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エルモア・レナードが書いた『ラム・パンチ』をはほぼ忠実に再現したクライム・ムービー。映画の解釈なんかより雰囲気を楽しむことが大切なのさ、という向きにはオススメの1本だ。日本のハルキ・ムラカミなんかもエルモア・レナードのファンらしいのだが、小説のもつ“いぶし銀”の魅力を伝えられたと、監督のタランティーノも自画自賛していて、原作作家もそれを認めているらしい。
元々、突き抜けた暴力描写と編集の旨さには定評があるのだが、ことシナリオの捻りという点では他に一歩譲るタランティーノなのである。おそらく、観客の目を欺くミスリードが描けない根が正直なヒトなのであろう。原作の雰囲気重視のためか、時系列に素直に並べられたストーリーは見ていて何も面白さを感じられないのである。しかも、肝心の暴力シーンもかなり今回は抑えられており、前情報なしに本作を見ればタランティーノ作品だと気づかないほどだ。
傑作といわれる『パルプ・フィクション』の魅力は、複数の物語の時系列をバラバラにしてつなぎ直したその編集の旨さにあると鋭く見抜いた人がいたが、こと映像表現がずば抜けて優れていると、映画のもう一本の柱であるシナリオの出来がいまいちの映画監督は割と多い気がする。デヴィッド・フィンチャーやロバート・エガースなんかもそのお仲間であろう。おそらく若い時分の(コミックではない書籍の)読書量が影響しているかとも思うのだが確信はもてない。
いずれにしても“大人の雰囲気”にこだわりすぎた本作は、パンチに欠けるというかインパクトを全く感じないのである。正直、ショピング・モールにおける現金引き渡しのクロスカットなんかも、ソダーバーグあたりにやらせれば数倍うまくこなしたことだろう。一番の問題はタランティーノ自身が、シナリオの不出来にまるで気づいていないという点であり、『パルプ・フィクション』以降映画賞から遠ざかっているのもそれが原因だったのかもしれない。
ジャッキー・ブラウン
監督クエンティン・タランティーノ(1997年)
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