憲法改正国民投票法案のブックレット用原稿を掲載します(コメントなどの指摘により改訂しています)。
小学校高学年でも大人や兄姉、先輩が少し説明すれば分かるようなものにならないかなぁと思ってつくってみました。(網羅的なことは、「逐条批判」や「憲法改正国民投票法案の問題点の解説」などに書いていますので、そちらをご参照下さい)
この草稿は、一括投票か個別投票か、というテーマの部分で、その前にメディア規制などが書かれる予定です。
ご迷惑でなさそうなところには、TBさせていただいたりしております。ご意見頂ければ嬉しいです。
第4章 あなたの決定は投票に生かすことができるか~一括投票か、個別投票か
1 ここまで読まれて国民投票法案が問題のある法案だということはよくお分かり頂けたと思います。
身近なことに例えると、こんな感じでしょうか。
ある日、家族で近くのレストランに行きました。とても高級なレストランで、めったに行けるものではありません。一番下の子どもは、まだ幼く、レストランでは他人に迷惑を掛けるし、2番目の子どもも、まだ、大人の雰囲気を壊しそうです。そこで、高校を卒業した一番上の子どもだけ連れて、祖父母・父母・長子の5人で、出かけてきました。
ところが、レストランは、子どもは入場禁止と言って、長子の入場を拒むのです。仕方なく、私達は、子どもに帰るように言いました。
※ここは、投票権が20歳以上に限定されていることについて触れています。(※部分はこのブログ用の注意書きで、実際には削除します)
次に驚いたのは、メニューを見たときです。新しいメニューばかりで、読んでも具体的イメージが今一つという感じだったのです。
そこで、メニューについて詳しそうな外国人がほかのテーブルにいたので席を立って聞こうとしたら、ウェイターが、察知したためか、「お客様どおしお話しするのは結構ですが、外国の方のアドバイスを受けてはいけません」というのです。じゃぁ、専門家に聞こうと思って、ウェイターに声を掛けたところ、教えられません、自分で決めて下さい、と言うだけで、アドバイスはしてくれませんでした。
※ここは、外国人が国民投票運動(講演なども)をすることができないこと、新聞の自由な評論に規制がかかりうることについて触れています。
しかし、何とかどうにか、自分なりにメニューを検討し、何を注文するか、決めました。前菜は、これにして、メインディッシュはこれで、デザートはあれだなって…。注文するのが、楽しみです。
が…。
2 本章のテーマはこの続きに関係あるのです。
が…。
ウェイターは、「お客様、当店では、本日、メニューは2コースのみ。どちらかをお選び下さい。アラカルトではオーダーできません」と、冷たく言い放ったのです。
えっ、自分で組み合わせが選べないって。せっかく一生懸命考えて、選んだのは何のためだったのか…。
そもそも、二つのコースから選べたって、片方にはこれまでの人生でただ一つだけ嫌いなセロリ入りのメニューが入っているから食べられないし、もう片方にはクレープの生地にそば粉が使ってあるから蕎麦アレルギーの私には手も出せない…。
実は、国民投票法案でも、単品(アラカルト)で選択できるか、それともコースでしか選択できないかっていう重要なテーマがあるのです。
3 憲法という国民の権利に重大な影響を与える法のあり方を選択する場合、当然、自分で最も良いと思う選択をしたいのは当然です。
例えば、自衛隊を将来的には廃止するべきだと考えつつも、環境問題に重大な関心を抱いている人がいたとしましょう。もし、憲法改正案が憲法9条の撤廃と環境権の新設のセットだった場合、環境問題を前進させるためには、憲法9条の撤廃もやむなし…と割り切れるでしょうか。
逆に、テロ対策のためには、憲法9条を廃止して、自衛隊を海外に派遣できるようにする必要があるけれど、名誉毀損を防ぐため表現の自由に一定の制約文言を入れたいと考えている人がいたとしましょう。もし、憲法改正案が憲法9条の戦争放棄を徹底する条項と表現の自由の改訂条項とのセットになっていた場合、反対、賛成、どちらに投票したらいいか、迷うのではないでしょうか。
