新聞屋がくれた映画館のチケットがあり、仕事を終えた後、思い立って渋谷に出かけた。
上映開始時刻が合う中で選んだのは、亀梨和也主演『俺俺』。
映画館に来るのは久しぶりだな。3,4年ぶりくらいか。
映画は大好きだが、映画館ではほとんど観ない。
暗いと寝てしまうからだ。これはもう覿面。たとえ爆音の銃撃戦のさなかであっても寝入ってしまう。
映画好きな人は映画館で映画を観る理由に「大画面の迫力と音響の良さ」を挙げるが、
今は家のテレビも結構大画面で画質もいいし、音響だって悪くない。
そもそも、大画面が相応しいかどうかは作品によりけりだし、僕は耳が「弱い」のか、大音量が苦手だ。
この「箱」は席数が少なく、スクリーンも相応の大きさで、
感覚的には家でテレビを観ているのとあまり変わらなかった。
で、映画だが、
<以下ネタバレあり>
タダ見でも遠慮なく言うが、いまひとつだった。
これは僕の中での「面白い映画とそうでない映画」を明確に分かつ分水嶺となる指標だが、
「途中で時計が気になった」。つまり、「あと何分あるの?」と意識がスクリーンから離れた。
これが引き込まれる映画なら、残り時間など気にならない。
「俺」のコピー人間が増殖する。
最初は「彼女といるより『俺』といる方が居心地がいい」と無邪気に喜ぶが、
増えすぎて違和感が募り、しまいには「俺」同士が殺し合いを始める、そういう話。
この設定やプロット自体にまず既視感がある。どこかで見たこと・聞いたことのある話じゃないか?
「亀梨君が頑張って何人もの人格を演じ分けました。変装・メイクのバラエティーにも注目!」
というのが映画の売りなのかも知れないが、それが「出落ち」以上の成功をおさめているとも思えないし、
そもそも、それぞれの「俺」の差異を際立たせようとすれば、「コピー人間」ではなくなる。
ただの「顔がそっくりの他人」でしかなくなり、
「『俺』がたくさんの別の『俺』(=自分自身)と向き合う」というコンセプトがうやむやになってしまう。
…要するに、二重に失敗してるんだよな。
あと、「ふせえり」という人自体に対しては別に好悪の感情はないんだけど、
この人に往々にして課されがちな「小芝居」は鼻につく。
特にスパイスとしてもインタールードとしても機能していない寸劇。
全編に漂う「少しずれた」世界観は嫌いじゃないが、
殊更に「これどう?面白いでしょ?」と見せつけられるような作為には鼻白む。
作中、この春訪ねた上毛電鉄・中央前橋駅の様子が映し出されたのは「おっ」と思ったが。
あのキャバクラビル屋上の「花火」もね。
観終えた帰り、駅の階段を上っていたら、
対向の下る人たちがみな一様にスマホを覗きながら歩いているのを見て、
この光景の方がよっぽど、「みんな似たような顔」の景色より不気味なんじゃないかと思えた。
歩く時ですら片時も目が離せないそのスマホの中には、いったい何があるんだい?
今朝の新聞記事を思い出した。
キケン、歩きスマホ 都内、ホームから男児転落し負傷 無警戒、わいせつ被害も
ネットにメール、地図、ゲーム……。携帯電話が多機能になり、さらにはスマートフォン(スマホ)の普及によって、画面を見ながら歩く人が増えている。便利な半面、駅のホームから落ちたり、人にぶつかったりと危険も潜む。
東京のJR四ツ谷駅の中央線上りホームで、小学5年生の男児(10)がホームから転落したのは先月27日午後4時過ぎのこと。幸い電車との接触は免れたが、顔などを負傷した。目撃者によると、男児は携帯を見ながらホームの端を歩き、何かにつまずいたように見えたという。
1週間後の3日、同じホームに行ってみると、数人に1人が歩きながらスマホや携帯をいじっていた。男子大学生(21)は「危ないと思うこともあるけど、友人とのやりとりとか便利さを優先してしまう」。
国土交通省によると、2011年度、過ってホームから転落したのは3243人。「携帯を使用中」は18人(0・6%)で多くはないが、10年5月にはJR東中野駅で死亡事故も起きた。
バリアフリー論が専門の徳田克己・筑波大教授が先月、首都圏と大阪圏で通学に電車を使う大学生650人にアンケートすると、携帯機器を操作しながら歩く人とぶつかったり、ぶつかりそうになったりした人は「よくある」「時々ある」を合わせて6割。けがをした人も15人いた。携帯機器の97%はスマホだった。徳田教授は「画面を注視する時間が長いスマホが普及し、危険度は格段に増している」と指摘する。
操作中に思わぬ被害に遭うケースもある。強制わいせつの認知件数が3年連続で全国最多の大阪府。府警が昨年中に路上で被害に遭った859件を分析したところ、14%がスマホや携帯を使用中だった。府警犯罪対策室は「周囲への注意がおろそかになり、すきができやすい」とみる。
■「規制必要では」
「携帯・スマホの歩きながらの使用は、思わぬけがや事故につながる場合があります。控えてください」
