情報流通促進計画 by ヤメ記者弁護士(ヤメ蚊)日隅一雄

知らなきゃ判断できないじゃないか! ということで、情報流通を促進するために何ができるか考えていきましょう

映画「靖国」公開2日目も午後1時にはキャパ850席完売~観賞される方は、お早めに

2008-05-04 17:51:25 | メディア(知るための手段のあり方)
 映画「靖国」の一般公開は2日目を迎えたが、特に混乱もなく、上映が続いている。午後1時には、当日分の850席が完売したという。明日以降、観賞される方は、朝早めに並ぶか、朝チケットを買って上映時間の昼過ぎまで買い物などをするか、どちらかの方法をとった方がよさそうだ。混乱がないという点では、右翼系政治団体も自ら表現者として、「上映すること自体に反対はしない」という方針を打ち出しているようであり、その点は評価すべきだと思う。

 実際に、この映画を見れば、「反靖国神社」ではなく、「反戦」でしかないことは明白だ。この映画は、戦死者に対する慰霊を軽んじてはいない。そういう意味で、靖国神社と対立はしていない。しかし、靖国神社が果たした「戦意高揚機能」に対しては、これを問題視するメッセージが伝わってくる。この点で、現在の靖国神社がいまだに自らが果たした「戦意高揚機能」を反省することなく、同じ役割を果たそうとしていると「すれば」、そのことに限定するならば、「反靖国神社」的な部分があるのは否めないだろう。

 しかし、もし、そういう意味でこの映画が「反靖国神社」映画だということになるのであれば、それは「戦意高揚機能」を維持し続けようとする「靖国神社」のあり方にこそ問題があるのではないだろうか。

 対米戦争という絶対に勝てない戦でかけがえのない命を失った莫大な数の方々の死を「無駄死に」にしないためには、二度と戦争を起こさないための世界戦略をうちたて、これを全世界にアピールし、実践していくほかない。その実践活動において、靖国神社はすばらしい役割を果たすことができる立場にあると信じている。

 旧日本軍の一員として中国などで残虐な行為をした方は、いまでも、胸の内で辛い思いをしているはずだ。その思いを想像すると胸が張り裂けそうになってくる。被害者の辛さに共感するのも当然だが、加害者の立場に立たされた辛さを受け止めることも必要だ。だれが好きこのんで非人間的な行為をしたいと思うだろうか…。自分が旧軍の兵士だと想像すると、①あの戦争に大義を求めることで自らを正当化するか、あるいは、②このような辛い思いをさせた当時の政府や軍指導者に対する批判をし反戦に寄与することで自らの悲惨な体験を生かして辛さを昇華するか、しかないように思う。そして、①の方法では、真の意味で癒されることはない、とも思う。

 そういう辛い体験をした方々の思いを真に受け止めることができるのは、もしかしたら、靖国神社しかないのかもしれない。

 靖国神社が自らが果たした「戦意高揚機能」を反省し、その戦意高揚機能のせいで残虐な行為を行った方々の辛い気持ちを受け入れ、「大変な思いをさせてしまいました。辛い思いをさせたのはあなただけではない。あなた方のような思いを二度とさせませんから…。ともに反戦の道を切り開いていきましょう」と言ってこそ、いまも人には言えないことをさせられた多くの元兵士が、その行為について思うところを公にすることができ、真に癒されるのではないだろうか。

 そして、それらの方々の思いと靖国神社の反省を世界中に伝えること、これこそが各国の政府に戦争を起こさせないようそれぞれの市民が働きかけるための大きな力になるはずだ。

