ネタばれせずにCINEるか

かなり悪いオヤジの超独断映画批評。ネタばれごめんの毒舌映画評論ですのでお取扱いにはご注意願います。

失われた週末

2017年07月24日 | 誰も逆らえない巨匠篇



映画冒頭、週末旅行を企画する兄弟。そして荷造りをしながら窓の外をやたら気にする弟ドン・バーナム(レイ・ミランド)。窓枠からぶら下げられた1本の酒瓶によって、観客はドンがアル中状態であることを知らされ、恋人や兄に隠れてコソコソと酒を飲んでいることが明かされる。一見まともそうに思える作家の卵が、酒に溺れて堕落していく様が非常に生々しく描かれている。1杯が2杯に、2杯が3杯に・・・・、自分への言い訳を重ねていきながら深酒をしていくレイ・ミランドの真に迫る演技が秀逸だ。

ビール中ジョッキ2杯で真っ赤になってしまう自分には、酒を飲む人の気持ちははっきりいって良くわからないが、喫煙者が社会的にあれだけ隔離されているにも関わらず、運転中でさえなければ愛飲者にはまったくお咎めがないというのも、不公平な気がする。糖尿病や肝臓をやられる人のほとんどが酒飲みであることは事実であり、あきらかに体には悪影響ということがわかっていても、酒がやめられない人間たち。

ドンを心底から心配してくれる恋人の存在によって一時的に立ち直ったかに見えるが、売れっ子作家になったらなったで別のプレッシャーがまたもやドンに襲い掛かるにちがいない。人生とは何と苦に満ちているのだろう。麻薬常習者や喫煙者、愛飲者は、その苦痛から逃れるために麻薬、タバコ、酒を体内に取り込み、ひたすら死に急いでいるように見えなくもない。

本国アメリカでは第二次世界対戦のPTSDに苦悩する帰還兵の多くが酒に溺れ、本作の主人公に自分を重ねたという。

失われた週末
監督 ビリー・ワイルダー(1945年)
〔オススメ度 


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