さて、今回の登場人物は、鯨の調査捕鯨を続ける「政府」、政府の委託を受けて調査捕鯨を行う「財団法人日本鯨類研究所」、さらに同研究所と契約して捕鯨船団の傭船や乗員管理などの実務を行っている「共同船舶株式会社」、同社の従業員で「鯨肉を塩漬けにしたうえ自宅などに配達した乗組員」、この乗組員の配達した荷物を確保し乗組員の行為を明らかにした「グリーンピースメンバー」、そのメンバーの告発を受けた「検察官」ということになる。
調査捕鯨のルールは、政府が委託した「財団法人日本鯨類研究所」に年間約5億円の補助金(税金)を支払う。「財団法人日本鯨類研究所」は実務を担当する「共同船舶株式会社」に調査捕鯨で捕獲した鯨の肉を販売させ、その代金を受取り、翌年の調査費用にあてるというものだ。つまり、調査捕鯨事業は年間5億円の赤字が埋まれ、それを税金で補填しているわけだ。もちろん、鯨の肉が売れた分だけ、税金の負担は減ることになる。
そして、調査補捕鯨の国際ルールのうち鯨肉販売代金については次のようなルールがある(国際捕鯨取締条約8条)。
1 この条約の規定にかかわらず、締約政府は、同政府が適当と認める数の制限及び他の条件に従って自国民のいずれかが科学的研究のために鯨を捕獲し、殺し、及び処理することを認可する特別許可書をこれに与えることができる。また、この条の規定による鯨の捕獲、殺害及び処理は、この条約の適用から除外する。各締約政府は、その与えたすべての前記の認可を直ちに委員会に報告しなければならない。各締約政府は、その与えた前記の特別許可書をいつでも取り消すことができる。
2 前記の特別許可書に基いて捕獲した鯨は、実行可能な限り加工し、また、取得金は、許可を与えた政府の発給した指令書に従って処分しなければならない。
…鯨肉の販売代金は政府の発給した指令書に従って処分しなければならないことになっている。
この点、農林水産省の事務次官は、
「この調査捕鯨で、捕獲調査でまず得られた副産物でありますこの鯨肉につきましては、国際捕鯨取締条約の規定がございまして、これに基づいて政府の指示に従って公平公正に販売され、得られた収益は次年度以降の調査活動に用いられているというのが原則でございます。
従って、まず副産物の所有権自体は、まさに鯨肉でございますが、これは、その調査捕鯨の主体であります日本鯨類研究所にまず帰属するということで、その肉は共同船舶が販売委託を受けて販売を行っているわけでございますが、一部、共同船舶自身も一般の業者と同様に買い付けを行っているわけでございます。これは、例えば売れ残った場合とかそういうものを、もちろんそれだけではございませんが、共同船舶が買い付けを行って」
と説明している。(http://www.maff.go.jp/j/press-conf/v_min/080515.html)
つまり、いったんは、鯨肉全てを調査捕鯨の対象としてカウントしたうえで、その一部を共同船舶株式会社が購入することはあるだろうということだ。
今回の乗組員が乗船していた日新丸からは疑惑の宅配便が少なくとも47箱あった。この箱に入っていた鯨肉は正規に保管される冷凍保存ではなく、塩漬けによる保存…。一体、どの時点でカウントしたのだろうか…。しかも、この箱のラベルは堂々と「肉類」としてもよいはずなのに、「ダンボール」…。
告発者は次のように語る。
◆ ◆ ◆
GP: それ以外に船員が何か悪いことをしているということはご存知でしょうか?
告発者: これはもう、多分、伝統的なものだと思いますけど、乗組員のほとんどがクジラ肉、ベーコンの畝須なんか、全部勝手に自分で塩漬けして持ち帰っています。もうこれは相当な量、みんな持っていっています。全員ではないですけども。若い人はそんなに興味ないけども。ある程度歳いった人は皆、持ち帰ってます。
GP: 具体的には、歳いった人っていうのはどういう職種につかれている方なのでしょうか?
告発者: ほどんど製造、製造の人ですね。製造の人がもうほとんど。
GP: 具体的にどれくらいの人数の方って思われますでしょうか?
告発者: 日新丸でしたら150人乗ってたら、ほぼ120、130人の規模で皆さんが200キロ300キロのクジラ肉やらベーコンやらを持ち帰ってますね。生産の頭数にはない肉ですよね。
GP: つまり、公式に発表されるクジラのトン数とはまた別のものですね?
告発者: 以外、それ以外ですね。これはずっともう昔からやってるみたいです。
(中略)
GP: 具体的に、隠して持って帰ってくるというのは、理由なども何もなくてただ隠れて持ち込むっていう形ですか?