4 与党の法案骨子では、「投票用紙の様式、投票の方式、投票の効力その他国民投票に関し必要な事項は、憲法改正の発議の際に別に定める法律の規定によるものとすること」とされているだけで、憲法の複数の条項について改正案が発議された場合に、条項全部について一括して投票することとなるのか、それとも、条項ごとに個別に投票することになるのかについて、明らかにされていません。
しかし、その法案骨子の解説によると、「例えば、複数項目に係る憲法改正案の場合に、全体を一括で国民投票に付すか、項目別に国民投票に付すかに応じて、投票用紙の様式等が定められたり、また、憲法改正案の内容(分量)に応じて、投票用紙への改正案の記載の有無が定められたりすることとなる」とされており、改正条項が多数になる場合には、改正案の発議とともに、一括での国民投票とする法律が決められる恐れがあります。
というのも、与党案の前身の「議連案」の解説(第五の三)には「憲法改正の内容が複数の事項にわたる場合、一部に賛成で、一部に反対という意思表示の方法を認める必要があるのではないかが問題になる。しかし、そのような場合は、国会が改正案を発議する際に、改正の対象となる各々の事項ごとに発議を行えば、各事項に係る発議に対応して投票を行うことになるので、一部賛成、一部反対の票を投じることと同じ結果が得られるのではないか。すなわち、この問題は、国会の発議の方法を工夫することによって解決できると思われる」とされており、一括投票ではなく、個別投票を選択しているように思われていたからです。個別投票案からの大幅な後退と言ってよいでしょう。
5 もし、一括投票制をとった場合、主権者である私たち国民の意思が正確に憲法改訂に反映されなくなってしまいます。
自分が賛成する条項と反対する条項の両方がある場合、賛成するべきか、反対するべきか…。結局、棄権することになるかも知れません。
私たちは、私たち国民の権利に関わることは私たち自身で決めるという国民主権を大原則としています。
この国民主権は、日常の政治については、それを担当する国会議員を選び、具体的な法律は国会議員らが決めるという方法がとられています。全ての法律を国民自身が判断することは、1億人以上もの国民がいる日本では、不可能だからです。しかし、それでは、私たち国民の意思を具体的な政策に対して、正確に反映することはできません。
これに対し、憲法改正については、国民投票という方法がとられたのは、国の最高法規である憲法を改正する際には、私たち国民の意思を十分かつ正確に反映させる必要があるからです。
だからこそ、国民投票においては、憲法改定案に対して一括して賛成または反対を投票する方法ではなく、一つひとつの条項ごとに、投票する制度が必要となるのです。どうしても複数の条文がセットで改訂しなければ条文同士矛盾することになるなどの場合-例えば、総理大臣を国民が直接選挙で選ぶという条文の新設と国会議員が総理大臣を指名するという条文の廃止は、セットで決めなければ矛盾する-には問題点ごとに、投票できるようにする必要があります。
6 このことは、例え、憲法を大幅に改訂する場合でも同じように考えなければなりません。改訂する条文が多いからといって、まとめて、投票する理由はないからです。
憲法を全面的に改定する場合には、基本的人権の尊重、国民主権、平和主義などの基本原則を変更することにもつながると思われます。そういう場合には、現在の憲法のあり方を根本的に変更することになるのですから、私たち国民の意思が正確に反映されなければならないわけです。
7 さて、もう一度、レストランの話に戻りましょう。そのレストランでは、前菜・主菜・デザートが
基本メニュー 選択メニュー
-------------------
前菜 サラダ マリネ
主菜 ステーキ 魚のソテー
デザート アイスクリーム プリン
と決まっており、家族投票で選択メニューが過半数の時にだけ変更可能というシステムだったのです。
この場合、過半数となったかどうかを判断するときに、間違ったのかわがままなのか「チーズケーキ」がいいと言った人をどう取り扱うかで、例えば、アイスクリームに1人、プリンに2人、チーズケーキが1人いた場合、チーズケーキを外せば、プリンは3分の2なので過半数となりますが、チーズケーキを外さないと4分の2なのでプリンは過半数となりません。
チーズケーキを選んだ人は、プリンを選ばなかったのですから、プリンに対しては、ノーと言ったと考えるべきであり、チーズケーキを含めて過半数かどうかを決めると考えた方がよいでしょう。