 このような役割を靖国神社が果たすようになれば、おそらく、首相参拝問題などは消し飛んでしまうはずだ。



 …映画「靖国」をご覧になった方はぜひ、ご感想をお聞かせください。





★「憎しみはダークサイドへの道、苦しみと痛みへの道なのじゃ」(マスター・ヨーダ)
★「政策を決めるのはその国の指導者です。そして,国民は,つねにその指導者のいいなりになるように仕向けられます。方法は簡単です。一般的な国民に向かっては,われわれは攻撃されかかっているのだと伝え,戦意を煽ります。平和主義者に対しては,愛国心が欠けていると非難すればいいのです。このやりかたはどんな国でも有効です」(ヒトラーの側近ヘルマン・ゲーリング。ナチスドイツを裁いたニュルンベルグ裁判にて)
★「News for the People in Japanを広めることこそ日本の民主化実現への有効な手段だ(笑)」(ヤメ蚊)
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速記録は見られないけれど、大丈夫?…裁判員が参照できる証言はDVDなどのみ

2008-05-04 01:44:14 | 適正手続(裁判員・可視化など)
 一つ前の記事「裁判員は証言をどのような記録にして確認するべきでしょうか…裁判記録に関する弁護士アンケート発表」(※1)へのコメントありがとうございました。多くの方が指摘されるとおり、①DVDなど音声や映像をそのまま記録したものと②速記録と両方があった方がよいですよね。

 ①は、表情など含め発言内容や状況を正確に振り返るために必要だし、②は、いちいち、全員の議論をとめて毎回DVDなどを見返すよう求めることはプレッシャーなので、簡単かつ正確に発言内容を振り返ることができる資料が手元にあった方がよいですよね。

 たとえば、ある殺人事件で正当防衛の成否が問題になったとする。複数の目撃者(Aさん、Bさん、Cさん)が死亡した人の攻撃状況などについて異なる証言をした場合、評議がAさんの話を中心としてなされているときに、●裁判員はBさんの証言内容を確認したいと思い、×裁判員はCさんの証言内容を確認したいと思ったとする。

 このとき手元に速記録があれば、●裁判員は、Bさんの証言記録を見ながら、Aさんの証言に実は矛盾している部分があることを発見するかもしれない。×裁判員はCさんの証言を確認し、Aさんの証言を支える部分があることを発見するかもしれない。

 そうすれば、●裁判員や×裁判員は、自らの見解を発表することができ、全員でBさんやCさんの発言を速記録で確認し、さらに必要があれば、DVDなどで確認できる。

 では、裁判所が経費節減のために速記録の作成を行わなかったら、どうなるでしょうか…。

 Aさんの証言に関する議論がされている際、●裁判員は「Bさんの発言に確か気になるところがあったな…。あの発言はどのあたりだったかな…。」と疑問に思う。しかし、他方で、「でも、どこで発言したかはっきりしないし、正確な発言内容も覚えていないから、ちょっと、みんなでDVDを見ようという発言をする勇気はないな。間違っていたら、もう発言できなくなりそうな気もするし…」とBさんの証言を確認することをあきらめてしまうかもしれない。

 Cさんについても同じことがいえる。

 一人ひとりにDVDのコピーと再生機が手渡されたとしても、全体での評議が進む中、DVDを再生して発言箇所と発言内容を確認するのは容易ではない。みんながこれをやり始めたら収拾がつかなくなる。

 この点、速記録があれば、議論を聞きながらぱらぱらめくって証言を探すこともできる。

 そう、ここまでの流れからお分かりのように、裁判所は裁判員制度のもとで、証言記録は録音テープ、ビデオもしくはDVDで提供することしか考えておらず、速記録は提供しない予定らしい(「速記官制度を守る会ニュース」№27)。

 速記録がないと裁判員はいちいちDVDなどを確認するか、もしくは、自分のメモのみに頼って議論しなければならない。


 弁護団にとっても深刻だ。連日開廷ということは、午後5時までの公判を終え、それから事務所でその日のFAXや電話を処理してから、その日の公判での内容を確認し、次の日の準備をすることになるが、弁護団が各自の作業を終え、集合するのは、午後7時くらいにはなるだろう。

