怪人２面相

スイーツには全く興味のない夫。
しかーし！お酒に関しては人一倍熱心かつどん欲になる彼である。
日頃、私がデパートの物産展で、全国各地の有名スイーツに血道をあげようとすると
「なんや、しょーもない。そんなもん、どうでもええわ。」
と、にべもない夫である。
だが、今回は違った。
かの田崎真也氏が絶賛した、高知の焼酎「ダバダ火振」が、デパ地下で限定販売される、という情報が入るやいなや
「朝一で買いに行くぞ！」と宣言した。
気合い充分である。
普段、バーゲンや限定販売に群がる主婦を蔑むように眺める夫である。
ネットでもなかなか入手困難になっている幻の焼酎。
以前、旅行で泊まったオーベルジュ土佐山で飲んだ味が忘れられない。
好きなお酒のためならエンヤコーラ。
惰眠をむさぼる息子をたたき起こして、お一人様１本限りをクリアすべく人海戦術を図った。
宣言通り、朝一、デパートの開店直後に一目散にお酒売り場を目指した夫。
一番乗りで、お目当てをゲットしたらしい。
入手直後に電話が入った。
「２本買えたわ。３本はいらんやろ？」
私「そら、好きにしたらええけど。２本もあれば充分ちゃう？」
夫「そやな。２本あったら当分いけるもんな。そうするわ。」
と、そこで引き下がり帰ったはずであった。
ところが。
その先があった。
お目当ての二本をゲットしたあと、本屋をぶらついて、再び売り場に戻った。
売り場の女の子が
「え！お客様、先ほど二本お求めになりましたよね？
申し訳ございませんが、このお品はお一人様１本限りとなっております。」
と、夫の顔を覚えていたらしく（地方都市のデパートなんだから、そりゃそうだ。）チェックが入った。
そこですかさず夫。
「ほんなら、ちょっと待ってや。別人やったらええねんな？」
と、後ろを向いた。
「これやったらどぉ？さっきとは別人やで。」
夫が店員に見せたのは、老眼鏡のメガネをかけた顔。
まわりにいた人は笑って見ていたそうだ。
気真面目な店員も、そこまでされればさすがにそれ以上はつっこむこともできず更に１本差し出してくれた。
「悪いな。友だちに頼まれてん。ごめんな。」

確かに、美味しいよ、このお酒。
リキュールのオードヴィ、トリプルセックを思わせる超辛口。
よくぞ、手に入れてくれましたとも。
変装してまで・・・。

かくして、限定販売品のダバダ火振を３本調達。
あっぱれ、怪人二面相。
ご満悦の夜である。