JR東日本は今回の事故を受け、首都圏の主要駅や車内でそんなアナウンスを始めた。東京メトロも同様の放送を開始。近く啓発ポスターを作って各駅に張り出す予定という。
携帯最大手のNTTドコモも、「歩きスマホが危険という問題意識をもっている」と啓発に力を入れ始めた。放送中のラジオCMで、母親が子供たちに「外で歩きながら使うと、とっても危ないの」と諭す場面を入れた。「危険です、スマホのながら歩き」という注意を最新機種の新聞広告などに入れている。
障害のある人たちにとっては深刻な問題だ。山手線を利用する全盲の織田洋さん(59)は最近、点字ブロック上で電車を待っていると、まともにぶつかられることが増えた。「前は周囲の人が避けてくれていたのですが」
何らかの規制が必要との声もある。「歩きスマホ禁止条例」を提案するのは、コラムニストの小田嶋隆さん(56)だ。東京都千代田区が02年に施行した路上喫煙禁止条例が参考になると言う。「最初は賛否両論あったが、その後、全国に広がった。スマホも試験的に規制してみればいい」
ただ、徳田教授は「これまでは啓発が不十分だった。マナーの呼びかけが先」と規制には否定的だ。私案として「スマホマナー5カ条」を提案する。
■徳田教授が提案する「スマホマナー5カ条」
(1)使う時は道の端に寄り、立ち止まって
(2)階段では使わない
(3)電車を降りるときは見ない
(4)横断歩道では使わない
(5)見るときはイヤホンを外す
■視線どうなるか試すと… 画面に釘付け
「歩きスマホ」の危険性を実証した調査もある。愛知工科大の小塚一宏教授(交通工学)が11年、名古屋の繁華街で、スマホを使うとどれだけ視野が狭まるかを調べた。額に瞳の動きを追うカメラを付け、20メートルの横断歩道を手ぶらで渡った時と、スマホでツイッターをやりながら渡った時の視線を比較した。
手ぶらでは、前後左右、奥の建物までまんべんなく見ているのに対し、スマホ歩きでは、数メートル前を数回見ただけで、ほぼ画面に釘付け。小塚教授は「とっさの動きができない高齢者や障害者、幼児らにとっては脅威」と話す。(朝日新聞)
上映開始時刻が合う中で選んだのは、亀梨和也主演『俺俺』。
映画館に来るのは久しぶりだな。3,4年ぶりくらいか。
映画は大好きだが、映画館ではほとんど観ない。
暗いと寝てしまうからだ。これはもう覿面。たとえ爆音の銃撃戦のさなかであっても寝入ってしまう。
映画好きな人は映画館で映画を観る理由に「大画面の迫力と音響の良さ」を挙げるが、
今は家のテレビも結構大画面で画質もいいし、音響だって悪くない。
そもそも、大画面が相応しいかどうかは作品によりけりだし、僕は耳が「弱い」のか、大音量が苦手だ。
この「箱」は席数が少なく、スクリーンも相応の大きさで、
感覚的には家でテレビを観ているのとあまり変わらなかった。
で、映画だが、
<以下ネタバレあり>
タダ見でも遠慮なく言うが、いまひとつだった。
これは僕の中での「面白い映画とそうでない映画」を明確に分かつ分水嶺となる指標だが、
「途中で時計が気になった」。つまり、「あと何分あるの?」と意識がスクリーンから離れた。
これが引き込まれる映画なら、残り時間など気にならない。
「俺」のコピー人間が増殖する。
最初は「彼女といるより『俺』といる方が居心地がいい」と無邪気に喜ぶが、
増えすぎて違和感が募り、しまいには「俺」同士が殺し合いを始める、そういう話。
この設定やプロット自体にまず既視感がある。どこかで見たこと・聞いたことのある話じゃないか?
「亀梨君が頑張って何人もの人格を演じ分けました。変装・メイクのバラエティーにも注目!」
というのが映画の売りなのかも知れないが、それが「出落ち」以上の成功をおさめているとも思えないし、
そもそも、それぞれの「俺」の差異を際立たせようとすれば、「コピー人間」ではなくなる。
ただの「顔がそっくりの他人」でしかなくなり、
「『俺』がたくさんの別の『俺』(=自分自身)と向き合う」というコンセプトがうやむやになってしまう。
…要するに、二重に失敗してるんだよな。
あと、「ふせえり」という人自体に対しては別に好悪の感情はないんだけど、
この人に往々にして課されがちな「小芝居」は鼻につく。
特にスパイスとしてもインタールードとしても機能していない寸劇。
全編に漂う「少しずれた」世界観は嫌いじゃないが、
殊更に「これどう?面白いでしょ?」と見せつけられるような作為には鼻白む。
作中、この春訪ねた上毛電鉄・中央前橋駅の様子が映し出されたのは「おっ」と思ったが。
あのキャバクラビル屋上の「花火」もね。
観終えた帰り、駅の階段を上っていたら、
対向の下る人たちがみな一様にスマホを覗きながら歩いているのを見て、
この光景の方がよっぽど、「みんな似たような顔」の景色より不気味なんじゃないかと思えた。
歩く時ですら片時も目が離せないそのスマホの中には、いったい何があるんだい?
