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意思による楽観のための読書日記

三体 劉慈欣 ****

物語にはいくつかの背景がある。まずはタイトルの三体、宇宙空間にある巨大物体、例えば恒星が2つ近接してあると、互いの引力で二連星となりある距離で安定するが、それが3つあると相互の関係や距離は安定しない。それがもし恒星で、その3つの恒星に惑星系があるとしたら、その惑星系で起きることは、予想がつかない。もう一つは地球環境の悪化は人類の活動によるもので、この悪化速度は中生代の終わりをもたらしたと言われる巨大隕石衝突後の地球環境の悪化に伴う種の絶滅スピードを上回っているというもの。

過去と現在が交互に語られる構成。まずは子供時代の文潔は父親を文化大革命で虐殺される。政治的に問題ありと烙印を押されながらも、物理学者としてのキャリアを重ねるが、将来に希望が持てないときに謎の施設に来ないかと招聘される。そこは目的がよくわからない巨大パラボラアンテナがある場所だった。徐々に実力を認められ重要な業務を任されるようになり、ある時、発信する信号出力を劇的に向上させる可能性がある実験を試してみることにする。実権は見事に成功、全宇宙に向けて人類からのメッセージが発信された。そして、それから数年後に、アルファ・ケンタウリ恒星群からのメッセージを受け取った。そこには「このメッセージに返信してはならない、なぜなら、わが星からの攻撃軍がそちらに向かうことになるから」という警告メッセージがあった。自分と地球環境の将来に希望が持てない文潔は、メッセージに返信を出した、すぐに助けに来てほしいと。

数十年後、ナノテク素材を研究する汪森は、ある団体から加入することを求められる。そして複雑な体験型ゲームに入り込む。そのゲーム空間での経験はおよそ現実離れしていた。3つの太陽を持つその場所では、予測がつかない3つの太陽のお陰で灼熱と寒冷を繰り返し、発展する文明がなかなか継続しない。ゲームが一区切りするとログアウト、そして現実に戻ることを繰り返すが、ある時、ゲームオフ会で、汪森は団体から正式にメンバーとして迎えられた。その団体は「三体問題」を地球上に広めることを使命とする集団で、内部で勢力争いが起きていた。ゲームは三体世界の歴史が組み込まれた壮大な物語だった。

団体の総帥は文潔、スポンサーは大金持ちのエバンスだったが、三体からのメッセージには続きがあった。そのメッセージはエヴァンスの勢力が独占し、それが争いの原因にもなっていた。汪森は研究していたナノテク素材を使って、宇宙エレベータを建設することを期待されるが、その前に、敵対する勢力の抹殺と続きのメッセージを奪い取る動きに加担することになる。メッセージには三体世界から地球攻撃軍が出発したこと、それが地球に到着するのは450年後であること、そして三体世界における様々な事情も分かる。到着までの地球の科学進歩を警戒した三体世界では、地球科学の進歩を抑制する手段を実行していた。時間がかかる巨大戦隊よりも高速で地球にまで到達する2つの原子を送り込むことで、地球での混乱を生じさせるという荒唐無稽な話。地球人を虫けら扱いする三体世界と地球の運命や如何に。第一部はここまで。
 

↓↓↓2008年1月から読んだ本について書いています。

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