ウンがついた話

普段ほっとんど仕事をしないで、たまーに仕事をしたら必ずミスをする上司。
終業5分前に、その上司が仕掛けた地雷を同僚節子さんが踏んだ。
よっぽど、見て見ぬふりをして帰ろうか、とも思ったがそれはあんまりだな、と思い直して節子さんに降りかかった火の粉を一緒に払うことにした。
だが、私が30分かけてした作業は、これまた上司の仕掛けた第二の地雷だったがために、全くの徒労で終わってしまった。
ち。ツイてないよ。。
と思いつつ帰路についた。
明日は雨が降りそうなので、食料の買いものは今日のうちにしておかなければ、家に帰ってからクルマで買いにでるハメになる、と少し多めに買い物をする。
自転車の前カゴに買ったものを目一杯積んで、重いペダルを踏む。
ぴとっ。
はっきりと音が聞こえ、口の横に違和感。
えっ、えーっつ！！ま・さ・か！！
鳥にフンを落とされた？？？
恐る恐る、視線を身体に落とすと、衣服についたあきらかな物質。
これは「トリのフン」だーっ！！
うぎゃーっ！鳥インフルエンザにでもなったらどうしよう？
寄生虫が皮膚から入り込んだらどうしよう？
あらゆることを想定して、汚れがついたあたりから全身に身の毛がよだつ。
取り急ぎ、顔についた糞を拭い取り、猛ダッシュで自転車をこいだ。

そのとき、ふと頭をよぎったのが先日見たテレビ。
番組で、宝くじの高額当選者の体験談を特集していた。
みずほ銀行の宝くじ担当者によれば、ある高額当選者が鳥の糞をクルマのフロントガラスに落とされた。
「ついてねぇなぁ。」と思いながら車を走らせていると、不思議と信号にひっかからない。ようやく止まった赤信号で、ふと脇に目をやると宝くじ売り場があった。
「ちぇっ。宝くじでも買ってみるか。」
とそのときに勝った宝くじが1等の大当たり。
やっぱり、売り場のお姉さんが言った
「鳥に糞を落とされたってことは、ウンがついた、ってことですよ。きっと当たりますよ。」と言ってくれたのは本当だった。
という話。
へぇ、クルマのフロントガラスには結構糞を落とされてるけど、なかなか宝くじって当たんないよねぇ、と夫と話をしていたばかりだ。
今度、糞を落とされたら迷わず買おうね！と誓い合ったのはつい最近のこと。

が！！
世の中広しといえど、自転車を走らせていて顔に糞を落とされる人間もそう多くはいないだろう。
こんな千載一遇のチャンスを逃すなんてもったいない。
という思いもチラリとよぎる。
だが、自転車のカゴにはずっしりと重い食料品の山。
これを持って、この糞まみれの状態で宝くじ売り場に駆け込むのもなんだか気が重い。
迷った挙句に、くじ売り場の方へ自転車を走らせることなく、自宅への道を選んだ。
そうだ、きっとあの分岐点こそが私をミリオネアへと導くか、普通の主婦のままで終わるかの分かれ道だったのだ。
おばかな私。
自らの手で運を手放してしまった。
日ごろ、家を綺麗にしていない怠慢が、こうして私の運勢を下げていっているのかもしれない。
週末は絶対、掃除をしよう。
いや、きっとするだろう。
たぶん、すると思う。
する、かもしれない・・・。