愛する家明、瞳瞳は間違いなくあなたと私の娘です。なぜ安生が瞳瞳を育てているのかって、きっとあなたは不思議に思うことでしょう。瞳瞳を出産する時にすでに私も気づいていたの、安生の予言通り私は27歳までしか生きられないかもしれないって。家明、この手紙をあなたが読んでいるということは、安生の予言が当たってしまったということね、残念ながら。きっと安生やあなたを演技とはいえ傷つけたバチがあたったのよ。
結婚式の前夜、あんなに酷い言い方をした私のことを恨んでいることでしょう。でもね家明、あなたのことが別に嫌いになったわけじゃないのよ、それだけは信じて欲しいの。私があなたを愛することはすなわちあなたと安生の仲を引き裂くこと、ソウルメイトである安生を傷つけることになるって、3人で山の祠にピクニックに行った時から分かっていたの。
もう歩けないなんて嘘をついて本当にごめんなさい、家明。安生は私のその嘘に気がついて、あなたへの想いを断ち切るために北京へ旅立って行った。家明、あなたが思っている以上に私と安生は以心伝心、なんてたってお互い影を踏み合った仲だったんだもの。私の母がつくってくれた肉マンの皮と餡を分け合ったように、あなたを私と安生で分け合えたらどんなに幸せだったことでしょう。
でもそれは無理。あなたの身体から心を切り離したら家明が家明でなくなってしまう、私も安生もそれに気づいていたの、だからお互い嘘を付き合って、大切なソウルメイトにあなたを譲ろうとした。まるで物のようにあつかって結果的に傷つくことになるあなたへの配慮が欠けていたことを、安生も私も謝らなければならないわね。本当にごめんなさい、愛する家明。
安生が私の名前で書いた携帯小説、家明あなたも読んでいたでしょ。私のためにあえて身を引いた安生が世界各地を転々としたように、あなたと別れて自由になった私が今度は世界を旅するの、ロマンチックでしょ。ずっと実家で両親と暮らしていた私を気づかった安生なりの思いやり、イアン・マキューアン作『つぐない』のブライオニーのようにね。旅先の私から安生に手紙を出さなかったのではなく出せなかったの、もうこの世界に私はいなかったのだから....
ソウルメイト/七月と安生
監督 デレク・ツァン(2016年)
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