憲法改定案について、投票する際も同じことで、無効票も含めて、計算するべきでしょう。
この点、与党案は、有効投票の過半数となればよいとしています(議連案54条1項のまま)。問題ですね。
8 また、何がいいか迷って家族投票できなかった人を入れて、過半数かどうか決めるのか、外して過半数かどうか決めるのかでも、結果が変わってきます。例えば、アイスクリームに1人、プリンに2人、迷った人が2人いた場合、迷った人を外せば、プリンが過半数ですが、迷った人を外さないとプリンは過半数になりません。
この点については、迷った人がプリンについてどう考えているかが分からないため、全体の数から外すべきだという考え方もありうるでしょう。
また、この家族は、いつもは、アイスクリームを食べているのだから、あえて、プリンを選ばなかった以上、プリンには反対だとみなすべきで、全体の数に入れるべきだという考え方もあります。
これは、投票する権利を持っている人全員の過半数とならなければならないか、それとも現に投票した人の過半数となればいいか、という問題です。
この点は、説明したように、どちらの考え方も間違っていないように思われます。
ただし、現に投票した人の過半数を超えればいいとした場合、迷った人が多かった場合に、ちょっと変な感じがします。例えば、アイスクリームに1人、プリンに2人、棄権7人というようなケースです。
このような場合にも、プリンが過半数を超えたとするのは、納得できません。なぜなら、棄権が多かったのは、投票があることについての十分な案内がなかったり、改正案について事前に十分な説明がなかった可能性が大きいからです。
そこで、現に投票した人の過半数を超えればいいという制度にする場合、最低投票率を決める必要があります。
この点、与党案は、まったく考慮していません。
9 まとめ
与党案は、国民の意思が正確に反映される投票制度とは言い難い。せっかく、意思決定してもそれが反映されない制度はあまりにも、国民主権をないがしろにするものではないでしょうか。
この点は、今回の法案で最も深刻な問題点の一つです。
小学校高学年でも大人や兄姉、先輩が少し説明すれば分かるようなものにならないかなぁと思ってつくってみました。(網羅的なことは、「逐条批判」や「憲法改正国民投票法案の問題点の解説」などに書いていますので、そちらをご参照下さい)
この草稿は、一括投票か個別投票か、というテーマの部分で、その前にメディア規制などが書かれる予定です。
ご迷惑でなさそうなところには、TBさせていただいたりしております。ご意見頂ければ嬉しいです。
第4章 あなたの決定は投票に生かすことができるか~一括投票か、個別投票か
1 ここまで読まれて国民投票法案が問題のある法案だということはよくお分かり頂けたと思います。
身近なことに例えると、こんな感じでしょうか。
ある日、家族で近くのレストランに行きました。とても高級なレストランで、めったに行けるものではありません。一番下の子どもは、まだ幼く、レストランでは他人に迷惑を掛けるし、2番目の子どもも、まだ、大人の雰囲気を壊しそうです。そこで、高校を卒業した一番上の子どもだけ連れて、祖父母・父母・長子の5人で、出かけてきました。
ところが、レストランは、子どもは入場禁止と言って、長子の入場を拒むのです。仕方なく、私達は、子どもに帰るように言いました。
※ここは、投票権が20歳以上に限定されていることについて触れています。(※部分はこのブログ用の注意書きで、実際には削除します)
次に驚いたのは、メニューを見たときです。新しいメニューばかりで、読んでも具体的イメージが今一つという感じだったのです。
そこで、メニューについて詳しそうな外国人がほかのテーブルにいたので席を立って聞こうとしたら、ウェイターが、察知したためか、「お客様どおしお話しするのは結構ですが、外国の方のアドバイスを受けてはいけません」というのです。じゃぁ、専門家に聞こうと思って、ウェイターに声を掛けたところ、教えられません、自分で決めて下さい、と言うだけで、アドバイスはしてくれませんでした。
※ここは、外国人が国民投票運動(講演なども)をすることができないこと、新聞の自由な評論に規制がかかりうることについて触れています。
