埋もれた才能

予約していた本が入った、とのメールが入る。
お昼休みにひとっぱしり取りに行く。
普段なら、そのままとって返すところを、この日は違った。
はす向かいにあるスーパーで、お弁当に持ってきたサンドウィッチと合わせて飲むミルクティーとサラダかなんかを買い足そう、と思ったのである。
美味しそうな副菜が見あたらず、結局、ミルクティーとデザートのヨーグルトをかごに入れ、レジに並んだ。
ふと２列向こうのレジに並ぶ人に目がいった。
あれ？
Ｋクンじゃないかな？
うん、そうだ、きっと、間違いなくＫクンだ。

Ｋクンとは、私が高校１年と３年で同じクラスになった男子生徒である。
かなり山奥から通ってきていて、入学当時、風呂敷包みに学用品やお弁当を入れて背負って来ていたので、特に印象深かった。
マジソンバッグや、ＶＡＮのショップバッグを持つのが流行っていた頃、
いくら昭和世代とはいえ、風呂敷包みで学校に来るような男子は、全くいない。
周りの目は気にせず、おっきなアルマイトのお弁当箱を、２時間目と３時間目の間の休み時間に広げて悠然と食べるような男の子だった。
３年生の時、目のきらきらした可愛い女の子とつきあい始めたので、これまたビックリしたのである。
そんな純朴（ある意味垢抜けない）彼が、あの頃のまま、頭に白いものを混じらせて並んでいた。
でも、他人のそら似、っていうこともあるし・・・でも、似てるよなぁ・・・
そうなると、どうしても確認したくなるっていうのが人情。
ちらちらとマンウォッチングを始める。
頭は短髪、はげてはいない。
太ってもいなくて、むしろ昔よりやせて（しぼんで）見える。
サラリーマン風の装いではない。
あれ？よくみるとシャツの腕にクロネコマーク。
え！宅配のドライバーさんなの？
とすれば、きっとネームカードをぶら下げているはず。
これは、確証がえられるはず！！
と、にわか探偵になった気分で、さらに探りを入れようとしたら、私の番が回ってきた。
「お客さん、このカード、ちがうお店のものですよ。。」
と、レジのひとから指摘され、あわててポイントカードを渡し換える。
そんなことをやっているうち、ターゲットはレジを済ませてさっさと行ってしまった。
しまった！
いや、待て。ドライバーさんだとすれば、トラックの後ろドアに名札がついているはず。
いざとなれば、それを確認すればいいわけで。。
と、レジを終えた商品を袋に入れていると、目の前をガラス越しに彼が通り過ぎた。
ばっちり、ネームカードを確認。
やはり、Ｋクンに間違いなかった。
更に、後ろ姿を目で追うと、ズボンは普通のコットンパンツをはいている。
ドライバーさんなら、緑色の制服ズボンをはいている、ってことはやはり事務系？
乗り込む車は、普通の家庭用バン。
ふーん・・
この距離なら、追っかけていって
「あの・・Ｓ高校で３－４だったＫクンですよね？」
と言うことも可能である。
だが、その先何を言う？
第一
「そうやけど、それが何か？だし、アンタ誰？」
っていわれてもなぁ・・・
などなどごちゃごちゃ考えている間に、彼はさっさとクルマを走らせて行ってしまった。

それにしても、すんごい確率の偶然！
たまたま、いつもなら週末出向く図書館に、ふと気が向いて、本を取りに行き、さらには、普段ほっとんど寄ることのないそのスーパーに立ち寄り、さらにはぶらぶら見ていて同じ時間帯に出くわすなんて！
そして、そして、その前夜、私は同窓会の夢を見ていたのである。
（Ｋクンは登場していないけど）
私って、ひょっとして霊感が働くのかしらん・・

そんな話を夜、夫にしていた。
夫「ほんで、そのＫってヤツはどんなヤツなん？」
と尋ねられ
「民主党の俳優から転身した横光克彦ってひとに似てるんよ。」
夫「そんなやつ、知らんな・・」
と、話していたら横でニュースから
「民主党の横光議員が・・」と聞こえてきた。
夫「うわっ！言うてたらホンマに出てきた！！」
とびっくり。
ますます、予言者としての才能を感じる私。

私「それはそうと、単焦点レンズってすんごく綺麗に撮れるらしいねんけど、買おうかな・・」
夫「アンタは写真の勉強するより、占いの勉強でもしたほうがむいてると思うで。」
と言われてしまった。
恐山にでも籠もって、イタコ修行でもするかなぁ。。