情報流通促進計画 by ヤメ記者弁護士(ヤメ蚊)日隅一雄

知らなきゃ判断できないじゃないか! ということで、情報流通を促進するために何ができるか考えていきましょう

もし世界が鯨関係業界だったら…な~んてね:グリーンピース鯨肉横領告発の正義

2008-05-16 20:30:22 | そのほか情報流通(ほかにこんな問題が)
 さて、今回の登場人物は、鯨の調査捕鯨を続ける「政府」、政府の委託を受けて調査捕鯨を行う「財団法人日本鯨類研究所」、さらに同研究所と契約して捕鯨船団の傭船や乗員管理などの実務を行っている「共同船舶株式会社」、同社の従業員で「鯨肉を塩漬けにしたうえ自宅などに配達した乗組員」、この乗組員の配達した荷物を確保し乗組員の行為を明らかにした「グリーンピースメンバー」、そのメンバーの告発を受けた「検察官」ということになる。

 調査捕鯨のルールは、政府が委託した「財団法人日本鯨類研究所」に年間約5億円の補助金(税金)を支払う。「財団法人日本鯨類研究所」は実務を担当する「共同船舶株式会社」に調査捕鯨で捕獲した鯨の肉を販売させ、その代金を受取り、翌年の調査費用にあてるというものだ。つまり、調査捕鯨事業は年間5億円の赤字が埋まれ、それを税金で補填しているわけだ。もちろん、鯨の肉が売れた分だけ、税金の負担は減ることになる。

 そして、調査補捕鯨の国際ルールのうち鯨肉販売代金については次のようなルールがある(国際捕鯨取締条約8条)。

1 この条約の規定にかかわらず、締約政府は、同政府が適当と認める数の制限及び他の条件に従って自国民のいずれかが科学的研究のために鯨を捕獲し、殺し、及び処理することを認可する特別許可書をこれに与えることができる。また、この条の規定による鯨の捕獲、殺害及び処理は、この条約の適用から除外する。各締約政府は、その与えたすべての前記の認可を直ちに委員会に報告しなければならない。各締約政府は、その与えた前記の特別許可書をいつでも取り消すことができる。
2 前記の特別許可書に基いて捕獲した鯨は、実行可能な限り加工し、また、取得金は、許可を与えた政府の発給した指令書に従って処分しなければならない。

 …鯨肉の販売代金は政府の発給した指令書に従って処分しなければならないことになっている。

 この点、農林水産省の事務次官は、

「この調査捕鯨で、捕獲調査でまず得られた副産物でありますこの鯨肉につきましては、国際捕鯨取締条約の規定がございまして、これに基づいて政府の指示に従って公平公正に販売され、得られた収益は次年度以降の調査活動に用いられているというのが原則でございます。

 従って、まず副産物の所有権自体は、まさに鯨肉でございますが、これは、その調査捕鯨の主体であります日本鯨類研究所にまず帰属するということで、その肉は共同船舶が販売委託を受けて販売を行っているわけでございますが、一部、共同船舶自身も一般の業者と同様に買い付けを行っているわけでございます。これは、例えば売れ残った場合とかそういうものを、もちろんそれだけではございませんが、共同船舶が買い付けを行って」

と説明している。(http://www.maff.go.jp/j/press-conf/v_min/080515.html

 つまり、いったんは、鯨肉全てを調査捕鯨の対象としてカウントしたうえで、その一部を共同船舶株式会社が購入することはあるだろうということだ。

 今回の乗組員が乗船していた日新丸からは疑惑の宅配便が少なくとも47箱あった。この箱に入っていた鯨肉は正規に保管される冷凍保存ではなく、塩漬けによる保存…。一体、どの時点でカウントしたのだろうか…。しかも、この箱のラベルは堂々と「肉類」としてもよいはずなのに、「ダンボール」…。

告発者は次のように語る。

◆   ◆   ◆
GP: それ以外に船員が何か悪いことをしているということはご存知でしょうか?

告発者: これはもう、多分、伝統的なものだと思いますけど、乗組員のほとんどがクジラ肉、ベーコンの畝須なんか、全部勝手に自分で塩漬けして持ち帰っています。もうこれは相当な量、みんな持っていっています。全員ではないですけども。若い人はそんなに興味ないけども。ある程度歳いった人は皆、持ち帰ってます。
  
GP: 具体的には、歳いった人っていうのはどういう職種につかれている方なのでしょうか?

告発者: ほどんど製造、製造の人ですね。製造の人がもうほとんど。

GP: 具体的にどれくらいの人数の方って思われますでしょうか?

告発者: 日新丸でしたら150人乗ってたら、ほぼ120、130人の規模で皆さんが200キロ300キロのクジラ肉やらベーコンやらを持ち帰ってますね。生産の頭数にはない肉ですよね。

GP: つまり、公式に発表されるクジラのトン数とはまた別のものですね?

告発者: 以外、それ以外ですね。これはずっともう昔からやってるみたいです。

(中略)
GP: 具体的に、隠して持って帰ってくるというのは、理由なども何もなくてただ隠れて持ち込むっていう形ですか?

告発者: 家でただ食べるだけだったらそんな量いらないですよね。だから、あの、それぞれが、10年、20年乗ってる人はもう地元とか、その辺の市場に売りさばいてるって感じですね。

GP: それは具体的にはどういう風な形で、証拠というんですかね、売りさばいてるって聞いたことがあるとかって、そういうことはありますか?

