『できないことをしようとするから苦しいんだ』
百合は、薔薇にはなれない。
百合は、百合らしく咲けばいい。
*以下、サンダー・ウルフの個人的な記録
ヒモトレ。1日目。
ちょっとタスキ掛けした日の夜。
なかなかいい眠りができた。
最近また少し緊張気味だった身体が、ゆったりと休めるような睡眠だった。
ヒモトレ。2日目。
タスキ掛けと腰ヒモ。
なんとなく、身体が空(カラ)になった感じ。
だけど、なんだか、風向きが怪しくて……。
過去に向かって風が吹いていて……。
せっかくの空(カラ)に、『過去』が入ってきてしまって、つい『古いやり方をなぞる自分』ばかり。詳しく言えば『退行してしまう意識』かな。
このまま「ありもしない自分探し」をしてしまいそうな雰囲気。
「ここに居る自分」を探しに、どこか遠くへ行ってしまいそうな感じ。
空(カラ)を何かで埋めたい感じ。
このまま動乱の中へ走って行ってしまうことも、あり得る感じ。
*
シリアスにならないように、散歩に出かけた。
強風がまた、わたしを過去へ押し戻すかのような、向かい風。
けれども、ふと、足が止まった。
『できないことをしようとするから苦しいんだ』
脈絡のないようであって、ストンと身体に落ちたメッセージ。
向かい風に踏ん張っていた力が、ふっと抜けた。
*
わたしは、音楽を辞めることができない。
ツラくても、苦しくても、どうしても、辞めることができない。
そんな自分を、ずっと不思議に思って生きてきた。
「腐れ縁」だと割り切って、音楽を続けてきたような感じだ。
転機は、去年の9月。
思いっきり体調を崩したときに、それは発覚した。
仕事に休みの連絡を入れることよりも、友に約束のキャンセルを伝えるよりも……。
わたしは、レッスンを休むことに泣いたのだ。
なんでだろうと、しばらく考えた。
そして、気づいてしまった。
「わたしは、愛されるために、音楽をやってきたんだ」と。
もう少し上手にピアノが弾ければ、愛されるかもしれない。
もう少し音楽の才能があれば、愛されたかもしれない。
わたしは、母に愛されたくて、音楽を続けてきたのだ。
もう愛されるための行動なんて、ほとんど卒業したつもりでいた。
だから、ショックだったなぁ。
「ああ、だから、音楽を辞められなかったんだ。」
「こんなにツラいのに、こんなに苦しいのに、どうしても、辞められなかったんだ。」
*
これから先、わたしが音楽をやるか、辞めるかは、自由だ。
だけど、これまでの経験と知識と技術は、わたし自身のものだ。
*
染み付いた向上志向が、苦しい。
気づいたからって、全然抜けない、癖。
ゆっくり。
リハビリみたいに、遊びながら、楽しんであげたい。
ゆっくり、探求の道へ。
これまでの経験と知識と技術は、わたし自身のものだから。
音楽だって、守破離なんだよ。
それが、今のわたしの希望だ。
*
欲しかった才能。
愛されたかったわたし。
*
愛されるためじゃなく、愛するために、唄いたい。
この身体にある愛。
この身体が踊り出す。唄い出す。
それは、しあわせ。