今朝の新聞記事を思い出した。
キケン、歩きスマホ 都内、ホームから男児転落し負傷 無警戒、わいせつ被害も
ネットにメール、地図、ゲーム……。携帯電話が多機能になり、さらにはスマートフォン(スマホ)の普及によって、画面を見ながら歩く人が増えている。便利な半面、駅のホームから落ちたり、人にぶつかったりと危険も潜む。
東京のJR四ツ谷駅の中央線上りホームで、小学5年生の男児(10)がホームから転落したのは先月27日午後4時過ぎのこと。幸い電車との接触は免れたが、顔などを負傷した。目撃者によると、男児は携帯を見ながらホームの端を歩き、何かにつまずいたように見えたという。
1週間後の3日、同じホームに行ってみると、数人に1人が歩きながらスマホや携帯をいじっていた。男子大学生(21)は「危ないと思うこともあるけど、友人とのやりとりとか便利さを優先してしまう」。
国土交通省によると、2011年度、過ってホームから転落したのは3243人。「携帯を使用中」は18人(0・6%)で多くはないが、10年5月にはJR東中野駅で死亡事故も起きた。
バリアフリー論が専門の徳田克己・筑波大教授が先月、首都圏と大阪圏で通学に電車を使う大学生650人にアンケートすると、携帯機器を操作しながら歩く人とぶつかったり、ぶつかりそうになったりした人は「よくある」「時々ある」を合わせて6割。けがをした人も15人いた。携帯機器の97%はスマホだった。徳田教授は「画面を注視する時間が長いスマホが普及し、危険度は格段に増している」と指摘する。
操作中に思わぬ被害に遭うケースもある。強制わいせつの認知件数が3年連続で全国最多の大阪府。府警が昨年中に路上で被害に遭った859件を分析したところ、14%がスマホや携帯を使用中だった。府警犯罪対策室は「周囲への注意がおろそかになり、すきができやすい」とみる。
■「規制必要では」
「携帯・スマホの歩きながらの使用は、思わぬけがや事故につながる場合があります。控えてください」
JR東日本は今回の事故を受け、首都圏の主要駅や車内でそんなアナウンスを始めた。東京メトロも同様の放送を開始。近く啓発ポスターを作って各駅に張り出す予定という。
携帯最大手のNTTドコモも、「歩きスマホが危険という問題意識をもっている」と啓発に力を入れ始めた。放送中のラジオCMで、母親が子供たちに「外で歩きながら使うと、とっても危ないの」と諭す場面を入れた。「危険です、スマホのながら歩き」という注意を最新機種の新聞広告などに入れている。
障害のある人たちにとっては深刻な問題だ。山手線を利用する全盲の織田洋さん(59)は最近、点字ブロック上で電車を待っていると、まともにぶつかられることが増えた。「前は周囲の人が避けてくれていたのですが」
何らかの規制が必要との声もある。「歩きスマホ禁止条例」を提案するのは、コラムニストの小田嶋隆さん(56)だ。東京都千代田区が02年に施行した路上喫煙禁止条例が参考になると言う。「最初は賛否両論あったが、その後、全国に広がった。スマホも試験的に規制してみればいい」
ただ、徳田教授は「これまでは啓発が不十分だった。マナーの呼びかけが先」と規制には否定的だ。私案として「スマホマナー5カ条」を提案する。
■徳田教授が提案する「スマホマナー5カ条」
(1)使う時は道の端に寄り、立ち止まって
(2)階段では使わない
(3)電車を降りるときは見ない
(4)横断歩道では使わない
(5)見るときはイヤホンを外す
■視線どうなるか試すと… 画面に釘付け
「歩きスマホ」の危険性を実証した調査もある。愛知工科大の小塚一宏教授(交通工学)が11年、名古屋の繁華街で、スマホを使うとどれだけ視野が狭まるかを調べた。額に瞳の動きを追うカメラを付け、20メートルの横断歩道を手ぶらで渡った時と、スマホでツイッターをやりながら渡った時の視線を比較した。
手ぶらでは、前後左右、奥の建物までまんべんなく見ているのに対し、スマホ歩きでは、数メートル前を数回見ただけで、ほぼ画面に釘付け。小塚教授は「とっさの動きができない高齢者や障害者、幼児らにとっては脅威」と話す。(朝日新聞)




