弥坂湯から箱根湯本駅に戻って、もうひとつの湯に向かいます。
乗って行くのは、箱根の大きな魅力「箱根登山電車」。
登山鉄道で巡る共同湯の旅、温泉王国日本といえども、他では味わえない湯めぐりです。
のんびりと電車の揺れ心地を楽しみます。
買い求めた駅弁は「はこね弁当~ 二十三の物語~」。
まわりは外国人の二人連れが4組、向かいには奥さまの二人連れ、お話しが尽きないようです。
急坂を普通の電車とは比較にならないほどゆつくりした速度で登っていきます。
キーキーガタンガタンというこの響きは、大正時代の音です。
--箱根登山電車よもやま話--
箱根湯本~強羅間8.9kmを結んで運転を開始したのは大正8年。
出山、大平台、上大平台にスイッチバックが設置され、最急勾配は80パ ーミル(水平1000mあたり80m上昇)という、東洋では唯一の本格的な登山鉄道なのです。
明治43年の初期の設計では、急勾配区間にアプト式を採用する予定だつたが最急勾配が 125パーミルにもなり、技術的な懸念が生まれたそうな。
そこで工事を中断し、スイスの登山鉄道を研究した結果、アプト式の採用は見送られ、通常のレールと車輪で走る粘着式の、スイッチバックの鉄道として設計しなおされたんだとさ。
「出山信号場」で最初のスイッチバック、運転手交代、進行方向が逆転します。ここでは降りる事は出来ません。
標高は234m。
出山信号場から見える出山鉄橋、紅葉と青空が何とも爽快です。
大平台駅で下車、スイッチバックの駅に立ちます。
ここで列車の進行方向が再び逆転し、それまで車両前部にいた運転士が後部の運転席に、車掌は前部に移動します。
箱根湯本から乗って来た電車です。
この駅で上りと下りの列車の交換も行われるため、強羅方面から下ってくる電車を待ちます。
来ました、次の宮ノ下駅から下って来た登山電車。
大平台駅に並ぶ、左側の2014年にデビューした新型車両3000形「アレグラ号」と1000系愛称「ベルニナ号」。
先にベルニナ号は宮ノ下駅に登って行きます。
「アレグラ号の赤い車体に映る紅葉」
アレグラ号は、箱根湯本に下って行きます。
ホームから階段を登って振り返ると箱根の山の綺麗なこと、魅入ってしまいます。
ホームの上にある駅舎は勿論無人です。
この駅前の坂を「箱根駅伝」のランナーが駆け抜けていきます。
姫の湯は歩けば5分、すぐ分かるだろうと地図をよく眺めず歩きます。
途中、お弁当のおともの黄色いお水を買って姫の湯に向かいます。
どうも住宅地が多くて道が分かりません。
前を歩いている老婦人に尋ねると、有り難いことに「近くを通るからご一緒に」と促してくれます。
道すがら「あそこはいいお風呂よ~ 熱いけどね~ 東京~ 電車で来たの~ 娘が受付にいるのよ~ 午前中で交代とか」色々なお話をしていると見えてきました。
細い坂道を上り詰めた奥まった場所に、その名も可憐な「姫之湯」が。
共同湯にしては立派な構えですね~
「姫の湯」の名前の由来は、近くにある名水「姫の水」にちなんだものです。
「姫の水」は小田原北条氏の姫君が化粧に使ったといわれ、肌が美しくなる水だそうです。
受付に行くとお姉さんが2人、案内してもらった事を話すと、
奥に座っているお姉さんが、「私の母です」と。改めてお礼を言います。
有料休憩室を借りて、初めての訪問だと言うと、お姉さんが丁寧に施設を案内してくれます。
設備は新しく、掃除が行き届いていて快適です。
大きな休息室と個室が利用でき。駐車場もあります。
きちんと手入れが行き届いていて、ひなびたゆるさがあまり感じられないけれど、清潔好きな人は、断然このほうがいいはずです。
広々した六角形の浴室の中央に、円形の浴槽が配置され、注ぎ口からは透明な湯が、かなりの勢いで注ぎ込まれています。
先客がひとり、話の中に「箱根の共同湯では、姫の湯がいちばんだよ」と。
常連はどこでも同じことを言うものです。
この湯の温度は、44.5度の熱湯なので皆さん湯まわりに座り、湯掛けを楽しんでいます。
有料休憩室は日がさんさんと降り注ぎ、横浜から週に2回も来られるお客さんはパジャマに着替えてくつろいでいます。
わたしもシャツ1枚になり、座布団を3枚重ねお昼の準備。
「はこね弁当~ 二十三の物語~」、綺麗なお弁当ですね~。
箱根に行くと旅館のお風呂ばかりを利用していましたが、途中駅で下車してぶらりすると、この地はいくつもの共同湯に出会うことができます。
いずれの共同湯も、駅から少し歩く必要がありますが、気持ち良く散歩をするという程度の距離です。
箱根湯本~強羅間は、上り下りともほぼ1時間に4本ぐらいの間隔で列車が運転されていて、ちよつと待てばすぐに次の電車がやってきます。
駐車場もない箱根です、登山電車を使っての共同湯めぐりはいいものですよ~
時間もあれば、お弁当をスケッチをしたりして贅沢な時間を過ごします。
帰りは近道を通って大平台駅へ向かいます。もう迷うことはありません。
黄色くなった「山神神社」の境内を近隣の人が、落ち葉拾いをしています。
登山電車を待ち箱根湯本に下ります。
これだけ多くの温泉を楽しんでも、東京から十分に日帰りが可能なのが箱根。
新宿駅や東京駅のホームに立つたびに、私の脳裏に3本の湯けむりがボッと立ちのぼってしまいます。
お決まりの駅弁お土産「はこね 幕の内弁当」と「浜焼き弁当」を買って、小田原駅から東京へ向かいます。
箱根のワンコインで入れる共同湯めぐり、ご覧いただきありがとうございました。
今年も残りわずか、度々のご訪問ありがとうございます。