告発者: それは、乗組員の人に聞きました。ベーコンだけで家を建てるぐらい売ったよっていう人もいましたし。(http://web2.rederio.org/gp/doss.pdf
◆   ◆   ◆

 そして、宅配便の1箱40万円から120万円の価値があるという。合計で少なくとも1880万円から5640万円の税金相当額の鯨肉が乗組員の自宅などに送られていた。

 素直に考えれば、それだけ税金の負担が増えたことになるのではないだろうか…。

 グリーンピースは、宅配業者が配達していた過程で疑惑の宅配便のうちの一個を確保し、この事実を社会に明らかにした。



 以上が今回の登場人物とルール、そして実際に行われた行為だ。

 あなたは、政府の役人、財団法人日本鯨類研究所の理事職員、共同船舶の経営者、共同船舶の乗組員で鯨肉を塩漬けにして配達した人、グリーンピースのメンバー、検察官のうち、だれになりたいですか?

 あなたは、自分の好きな人が、政府の役人、財団法人日本鯨類研究所の理事職員、共同船舶の経営者、共同船舶の乗組員で鯨肉を塩漬けにして配達した人、グリーンピースのメンバー、検察官のうちだれであってほしいですか?

 あなたは、自分の子供に、政府の役人、財団法人日本鯨類研究所の理事職員、共同船舶の経営者、共同船舶の乗組員で鯨肉を塩漬けにして配達した人、グリーンピースのメンバー、検察官のうちだれになってほしいですか?

 あなたが映画監督だとしたら、だれを主人公にした映画を撮影したいですか?

 
 写真はhttp://web2.rederio.org/gp/doss.pdfより


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★「憎しみはダークサイドへの道、苦しみと痛みへの道なのじゃ」(マスター・ヨーダ)
★「政策を決めるのはその国の指導者です。そして,国民は,つねにその指導者のいいなりになるように仕向けられます。方法は簡単です。一般的な国民に向かっては,われわれは攻撃されかかっているのだと伝え,戦意を煽ります。平和主義者に対しては,愛国心が欠けていると非難すればいいのです。このやりかたはどんな国でも有効です」(ヒトラーの側近ヘルマン・ゲーリング。ナチスドイツを裁いたニュルンベルグ裁判にて)
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メディアはなぜ硫化水素による自殺を報道し続けるのか~WHOのガイドラインを読んだことがないのか

2008-05-16 06:22:16 | メディア(知るための手段のあり方)
 いつまでたっても、メディアが硫化水素の自殺報道を続けている。もういい加減にしてほしい。硫化水素自殺によって周囲に危険を及ぼすことは十分に分かった。もうそれで十分でしょう。これ以上、硫化水素自殺を報道することに何の意味があるのだろうか…。

 WHOのガイドライン『自殺を予防する自殺事例報道のあり方について』(※1)には、明確に、自殺の方法を報道しないように書かれている。

「Detailed descriptions of the method used and how the method was procured should be avoided. Research has shown that media coverage of suicide has a greater impact on the method of suicide adopted than the frequency of suicides. Certain locations - bridges, cliffs, tall buildings, railways, etc. - are traditionally associated with suicide and added publicity increases the risk that more people will use them. 」

「自殺の方法とその方法をどのように学んだのに関する詳述は避けるべきである。 これまでの研究で、自殺報道に関するメディアの影響は、自殺の頻度よりも自殺の方法に与える影響の方が大きいことが分かっています。 ある場所-橋、がけ、高層建築、鉄道など - 自殺に伝統的に関連しており、それらを報道するとより多くの人々がその方法を使用するという危険を増加させることになります」

 現在の硫化水素自殺に関する報道は、まさに、自殺の方法とその方法をいかに学んだかについて執拗に垂れ流している状態だといってよい。確かに、関心事ではあるだろうが、関心事であるから報道するというだけでは、たとえばプライバシー侵害をしたってかまわないということになる。プライバシーを侵害する報道は避けるように、人の死を誘発する報道は避けるべきではないだろうか。

 米国自殺予防財団は、次のように指摘している( ※2)。

「...between 1984 and 1987, journalists in Vienna covered the deaths of individuals who jumped in front of trains in the subway system. The coverage was extensive and dramatic. In 1987, a campaign alerted reporters to the possible negative effects of such reporting, and suggested alternate strategies for coverage. In the first six months after the campaign began, subway suicides and non-fatal attempts dropped by more than eighty percent. The total number of suicides in Vienna declined as well.」

「...1984年から1987年の間に、ウィーンのメディアは地下鉄での飛び込み自殺を報道しました。 報道は、大きく扱われ、劇的なものでした。 1987年に、そのような報道の問題点について警告が発せられ、報道について別の形を採用するよう示唆するキャンペーンがなれました。このキャンペーンが始まった6カ月間で、地下鉄自殺と自殺未遂は80パーセント以上下がりました。 それに伴い、ウィーンの自殺の総数も同様に低下しました。」

もちろん、メディアが報道しなくてもインターネットがあるじゃないかという話になるが、インターネットの影響力はまだ小さい。今後、インターネットでも自主規制をする必要があろうが、まずは、マスメディアの報道を改めるべきであることは明白だ。

硫化水素自殺による遺体の状況が悲惨なものであることを書いた記事などがあったが、それは自殺防止に貢献するものであり、とても重要な報道だと思う。しかし、単に硫化水素による自殺があったという報道は、もう意味がないはずだ。


※1:http://www.who.int/mental_health/media/en/426.pdf


※2:http://www.afsp.org/index.cfm?fuseaction=home.viewPage&page_id=7852EBBC-9FB2-6691-54125A1AD4221E49





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