『日のくもり ゆふべに似たり。
ひぐらしや 声みじかくて、ふたたび鳴かず』
***
先日、うちの猫が虫をつかまえてきて、もてあそんでいた。
ときどき、朝、虫の死骸が畳の上に転がっているのを見ることがある。
この猫の仕業であるが、固くなったその小さな死骸を屑籠に捨てるとき、
『いのち』ということを私はふと思ったりする。
もてあそばされた、その虫は未だモゾモゾと動いていた。
私はその虫を捕まえて窓から放り投げたのだが、あいにく雨樋の中に落ちてしまった。
庭の草むらに落ちていたら、少しの間は落ち葉の露で命を繋いだかも知れない。
***
ひぐらしを聞かなくなって、もう何十年たつだろう。
夏の夕暮れに鳴く、あの淋しげな声は今でも耳の奥に残っている。
ひぐらしや 声みじかくて、ふたたび鳴かず』
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先日、うちの猫が虫をつかまえてきて、もてあそんでいた。
ときどき、朝、虫の死骸が畳の上に転がっているのを見ることがある。
この猫の仕業であるが、固くなったその小さな死骸を屑籠に捨てるとき、
『いのち』ということを私はふと思ったりする。
もてあそばされた、その虫は未だモゾモゾと動いていた。
私はその虫を捕まえて窓から放り投げたのだが、あいにく雨樋の中に落ちてしまった。
庭の草むらに落ちていたら、少しの間は落ち葉の露で命を繋いだかも知れない。
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ひぐらしを聞かなくなって、もう何十年たつだろう。
夏の夕暮れに鳴く、あの淋しげな声は今でも耳の奥に残っている。