tokyo_mirage

東京在住・在勤、40代、男。
孤独に慣れ、馴れ、熟れながらも、まあまあ人生を楽しむの記。

品川駅・港南口自由通路が嫌い

2013-07-04 23:58:02 | 雑感
所用で降りることのある品川駅。
改札口を出て港南口へ向かう自由通路は、僕が好きになれないスポットの一つだ。
通路幅の広さや天井の高さは開放的で悪くないが、あの中を大量の人間が行き交うさまがなじめない。
あちこちから湧いてきた人たちがみな、この通路に合流して太い流れをなす。
「下水道本管」という言葉が頭に浮かぶ。人がモノのように画一的に押し流されている、そういう感じ。
港南口を外に出たところの無機質な巨大ビル群や、
それらをメカニカルにつなぐぺデストリアンデッキの光景も、薄ら寒さを強めさせる。
駅ナカが充実していて便利だと言われる品川駅だけど、例えば横須賀線ホームから港南口へ出ようとすれば、
いったんずっと西側に歩いて中央改札を出て、また東側へ戻るという不便な迂回を強いられる。
とにかく人の通行量が多いから、ここぞとばかりに「宣伝媒体」のモニターもずらりと柱に掛けられる。

要するに、経済原理ばかりが横行している空間なんだよな。
人がたくさんいるところ、人が大勢通り過ぎるところにこそ商機あり…ってか。

山田洋次が小津安二郎の『東京物語』をリメークした映画『東京家族』、
僕はダイジェスト告知映像しか見ていないけど、
広島から息子たちを訪ねて上京してきた老夫婦が降り立ったのは、まさしくこのコンコースだった。
老夫婦と東京との違和は、まさにこの光景の中から始まっているのだ。

巨大な排水溝に浮かぶあぶくと化して、
黒い人のうねりが絶えず流れていく。
人の動きがコントロールされる街。

巨大な構造物に天を覆われ、
影の中を人は前屈みで通り過ぎる。
人の縮尺が極度に縮められる街。

巨大な機器類が一帯の呼吸を司り、
物語を謡う人の声は吸い込まれて聞こえない。
人の記憶が刻まれることのない街。

巨大な人工物が空間を埋め尽くして、
空気の肌触りとにおいは瞬時に均される。
人が誰であるかの識別は必要とされない街。

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