佐藤匠(tek310)の贅沢音楽貧乏生活

新潟在住の合唱指揮者・佐藤匠のブログです。

スタニスラフ・ブーニン オール・ショパン・リサイタルin上越~少数派の意見~

2005年12月21日 00時27分05秒 | クラシック
 12月10日(土)

 ブーニンのリサイタルへ行く。

 チケットはあらかじめ実家の親に取ってもらったが、
市民先行発売で並んだのが50人ほど。
知名度はあるはずだけど売れ行きはどうなのか。
客入りを心配していた。

 道中の大きなミスを引きずりながら、
開演ギリギリに到着。
客入りは7割くらいか。

 なぜか、ステージにピアノが2台ある。
1台が正面。もう1台は上手寄りやや奥に。

 登場。デカい。細い。

 そう、本来なら1曲ずつコメントすべきなのだが、
プログラムを買わなかったので
(というか買う気がしなかった)、
ごくごく簡単に。

 ピアノは、使い分けていた。
上手よりのピアノは、マズルカやワルツを弾き、
それ以外を正面のピアノで弾いていた。

 さて、、、書きづらいな(笑)。
客の雰囲気や、うちの親(別の場所で聴いていた)の意見を聴くと、
僕の意見が少数派かなと思うので、控えめに。

 まず、音がきれいじゃない。
打鍵が強い。何と言うか、常に叩くというか。
よって、和音も美しくない。
ちゃんと鳴った音を聴いているのかな?と感じる。
それとも聴いていてその上で良しとしているのか。

 そして何より気になったのが、
上記のため、レガートがレガートじゃない。
滑らかな音を期待すると、固めの、繋がらない音がくる。
ショパンにおいては(僕のショパン像ですが)、
結構致命的というか、とにかく気になった。


 そう、僕が高校生の頃、
ブーニンをテレビでよく見ていた。コンクールで1位を取った頃。
当時の僕は、辞めるきっかけを失いながらも、
なんだかんだで一応ピアノを続けていた。
とにかく、分かりやすいのが好きだった。
ショパンで言うと、ポロネーズとか。
だから、彼のちょっと荒っぽい、ミスタッチも恐れない
弾き方を、かっこいいなと思っていた。
彼の「英雄ポロネーズ」を聴いて、絶対いつか弾いてやると
思っていた(叶っていないが)。

 そう、当時の僕なら、今の彼の演奏を聴いて、
喜んでいたに違いない。
でも、月日が経った。
音楽雑誌で読んでいた、彼のその後。
「円熟」「深み」のキーワード。
その辺に期待していた。変わったんじゃないかと。
でも、基本は変わっていなかったかな。

 少数派ですよ。繰り返しますが(笑)。
ただ、僕の知ってる上越のピアノ関係者が
ほとんどいなかったのを見ると、
専門家もそういう評価なのかなと、ちょっと思う。

 演奏会レポで初めて批判的に書いてますね(笑)。
ただ、好みの問題です。
だから、ちょっとショックでしたね(笑)。
久しぶりに大物の高いチケットだったので。
興味のある人は、実際にCDや生演奏を聴いて、
判断してくださいね。あくまで自分の意見を大切に。



アリス=紗羅・オット(p)ライブレコーディング

2005年12月21日 00時17分45秒 | クラシック
 12月9日(金)

 アリス=紗羅・オット(p)のライブレコーディングを
聴いた。
 

 彼女は1988年ミュンヘン生まれの17歳(若い!)。
各コンクールで軒並み第1位を受賞。欧州各地で
演奏活動を行う他、ザルツブルグ音楽祭、
ライプツィッヒ・バッハ音楽祭等にも出演する
天才若手ピアニスト。

 実は今年2月に、今回会場である小出郷文化会館で、
CDライブレコーディングを予定していたのだが、
急病のため止む無く当日キャンセル。
10ヶ月経ち今回このライブレコーディングが実現した。
勿論、形式は普通の演奏会。
なお、このレコーディングは、中越大震災、
パキスタン北部大地震復興記念チャリティを
兼ねている。

 このある種マニアックな公演に行く。
1000円!安い。

 仕事後向かう。片道90km。
しばしば足を運んでいるにも関わらず、
時間配分を間違え、慌てて高速へ。
しかしそこへ辿り着くまで遠い。おまけに
道を間違えタイムロス。さらに地震復興工事のため
1車線のみ。みぞれ交じりの大雨。
結局19:08到着。遅刻。
R・シューマン「ロマンス第2番」が終わり、
L.v.ベートーヴェン
「ピアノ・ソナタ第21番ハ長調『ワルトシュタイン』」の途中。
客は多くないが、ライブレコーディングのため、
いつものコンサートと雰囲気が違う。音を立てずに近くの席へ。

 上記に続いてベートーヴェンの
「ロンド・カプリッチョト長調『失われた小銭への怒り』」。
そして休憩後ベートーヴェン「ピアノ・ソナタ第23番へ短調『熱情』」。

 そう、このベートーヴェンが素晴らしかった。
少し聴いただけで、彼女の非凡な才能を感じる。
当たり前かもしれないが、技術が確か。そして非常にダイナミック。
そして、何よりも、構成がしっかりしている。

 僕が思うベートーヴェンのピアノ作品。
彼は間違いなくメロディーメーカーではない。
だから、雰囲気に頼って何となく演奏すると、
ベートーヴェンは絶対に失敗する。
音楽を構成する一つ一つの動機を重要に扱って、
しっかりと、がっしりと音楽を組み立てる、
構築する力が重要になってくる
(うーん言葉足らず。不勉強ですね。すみません)。
 彼女の演奏は、若いのにベートーヴェンに必要な重厚さがあり、
小細工しない正面から向き合った演奏。
久しぶりにベートーヴェンのピアノ曲を
いい演奏で聴けた。これだけで大収穫だった。

 最後はリスト「ハンガリー狂詩曲第2番」。
超難曲です。しかし、良く弾ききっていた。
レコーディングを忘れたような熱の入った演奏。
リストのピアノ曲は好き嫌いが分かれるが、
とにかくピアノのあらゆる可能性が凝縮されている。
リストでしか聴けないサウンドってある気がする。
 確固たる技術に情熱が加わり、
華やかでありながら重厚感たっぷりの本格派の演奏で幕を閉じる。

 アンコールはリストを2曲。
大きな拍手のうちに終了。


 いやー、凄いな。本当に良かった。
遠路はるばる行った甲斐があった。
 ちなみに、12月7,8日2日間の録音+今回のライブレコーディングから
演奏が検討され、CD化が行われる予定。
 この人、多分これからもっと注目されると思います。
皆さんお忘れなきよう。