タイトルに惹かれて読んでみた、懐かしい阪急電車今津線。大学生の時代に乗っていたのは通学のために乗る京都線と宝塚線だったが、友人が多く暮らす神戸線、今津線にも度々乗車したので、思い出すことが多い。よく乗降したのは、門戸厄神、仁川、甲東園、逆瀬川。今から50年ほども前なので景色や家並みは大きく変わっているはずだが、京都線から宝塚線乗り換えの十三や北千里線の淡路とは大きく電車内の雰囲気や乗客層が違ってくる、本書からもその雰囲気は感じ取れるはず。
物語は連作短編風で、登場人物が駅間を移動して男女のすれ違いと出会い、初恋、恋愛のもつれ、おばさんグループのなかでの鬱屈、おばあちゃんと孫娘などの会話で、物語を紡ぐ。今では山の途中まで高層マンションや住宅が開発されている場所、50年前は緑に覆われていたと思うし、宝塚の駅前なんて高層マンション群が立ち並んで見違えるようである。物語はその宝塚駅から一つづつ進んでいく。宝塚南口など、駅を少し離れると家などは立っていなかったはずだが、今はぎっしり。50年ほど前は、小林や逆瀬川に住宅開発が始まり、家が建ち始めていた頃。甲東園にある有名大学には、クラブ活動のエキストラとして呼んでもらい、度々駆けつけた記憶も蘇る。門戸厄神には今でも親戚のお宅があり、お邪魔することもある。
物語を読み進むほどに、ストーリーは大学生同士の初恋や若者の出会いなどなのだが、どうしても大学時代の情景を思い出す。どうも、記憶が物語を邪魔していたようで、思い出した景色がフラッシュバックしてしまい、内容の方の印象が薄い。