産経新聞が【映画「靖国」助成が問いかけるもの】というタイトルで、【靖国神社を題材にした映画「靖国YASUKUNI」の上映自粛をきっかけに、国会などにまで広がった論争は、文部科学省による助成のありようについて、さまざまな疑問点を浮かび上がらせた。審査段階と内容がかけ離れた作品の助成金交付は止められなかったのか。さらにいえば審査は適正だったのか。そもそも芸術作品の適否を行政が判断できるものなのか…】というテーマの記事(※1)を掲載している。
3つのテーマのうち、個人的に興味があるのは、最後のテーマ、すなわち、「芸術作品の適否を行政が判断できるのかどうか」ということだ。気になったので、記事を読み進めた。
この記事は、審査請求した時点と完成した映画の内容が違うことについてかなりの分量を割き、批判的にとらえている。この点については、映画、しかも、ドキュメンタリーが企画どおりにいくはずもなく(…企画どおりいったらやらせだ)、いい影像がとれればそれを中心に据えるのも当然だと思う。
次に、審査について、委員が16本から4本を選んだ審査はたった3時間であり、厳格なものとはいえないと指摘する。しかし、16本から4本を選ぶのに、3時間あれば十分なような気もするが…。
最後に、【映画が芸術である以上、可否を判断すること自体がそぐわないという声もある】と指摘したうえ、【映画評論家の浅野潜(せん)さんは、「映画を自国の文化と重んじる韓国では、一作品に億単位の支援をしながら内容には踏み込まない。その方針が、現在の隆盛を築いた。助成対象でも、内容は自由であるべきでは」】というコメントを紹介している。そのとおり!
冒頭の画像は、ハリウッド映画を世界に浸透させた米国の映画振興政策に関する情報が記載されたもので、「原典メディア環境1851~2000」(東京大学出版会)からの引用だ。
1917年、第1次大戦に参戦した米国は、クリール委員会なるものを立ち上げ、アメリカ政府にとって役に立つ映画を欧州で上映させようと努めた。つまり、
映画をプロパガンダの手段としたのだ。
輸出される娯楽映画には最低20%は「教育的事象」を含まなければならないとされたが、ここでいう「教育的」とは、「われわれの学校、われわれの産業界、われわれの戦争準備、われわれの資源、われわれの社会の進歩を映し出す映画のことを意味している」とクリールは自伝で述べている
それから、10年後の1926年、米連邦議会は1万5000ドルの予算で映画振興を行うこととした。映画の内容もチェックしないで連邦政府が映画輸出のスポンサーになるのはおかしいという批判もあったが、この振興策の結果、アメリカ映画が世界のスクリーンを占めるに至った。
そして、産経新聞が指摘しているように、お隣の韓国でも、内容を問わず、億単位の援助をした結果、世界的にも注目されるようになってきた。助成の対象になったかどうかは知らないので知っている方は教えてほしいが、「シルミド」や「光州」など、事件当時の政府を批判するような映画も制作され、ヒットするようになった。
内容に応じて助成していたのでは、韓国映画のこのような急激な隆盛はなかったはずだ。日本の国会議員の皆様にも少し文化とは何か、文化振興とは何かを学んでもらう必要がありそうだ。
※1:http://sankei.jp.msn.com/culture/academic/080511/acd0805110839007-n1.htm
★「憎しみはダークサイドへの道、苦しみと痛みへの道なのじゃ」(マスター・ヨーダ)
★「政策を決めるのはその国の指導者です。そして,国民は,つねにその指導者のいいなりになるように仕向けられます。方法は簡単です。一般的な国民に向かっては,われわれは攻撃されかかっているのだと伝え,戦意を煽ります。平和主義者に対しては,愛国心が欠けていると非難すればいいのです。このやりかたはどんな国でも有効です」(ヒトラーの側近ヘルマン・ゲーリング。ナチスドイツを裁いたニュルンベルグ裁判にて)
★「News for the People in Japanを広めることこそ日本の民主化実現への有効な手段だ(笑)」(ヤメ蚊)
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3つのテーマのうち、個人的に興味があるのは、最後のテーマ、すなわち、「芸術作品の適否を行政が判断できるのかどうか」ということだ。気になったので、記事を読み進めた。
この記事は、審査請求した時点と完成した映画の内容が違うことについてかなりの分量を割き、批判的にとらえている。この点については、映画、しかも、ドキュメンタリーが企画どおりにいくはずもなく(…企画どおりいったらやらせだ)、いい影像がとれればそれを中心に据えるのも当然だと思う。
次に、審査について、委員が16本から4本を選んだ審査はたった3時間であり、厳格なものとはいえないと指摘する。しかし、16本から4本を選ぶのに、3時間あれば十分なような気もするが…。
最後に、【映画が芸術である以上、可否を判断すること自体がそぐわないという声もある】と指摘したうえ、【映画評論家の浅野潜(せん)さんは、「映画を自国の文化と重んじる韓国では、一作品に億単位の支援をしながら内容には踏み込まない。その方針が、現在の隆盛を築いた。助成対象でも、内容は自由であるべきでは」】というコメントを紹介している。そのとおり!
冒頭の画像は、ハリウッド映画を世界に浸透させた米国の映画振興政策に関する情報が記載されたもので、「原典メディア環境1851~2000」(東京大学出版会)からの引用だ。
1917年、第1次大戦に参戦した米国は、クリール委員会なるものを立ち上げ、アメリカ政府にとって役に立つ映画を欧州で上映させようと努めた。つまり、
映画をプロパガンダの手段としたのだ。
輸出される娯楽映画には最低20%は「教育的事象」を含まなければならないとされたが、ここでいう「教育的」とは、「われわれの学校、われわれの産業界、われわれの戦争準備、われわれの資源、われわれの社会の進歩を映し出す映画のことを意味している」とクリールは自伝で述べている
それから、10年後の1926年、米連邦議会は1万5000ドルの予算で映画振興を行うこととした。映画の内容もチェックしないで連邦政府が映画輸出のスポンサーになるのはおかしいという批判もあったが、この振興策の結果、アメリカ映画が世界のスクリーンを占めるに至った。
そして、産経新聞が指摘しているように、お隣の韓国でも、内容を問わず、億単位の援助をした結果、世界的にも注目されるようになってきた。助成の対象になったかどうかは知らないので知っている方は教えてほしいが、「シルミド」や「光州」など、事件当時の政府を批判するような映画も制作され、ヒットするようになった。
内容に応じて助成していたのでは、韓国映画のこのような急激な隆盛はなかったはずだ。日本の国会議員の皆様にも少し文化とは何か、文化振興とは何かを学んでもらう必要がありそうだ。
※1:http://sankei.jp.msn.com/culture/academic/080511/acd0805110839007-n1.htm
★「憎しみはダークサイドへの道、苦しみと痛みへの道なのじゃ」(マスター・ヨーダ)
★「政策を決めるのはその国の指導者です。そして,国民は,つねにその指導者のいいなりになるように仕向けられます。方法は簡単です。一般的な国民に向かっては,われわれは攻撃されかかっているのだと伝え,戦意を煽ります。平和主義者に対しては,愛国心が欠けていると非難すればいいのです。このやりかたはどんな国でも有効です」(ヒトラーの側近ヘルマン・ゲーリング。ナチスドイツを裁いたニュルンベルグ裁判にて)
★「News for the People in Japanを広めることこそ日本の民主化実現への有効な手段だ(笑)」(ヤメ蚊)
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