告発者: 家でただ食べるだけだったらそんな量いらないですよね。だから、あの、それぞれが、10年、20年乗ってる人はもう地元とか、その辺の市場に売りさばいてるって感じですね。
GP: それは具体的にはどういう風な形で、証拠というんですかね、売りさばいてるって聞いたことがあるとかって、そういうことはありますか?
告発者: それは、乗組員の人に聞きました。ベーコンだけで家を建てるぐらい売ったよっていう人もいましたし。(http://web2.rederio.org/gp/doss.pdf)
◆ ◆ ◆
そして、宅配便の1箱40万円から120万円の価値があるという。合計で少なくとも1880万円から5640万円の税金相当額の鯨肉が乗組員の自宅などに送られていた。
素直に考えれば、それだけ税金の負担が増えたことになるのではないだろうか…。
グリーンピースは、宅配業者が配達していた過程で疑惑の宅配便のうちの一個を確保し、この事実を社会に明らかにした。
以上が今回の登場人物とルール、そして実際に行われた行為だ。
あなたは、政府の役人、財団法人日本鯨類研究所の理事職員、共同船舶の経営者、共同船舶の乗組員で鯨肉を塩漬けにして配達した人、グリーンピースのメンバー、検察官のうち、だれになりたいですか?
あなたは、自分の好きな人が、政府の役人、財団法人日本鯨類研究所の理事職員、共同船舶の経営者、共同船舶の乗組員で鯨肉を塩漬けにして配達した人、グリーンピースのメンバー、検察官のうちだれであってほしいですか?
あなたは、自分の子供に、政府の役人、財団法人日本鯨類研究所の理事職員、共同船舶の経営者、共同船舶の乗組員で鯨肉を塩漬けにして配達した人、グリーンピースのメンバー、検察官のうちだれになってほしいですか?
あなたが映画監督だとしたら、だれを主人公にした映画を撮影したいですか?
写真はhttp://web2.rederio.org/gp/doss.pdfより
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★「憎しみはダークサイドへの道、苦しみと痛みへの道なのじゃ」(マスター・ヨーダ)
★「政策を決めるのはその国の指導者です。そして,国民は,つねにその指導者のいいなりになるように仕向けられます。方法は簡単です。一般的な国民に向かっては,われわれは攻撃されかかっているのだと伝え,戦意を煽ります。平和主義者に対しては,愛国心が欠けていると非難すればいいのです。このやりかたはどんな国でも有効です」(ヒトラーの側近ヘルマン・ゲーリング。ナチスドイツを裁いたニュルンベルグ裁判にて)
★「News for the People in Japanを広めることこそ日本の民主化実現への有効な手段だ(笑)」(ヤメ蚊)
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調査捕鯨のルールは、政府が委託した「財団法人日本鯨類研究所」に年間約5億円の補助金(税金)を支払う。「財団法人日本鯨類研究所」は実務を担当する「共同船舶株式会社」に調査捕鯨で捕獲した鯨の肉を販売させ、その代金を受取り、翌年の調査費用にあてるというものだ。つまり、調査捕鯨事業は年間5億円の赤字が埋まれ、それを税金で補填しているわけだ。もちろん、鯨の肉が売れた分だけ、税金の負担は減ることになる。
そして、調査補捕鯨の国際ルールのうち鯨肉販売代金については次のようなルールがある(国際捕鯨取締条約8条)。
1 この条約の規定にかかわらず、締約政府は、同政府が適当と認める数の制限及び他の条件に従って自国民のいずれかが科学的研究のために鯨を捕獲し、殺し、及び処理することを認可する特別許可書をこれに与えることができる。また、この条の規定による鯨の捕獲、殺害及び処理は、この条約の適用から除外する。各締約政府は、その与えたすべての前記の認可を直ちに委員会に報告しなければならない。各締約政府は、その与えた前記の特別許可書をいつでも取り消すことができる。
2 前記の特別許可書に基いて捕獲した鯨は、実行可能な限り加工し、また、取得金は、許可を与えた政府の発給した指令書に従って処分しなければならない。
…鯨肉の販売代金は政府の発給した指令書に従って処分しなければならないことになっている。
この点、農林水産省の事務次官は、
「この調査捕鯨で、捕獲調査でまず得られた副産物でありますこの鯨肉につきましては、国際捕鯨取締条約の規定がございまして、これに基づいて政府の指示に従って公平公正に販売され、得られた収益は次年度以降の調査活動に用いられているというのが原則でございます。
従って、まず副産物の所有権自体は、まさに鯨肉でございますが、これは、その調査捕鯨の主体であります日本鯨類研究所にまず帰属するということで、その肉は共同船舶が販売委託を受けて販売を行っているわけでございますが、一部、共同船舶自身も一般の業者と同様に買い付けを行っているわけでございます。これは、例えば売れ残った場合とかそういうものを、もちろんそれだけではございませんが、共同船舶が買い付けを行って」
と説明している。(http://www.maff.go.jp/j/press-conf/v_min/080515.html)
つまり、いったんは、鯨肉全てを調査捕鯨の対象としてカウントしたうえで、その一部を共同船舶株式会社が購入することはあるだろうということだ。
今回の乗組員が乗船していた日新丸からは疑惑の宅配便が少なくとも47箱あった。この箱に入っていた鯨肉は正規に保管される冷凍保存ではなく、塩漬けによる保存…。一体、どの時点でカウントしたのだろうか…。しかも、この箱のラベルは堂々と「肉類」としてもよいはずなのに、「ダンボール」…。
告発者は次のように語る。
◆ ◆ ◆
GP: それ以外に船員が何か悪いことをしているということはご存知でしょうか?
