる気持ちも理解できるのである。さあこれから愛妻ヘレンと退屈な人生をやり過ごそうと思っていた矢先、今度は妻に先立たれてしまう。溺愛する一人娘ジェーンは低俗な男と結婚間近で父親のことなどかまっている暇がない。まさに孤独のヤモメ状態なのである。
葬儀を終え、台所の流しには洗い物が放置プレイ状態、脱いだものは床に散らかり放題、ハエがたかり始めた食い物も平気で口にいれるだらしな男一人生活。妻に先立たれた男の平均寿命は独男になってから9年だとか。普段から家事に無頓着な定年予備軍の皆さんは、今からでも遅くないから奥さんから家事を学んでおいた方が無難だろう。掃除もしないゴミ屋敷に人が寄り付くはずもなく、気がついたら自分の身体にハエがたかっていたなんてことにもなりかねないのである。
そんな孤独な初老の男が月22ドルで始めたアフリカの恵まれない子供への里親制度。この映画、未だ顔を合わせたことのない子供へしたためたシュミット氏の手紙が、ナレーション代わりになっている。妻と出かけるドライブ旅行用に買った最新キャンピングカーを駆って、娘が相手と式をあげるデンバーへと向かうシュミットは、その道中知り合った人々との様々なエピソードを、実話とのギャップを自分の都合のいいように脚色して、手紙に綴っていくのである。
運転する自分しか乗っていない大きなキャンピングカー。旅を続けていくにつれ、シュミットは豪華な室内が余計に広く感じられるほどますます孤独にうちひしがれる。娘の低俗な男との結婚を結局阻止することができず、他人の生き方に何一つ影響を与えることができなかった落伍者であったことをさとるのである。それもこれも死んでしまえばみな同じこと。シュミットが死を受け入れたその時、神はただ一つの例外が存在したことをこの男に気づかせるのであった。
アバウト・シュミット
監督 アレクサンダー・ペイン(2003年)
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