しかし、何とかどうにか、自分なりにメニューを検討し、何を注文するか、決めました。前菜は、これにして、メインディッシュはこれで、デザートはあれだなって…。注文するのが、楽しみです。
が…。
2 本章のテーマはこの続きに関係あるのです。
が…。
ウェイターは、「お客様、当店では、本日、メニューは2コースのみ。どちらかをお選び下さい。アラカルトではオーダーできません」と、冷たく言い放ったのです。
えっ、自分で組み合わせが選べないって。せっかく一生懸命考えて、選んだのは何のためだったのか…。
そもそも、二つのコースから選べたって、片方にはこれまでの人生でただ一つだけ嫌いなセロリ入りのメニューが入っているから食べられないし、もう片方にはクレープの生地にそば粉が使ってあるから蕎麦アレルギーの私には手も出せない…。
実は、国民投票法案でも、単品(アラカルト)で選択できるか、それともコースでしか選択できないかっていう重要なテーマがあるのです。
3 憲法という国民の権利に重大な影響を与える法のあり方を選択する場合、当然、自分で最も良いと思う選択をしたいのは当然です。
例えば、自衛隊を将来的には廃止するべきだと考えつつも、環境問題に重大な関心を抱いている人がいたとしましょう。もし、憲法改正案が憲法9条の撤廃と環境権の新設のセットだった場合、環境問題を前進させるためには、憲法9条の撤廃もやむなし…と割り切れるでしょうか。
逆に、テロ対策のためには、憲法9条を廃止して、自衛隊を海外に派遣できるようにする必要があるけれど、名誉毀損を防ぐため表現の自由に一定の制約文言を入れたいと考えている人がいたとしましょう。もし、憲法改正案が憲法9条の戦争放棄を徹底する条項と表現の自由の改訂条項とのセットになっていた場合、反対、賛成、どちらに投票したらいいか、迷うのではないでしょうか。
4 与党の法案骨子では、「投票用紙の様式、投票の方式、投票の効力その他国民投票に関し必要な事項は、憲法改正の発議の際に別に定める法律の規定によるものとすること」とされているだけで、憲法の複数の条項について改正案が発議された場合に、条項全部について一括して投票することとなるのか、それとも、条項ごとに個別に投票することになるのかについて、明らかにされていません。
しかし、その法案骨子の解説によると、「例えば、複数項目に係る憲法改正案の場合に、全体を一括で国民投票に付すか、項目別に国民投票に付すかに応じて、投票用紙の様式等が定められたり、また、憲法改正案の内容(分量)に応じて、投票用紙への改正案の記載の有無が定められたりすることとなる」とされており、改正条項が多数になる場合には、改正案の発議とともに、一括での国民投票とする法律が決められる恐れがあります。
というのも、与党案の前身の「議連案」の解説(第五の三)には「憲法改正の内容が複数の事項にわたる場合、一部に賛成で、一部に反対という意思表示の方法を認める必要があるのではないかが問題になる。しかし、そのような場合は、国会が改正案を発議する際に、改正の対象となる各々の事項ごとに発議を行えば、各事項に係る発議に対応して投票を行うことになるので、一部賛成、一部反対の票を投じることと同じ結果が得られるのではないか。すなわち、この問題は、国会の発議の方法を工夫することによって解決できると思われる」とされており、一括投票ではなく、個別投票を選択しているように思われていたからです。個別投票案からの大幅な後退と言ってよいでしょう。
5 もし、一括投票制をとった場合、主権者である私たち国民の意思が正確に憲法改訂に反映されなくなってしまいます。
自分が賛成する条項と反対する条項の両方がある場合、賛成するべきか、反対するべきか…。結局、棄権することになるかも知れません。
私たちは、私たち国民の権利に関わることは私たち自身で決めるという国民主権を大原則としています。
この国民主権は、日常の政治については、それを担当する国会議員を選び、具体的な法律は国会議員らが決めるという方法がとられています。全ての法律を国民自身が判断することは、1億人以上もの国民がいる日本では、不可能だからです。しかし、それでは、私たち国民の意思を具体的な政策に対して、正確に反映することはできません。
