ゴダールやロメールと親交の深かったヌーベルバーグ一派の映画監督クロード・シャブロル。私は本作ではじめてこの監督の作品にふれたが、ロメール作品とはまたちがった俗っぽさに奇妙な魅力を感じる1本である。
田舎から出てきた好青年シャルル(ジェラール・ブラン)が受験のためパリに住む従兄弟のポール(ジャン=クロード・ブリアリ)宅に下宿することに。そのポールはといえば同じ受験生にもかかわらず夜毎パーティ三昧の典型的くされおぼっちゃまくんだ。
ポールに案内された店で偶然知り合ったフロレンス(ジュリエット・メニエル)という女性に一目惚れ恋に落ちるが、これがとんでもない尻軽ビッチ。何とポールとくっついてしまいそのまま3人の奇妙な同棲生活がはじまるが・・・・
フランスお得意の不条理劇であるという情報は事前に察知していたため、この後の展開は予想どおりだったが、映画観賞後の余韻はあくまでもライトボディのスパークリングワインといった趣。
祖母から相続した莫大な遺産や、本作の大ヒットで得た収益を、映画会社設立やヌーベルバーグ仲間の映画出資にあてたというシャブロル。もしかしたらその分身であるかもしれないポールのキャラクターにその理由があると思うのだ。
裏の仕事をこなすクロディウスという男に金をつかませて、自分の子を妊娠した女の後始末や裏口合格の手配をするは、シャルルの猛勉強中に、モーツァルトやワーグナーを大音量でかけて邪魔をするとんでもない男なのだが、妙に仲間の面倒見がいいのである。
純情そのもののシャルルが恋に落ちた時も、先天性浮気症のフロレンスに「うまくいくわけないだろ」と従兄弟のためを思って真剣に忠告するポール。結局ミイラとりがミイラになってしまうのだが、どうにもこうにも憎めないキャラなのである。
そんなポールが偶発的にせよ犯したラストの罪は、(劇中の乱痴気パーティと重なる)ヌーベルバーグ熱狂の影で、真摯に人生と向き合って消えていった名もなき人々(アンシャン・レジーム)への贖罪のような気がしたのだがどうだろう。
いとこ同士
監督 クロード・シャブロル(1959年)
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