ときの備忘録

美貌録、としたいところだがあまりに顰蹙をかいそうなので、物忘れがひどくなってきた現状にあわせてこのタイトル。

風の想い出

2006-09-21 | 砂時計
朝、出勤時に自転車をこぐと、ひんやりした風が通り過ぎる。
♪秋の光にきらめきながら♪というユーミンの「さざ波」が頭の中で回り始めたら、私の中で本当の秋が始まったことになる。
なぜ、この歌なのか、といえば。

学校を出てすぐに勤めたアパレルメーカーを1年ちょっとで辞めた。
自分の思い描くOL生活と程遠い毎日が嫌だった。
周りにいるひとたちと、話していてもちっとも楽しくなかった。
ファッションは嫌いではなかったが、仕事にするほど好きでもないことがわかった。
まだ、そのときは「好きなこと」を「仕事」にするのが理想だと夢見ていた。
自分に何が出来るでもないのに、とりあえず食べていくために何か仕事につかなければならなかった。
でも、しんどい仕事は嫌だった。
雑誌にでてくるような完全週休二日の、アフター5を満喫できるようなOL生活がどこかにあるのだと信じていた。
もらったばかりのボーナスを食いつぶしながら、8月1ヶ月はまるまるプラプラ遊んでいた。
9月に入り、そろりそろりと影が長くなり始めると、再就職活動を始めなければならない気になった。
貯蓄は底を突き始めていて、就職活動で移動する電車賃も節約しなければならなくなっていた。
親の反対を押して選んだOL生活なので、親にすがることなどできなかった。
だから、教師になれ、と言っただろう、と言われるのがくやしかった。

大阪の街を、自転車でウォークマンを聞きながら再就職活動に奔走した23歳の秋。
テープが擦り切れるほど聞いていたのはユーミンの「14番目の月」だった。

自転車で面接に「漕ぎ付けた」ガッツを買われてか、ある外資系証券会社が一発で採用してくれた。
が、そこは外資系。そうそうたる一流大学の英語ペラペラの才媛たちが並んでいる。
ガッツだけで採用されてもねぇ、とこちらのほうが怖気づいて、その場でご辞退申し上げた。
辞して部屋を出て、降りるエレベーターのなかで聞いていたのは「さざ波」だった。
「指のすきまを逃げてくさざ波」
指の隙間から落とした就職先が、その歌詞にかぶさった。
当たって砕けろ、でがむしゃらにがんばれば語学のできない私でもどうにかなったかもしれない。
はたまたやり手のエリート証券マンを絡め取って、永久就職という道が開けていたかもしれない(笑)。
そんな思いが交錯する中、来る日も来る日もユーミンを聞きながらペダルを踏んでいた。

だから、秋風を感じたときには「さざ波」。
昨日、labさんの日記を読んで嬉しくなった。
同じ音楽で、同じ秋風を感じる人がいることが嬉しかった。
久しぶりに「14番目の月」を聴いてみようと思った。

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2 コメント

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音と風 (CITROEN)
2006-09-23 00:50:29
って、つながりますよね。

マーブリさんはスザンヌ・ヴェガですか!

さすが若い!(笑)



夏の間は、音楽でさえ暑苦しく思えましたが、涼しくなってくるとやはり音楽が身近になりますね。

夜のしじまがなおのこと音への郷愁をかきたててくれるのかもしれません。
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そのときの空気 (マーブリ)
2006-09-22 23:18:46
23歳のCITROENさんのそのときの気持ちとか空気感が伝わりますね。

さざなみってどんな歌なのかな?多分耳にしたことがある曲なのでしょうね。

秋はなんだかセンチメンタルになりますね。

私は20歳くらいのときよく聴いていたCD(スザンナ・ヴェガ)を無性に聴きたくなって最近買いました。

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