これに対し、憲法改正については、国民投票という方法がとられたのは、国の最高法規である憲法を改正する際には、私たち国民の意思を十分かつ正確に反映させる必要があるからです。
だからこそ、国民投票においては、憲法改定案に対して一括して賛成または反対を投票する方法ではなく、一つひとつの条項ごとに、投票する制度が必要となるのです。どうしても複数の条文がセットで改訂しなければ条文同士矛盾することになるなどの場合-例えば、総理大臣を国民が直接選挙で選ぶという条文の新設と国会議員が総理大臣を指名するという条文の廃止は、セットで決めなければ矛盾する-には問題点ごとに、投票できるようにする必要があります。
6 このことは、例え、憲法を大幅に改訂する場合でも同じように考えなければなりません。改訂する条文が多いからといって、まとめて、投票する理由はないからです。
憲法を全面的に改定する場合には、基本的人権の尊重、国民主権、平和主義などの基本原則を変更することにもつながると思われます。そういう場合には、現在の憲法のあり方を根本的に変更することになるのですから、私たち国民の意思が正確に反映されなければならないわけです。
7 さて、もう一度、レストランの話に戻りましょう。そのレストランでは、前菜・主菜・デザートが
基本メニュー 選択メニュー
-------------------
前菜 サラダ マリネ
主菜 ステーキ 魚のソテー
デザート アイスクリーム プリン
と決まっており、家族投票で選択メニューが過半数の時にだけ変更可能というシステムだったのです。
この場合、過半数となったかどうかを判断するときに、間違ったのかわがままなのか「チーズケーキ」がいいと言った人をどう取り扱うかで、例えば、アイスクリームに1人、プリンに2人、チーズケーキが1人いた場合、チーズケーキを外せば、プリンは3分の2なので過半数となりますが、チーズケーキを外さないと4分の2なのでプリンは過半数となりません。
チーズケーキを選んだ人は、プリンを選ばなかったのですから、プリンに対しては、ノーと言ったと考えるべきであり、チーズケーキを含めて過半数かどうかを決めると考えた方がよいでしょう。
憲法改定案について、投票する際も同じことで、無効票も含めて、計算するべきでしょう。
この点、与党案は、有効投票の過半数となればよいとしています(議連案54条1項のまま)。問題ですね。
8 また、何がいいか迷って家族投票できなかった人を入れて、過半数かどうか決めるのか、外して過半数かどうか決めるのかでも、結果が変わってきます。例えば、アイスクリームに1人、プリンに2人、迷った人が2人いた場合、迷った人を外せば、プリンが過半数ですが、迷った人を外さないとプリンは過半数になりません。
この点については、迷った人がプリンについてどう考えているかが分からないため、全体の数から外すべきだという考え方もありうるでしょう。
また、この家族は、いつもは、アイスクリームを食べているのだから、あえて、プリンを選ばなかった以上、プリンには反対だとみなすべきで、全体の数に入れるべきだという考え方もあります。
これは、投票する権利を持っている人全員の過半数とならなければならないか、それとも現に投票した人の過半数となればいいか、という問題です。
この点は、説明したように、どちらの考え方も間違っていないように思われます。
ただし、現に投票した人の過半数を超えればいいとした場合、迷った人が多かった場合に、ちょっと変な感じがします。例えば、アイスクリームに1人、プリンに2人、棄権7人というようなケースです。
このような場合にも、プリンが過半数を超えたとするのは、納得できません。なぜなら、棄権が多かったのは、投票があることについての十分な案内がなかったり、改正案について事前に十分な説明がなかった可能性が大きいからです。
そこで、現に投票した人の過半数を超えればいいという制度にする場合、最低投票率を決める必要があります。
この点、与党案は、まったく考慮していません。
9 まとめ
与党案は、国民の意思が正確に反映される投票制度とは言い難い。せっかく、意思決定してもそれが反映されない制度はあまりにも、国民主権をないがしろにするものではないでしょうか。
この点は、今回の法案で最も深刻な問題点の一つです。