『風が吹くとき』の“風”とは、核爆弾投下によって発生する猛烈な爆風のこと。レイモンド・ブリッグスの原作絵本をアニメーション化した本作品は、原作に比べより反戦・反核メッセージが強いものとなったため、映画館における一般公開が見送られたという。というよりも、お子様向けのファンタジー『スノーマン』と同じ原作者とは思えないほど、内容がかなりブラックなのである。
イギリスの片田舎で隠居生活をしている老夫婦。大島渚が日本語監修を、森繁久弥と加藤治子が吹替えをつとめた日本語吹替版を鑑賞したのだが、(悪評高きジブリ作品のアフレコとは違って)なぜかピタリとはまっているのだ。戦争勃発の噂を聞いて、マニュアルをみながら簡易シェルターの準備にとりかかる爺さんに、こまごまとした家事をこなしながら小言をいう婆さんの掛け合いが、「ほんとに原爆なんか落ちるんかい」と疑いたくなるほどのんびりとした平和な雰囲気を醸し出している。
しかし一転、ラジオ放送の予告どおりどこぞの国から発射された核ミサイルがイギリス本土に着弾すると、この老夫婦の家屋はもちろん周囲の家々も一瞬のうちに焼野原と化してしまう。時折挿入される実写とおぼしき映像が、核の恐怖を増幅させる演出効果を発揮していて、被爆した(本人たちは気づいていないところがまた残酷)夫婦が次第に放射能の影響で心身ともに弱りはてていく様子が超リアルに描かれているので、お子さまと一緒に見る時にはそれなりの配慮が必要だろう。
髪の毛が抜け落ち、目が落ち窪んだ2人が焼け焦げたソファに横たわりながら、「政府がそのうちなんとかしてくれるさ」的な発言を繰り返すのだが、これがお上に対する(痛烈な)皮肉ともなっていることをけっして見逃してはいけない。「原爆投下」を支持する人が6割も締めているどこかの国民の中にもまともな考えを持っている人がいてくれたことが、せめてもの救いに感じられる1本だ。
風が吹くとき
監督 ジミー・T・ムラカミ(1987年)
〔オススメ度 〕
イギリスの片田舎で隠居生活をしている老夫婦。大島渚が日本語監修を、森繁久弥と加藤治子が吹替えをつとめた日本語吹替版を鑑賞したのだが、(悪評高きジブリ作品のアフレコとは違って)なぜかピタリとはまっているのだ。戦争勃発の噂を聞いて、マニュアルをみながら簡易シェルターの準備にとりかかる爺さんに、こまごまとした家事をこなしながら小言をいう婆さんの掛け合いが、「ほんとに原爆なんか落ちるんかい」と疑いたくなるほどのんびりとした平和な雰囲気を醸し出している。
しかし一転、ラジオ放送の予告どおりどこぞの国から発射された核ミサイルがイギリス本土に着弾すると、この老夫婦の家屋はもちろん周囲の家々も一瞬のうちに焼野原と化してしまう。時折挿入される実写とおぼしき映像が、核の恐怖を増幅させる演出効果を発揮していて、被爆した(本人たちは気づいていないところがまた残酷)夫婦が次第に放射能の影響で心身ともに弱りはてていく様子が超リアルに描かれているので、お子さまと一緒に見る時にはそれなりの配慮が必要だろう。
髪の毛が抜け落ち、目が落ち窪んだ2人が焼け焦げたソファに横たわりながら、「政府がそのうちなんとかしてくれるさ」的な発言を繰り返すのだが、これがお上に対する(痛烈な)皮肉ともなっていることをけっして見逃してはいけない。「原爆投下」を支持する人が6割も締めているどこかの国民の中にもまともな考えを持っている人がいてくれたことが、せめてもの救いに感じられる1本だ。
風が吹くとき
監督 ジミー・T・ムラカミ(1987年)
〔オススメ度 〕