 その時間から、その日に行われた6時間くらいの尋問を速記録もなしに検討して翌日の公判に備えることができるだろうか…。それぞれがメモをしているとはいえ、考えながらメモするわけだから必ずしも全員のメモ内容が一致しない。したがって、どうしても、正確な証言内容を確認する必要があるが、いちいちDVDで該当箇所を探しながら議論をすすめるとあっという間に朝になってしまうだろう。せめて、速記録くらいはないと…。

 現在、速記録は速記官の工夫と努力で、発言とほぼ同時に文字化できるようになっている。したがって、速記録は証言後速やかに提供することが物理的には可能な状況だ。しかし、裁判所は、速記録の提供をすることは考えていないらしいのだ。

 この事実については、広く知られていない。

 下の円グラフは、「速記官制度を守る会」が、2007年12月、無作為で弁護士3000人にアンケートを送り、269人から返送された回答をまとめたものだ。一番上を見てほしい。






弁護士ですら、DVDなどのみが提供される予定であることを認識している者は、わずかに22.8%(3の13.1%+4の9.7%)しかいない。

 それに対し、音声認識システムで文字化した記録(10.6%)や速記録(21.0%)などの文字情報が提供されると考えている人は、合計31.6%もおり、誤解している者が多いことが分かる。


 他方、「連日開廷がされた際に、どのような裁判記録が必要か」という質問に対する回答が真ん中のグラフだ。

 速記録が52.5%、電子データ(ただちに文字化できるもの)が30.4%にも上る。DVDや録音テープを選択した人は圧倒的に少ない。


 さらに、「裁判員制度での審理・評議のためにはどのような記録が望ましいか」という質問に対する回答が一番下の円グラフだ。

 文字情報つきの影像が56.4%、速記録が40.9%で合計95.4%にも上るのに対し、DVDなどのみを選択した人は1.6%しかいない。

 以上のアンケート結果から、文字情報の必要性は明らかだ。

 自由回答欄にも「速記録がないと評議の際に、証言・供述を確認するのに非常に手間取ることになる」、「個々の関係者が自分で確認したい部分を確認するためには、速記録が圧倒的に便利。関係者は大量の記録を全部読むのではなく、見る必要とする部分を読み直すのであり、テープでは絶対不可能」、「紙の記録が迅速に入手できるということは裁判員裁判の弁護活動では絶対必要。短期決戦での弁護士は何を頼れというのか」という悲鳴のような声が寄せられている…。

 そもそも、速記官を将来的に廃止することは、裁判員制度の導入が決定される前に決まったことで、公判が2週間から3週間ごとに行われることを前提に音声データを外注して文字化することで対応する予定だったという。そのうち、音声を文字化するソフトが飛躍的に進化することも裁判所の念頭にあったらしい。

 ところが、その後に裁判員制度の導入が決まったために、混乱が生じたというのが実態らしい。

 連日開廷という新たなシステムが導入される以上、裁判官制度の将来についても再度見直す必要があるのではないだろうか。

 裁判員となる市民のためにも、再考してほしいところだ。 


※1:http://blog.goo.ne.jp/tokyodo-2005/e/43d7ec6d5eb1ebbf86185523bfbe6b5f









★「憎しみはダークサイドへの道、苦しみと痛みへの道なのじゃ」(マスター・ヨーダ)
★「政策を決めるのはその国の指導者です。そして,国民は,つねにその指導者のいいなりになるように仕向けられます。方法は簡単です。一般的な国民に向かっては,われわれは攻撃されかかっているのだと伝え,戦意を煽ります。平和主義者に対しては,愛国心が欠けていると非難すればいいのです。このやりかたはどんな国でも有効です」(ヒトラーの側近ヘルマン・ゲーリング。ナチスドイツを裁いたニュルンベルグ裁判にて)
★「News for the People in Japanを広めることこそ日本の民主化実現への有効な手段だ(笑)」(ヤメ蚊)
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