告発者: これはもう、多分、伝統的なものだと思いますけど、乗組員のほとんどがクジラ肉、ベーコンの畝須なんか、全部勝手に自分で塩漬けして持ち帰っています。もうこれは相当な量、みんな持っていっています。全員ではないですけども。若い人はそんなに興味ないけども。ある程度歳いった人は皆、持ち帰ってます。
GP: 具体的には、歳いった人っていうのはどういう職種につかれている方なのでしょうか?
告発者: ほどんど製造、製造の人ですね。製造の人がもうほとんど。
GP: 具体的にどれくらいの人数の方って思われますでしょうか?
告発者: 日新丸でしたら150人乗ってたら、ほぼ120、130人の規模で皆さんが200キロ300キロのクジラ肉やらベーコンやらを持ち帰ってますね。生産の頭数にはない肉ですよね。
GP: つまり、公式に発表されるクジラのトン数とはまた別のものですね?
告発者: 以外、それ以外ですね。これはずっともう昔からやってるみたいです。
(中略)
GP: 具体的に、隠して持って帰ってくるというのは、理由なども何もなくてただ隠れて持ち込むっていう形ですか?
告発者: 家でただ食べるだけだったらそんな量いらないですよね。だから、あの、それぞれが、10年、20年乗ってる人はもう地元とか、その辺の市場に売りさばいてるって感じですね。
GP: それは具体的にはどういう風な形で、証拠というんですかね、売りさばいてるって聞いたことがあるとかって、そういうことはありますか?
告発者: それは、乗組員の人に聞きました。ベーコンだけで家を建てるぐらい売ったよっていう人もいましたし。(http://web2.rederio.org/gp/doss.pdf)
◆ ◆ ◆
そして、宅配便の1箱40万円から120万円の価値があるという。合計で少なくとも1880万円から5640万円の税金相当額の鯨肉が乗組員の自宅などに送られていた。
素直に考えれば、それだけ税金の負担が増えたことになるのではないだろうか…。
グリーンピースは、宅配業者が配達していた過程で疑惑の宅配便のうちの一個を確保し、この事実を社会に明らかにした。
以上が今回の登場人物とルール、そして実際に行われた行為だ。
あなたは、政府の役人、財団法人日本鯨類研究所の理事職員、共同船舶の経営者、共同船舶の乗組員で鯨肉を塩漬けにして配達した人、グリーンピースのメンバー、検察官のうち、だれになりたいですか?
あなたは、自分の好きな人が、政府の役人、財団法人日本鯨類研究所の理事職員、共同船舶の経営者、共同船舶の乗組員で鯨肉を塩漬けにして配達した人、グリーンピースのメンバー、検察官のうちだれであってほしいですか?
あなたは、自分の子供に、政府の役人、財団法人日本鯨類研究所の理事職員、共同船舶の経営者、共同船舶の乗組員で鯨肉を塩漬けにして配達した人、グリーンピースのメンバー、検察官のうちだれになってほしいですか?
あなたが映画監督だとしたら、だれを主人公にした映画を撮影したいですか?
写真はhttp://web2.rederio.org/gp/doss.pdfより
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★「憎しみはダークサイドへの道、苦しみと痛みへの道なのじゃ」(マスター・ヨーダ)
★「政策を決めるのはその国の指導者です。そして,国民は,つねにその指導者のいいなりになるように仕向けられます。方法は簡単です。一般的な国民に向かっては,われわれは攻撃されかかっているのだと伝え,戦意を煽ります。平和主義者に対しては,愛国心が欠けていると非難すればいいのです。このやりかたはどんな国でも有効です」(ヒトラーの側近ヘルマン・ゲーリング。ナチスドイツを裁いたニュルンベルグ裁判にて)
★「News for the People in Japanを広めることこそ日本の民主化実現への有効な手段だ(笑)」(ヤメ蚊)
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