情報流通促進計画 by ヤメ記者弁護士(ヤメ蚊)日隅一雄

知らなきゃ判断できないじゃないか! ということで、情報流通を促進するために何ができるか考えていきましょう

【速報】国連人権理事会で日本の人権状況が明日審査!~海渡雄一弁護士の現地レポート

2008-05-08 23:14:20 | 適正手続(裁判員・可視化など)
 日本が国連人権理事会の新人権審査制度「UPR(普遍的定期的審査)」による審査(※1)を受けていることは先日のエントリーで触れたばかりだが、審査で政府報告に対するカウンターレポートを発表する予定の海渡雄一弁護士からとれたての現地レポートが届いたので、紹介したい(★審査時間に変更があったようです)。この審査は、国連憲章、世界人権宣言、人権条約などを基準として、対象となった国の人権状況を審査するものだ。日本は刑事司法制度を中心に、先進国としては異例なほどの人権侵害状況が残されている国であり、厳しく審査されると思われる。

 海渡雄一弁護士のレポートは次のとおりだ。

 ◆    ◆    ◆

 みなさん、5月9日午後2時半(ジュネーブ時間)から午後5時半まで国連人権理事会の第2回普遍的定期的審査作業部会において日本の人権状況について審査が行われます。日本時間では、午後9時半から12時半までです(★9日の深夜から10日の未明にかけてということです)。
 私は、いま日弁連代表団の一員としてジュネーブに来ています。
 この審査の状況はすべて国連のウェブキャストで世界に同時中継されています。以下のアドレスで見られます。
 http://www.un.org/webcast/unhrc/index.asp 

 国連人権理事会が発足して2年がたちます。日本は自ら立候補して理事国となりました。人権理事会の新しい重要な制度として普遍的定期的人権審査が設けられました。同制度は、昨年一応の制度設計が終わり、今年から実施が始まったばかりです。今回ジュネーブに来てわかったことですが、人権理事国その他の国連加盟国、国連人権高等弁務官事務所とNGOも、この制度のより効果的な実施をめざし手探りで模索している状態です。

 今回、日弁連は、国連人権高等弁務官事務所に対し報告書を提出し、日本の人権状況について、
①国連条約機関からの勧告の速やかな実施
②パリ原則に従った国内人権機関の設置
③個人通報制度を定めた人権諸条約に関する選択議定書の批准
④代用監獄の廃止、取調可視化及び長期取調べの禁止
⑤死刑制度存置に伴う重大な人権侵害の指摘及び死刑執行の即時停止
⑥日本社会に存在する様々な差別、特に、外国人、婚外子、女性に対する公的機関による差別の撤廃及び私人による外国人、民、アイヌ、婚外子、女性、障がいのある人に対する差別の撤廃に向けた取組み
 を求めています。

 9日の作業部会における審査は、政府の報告書と共に、日本に対する国連の条約機関や特別報告者からの報告をまとめた報告書、及び、NGOからの情報提供の要約に基づいて行われます。この資料もすべて国連の次のホームページで見ることができます。

 http://www.ohchr.org/EN/HRBodies/UPR/PAGES/JPSession2.aspx

 また、今回の審査の直前には、ジュネーブ国連本部会議場内でNGOによるブリーフィングのための会議を主催し、日本の人権審査に関するNGOからの情報提供・意見表明の場を設けました。
 日弁連が作成した志布志の冤罪事件のドキュメンタリーフィルムの予告編の上映を行いました。また参加されたNGOであるアジア女性資料センターと韓国で従軍慰安婦問題を取り扱っているNGOから、日本政府による従軍慰安婦に対する謝罪・賠償を求めるという意見が述べられました。

 また、反差別国際運動からは私人による差別の規制立法の制定を強調する意見が表明されました。
 また、マリーニョ・メネンデス拷問禁止委員会委員が参加され、代用監獄制度の速やかな廃止を重ねて求めるとの発言がなされました。

 9日行われる予定の審査は日本の今後の人権状況について重大な影響を持つものと思われます。
 9日のワーキンググループでの審査を踏まえ、審査の結果は、6月に行われる人権理事会において日本に対する勧告を含む結論として採択される予定になっています。
 ぜひ、一人でも多くの皆さんがこの審査の状況をウェブキャストを通じてごらんになっていただきたいと思います。

 ◆    ◆    ◆

 ようするに、日本は国連人権理事会の理事国の立候補してみたはいいが、自らの人権状況が心許ないことが早くも世界に顕わになってしまうということのようだ。

 「それでも僕はやっていない」で世界を驚かせた刑事手続きの問題だけでなく、死刑制度、いわゆる従軍慰安婦問題などについて、厳しい判断が下されそうだ。

 一体、政府が何を述べ、世界は何とつっこむか、ぜひ、ウェブサイトを見てほしい!






★「憎しみはダークサイドへの道、苦しみと痛みへの道なのじゃ」(マスター・ヨーダ)
★「政策を決めるのはその国の指導者です。そして,国民は,つねにその指導者のいいなりになるように仕向けられます。方法は簡単です。一般的な国民に向かっては,われわれは攻撃されかかっているのだと伝え,戦意を煽ります。平和主義者に対しては,愛国心が欠けていると非難すればいいのです。このやりかたはどんな国でも有効です」(ヒトラーの側近ヘルマン・ゲーリング。ナチスドイツを裁いたニュルンベルグ裁判にて)
★「News for the People in Japanを広めることこそ日本の民主化実現への有効な手段だ(笑)」(ヤメ蚊)
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早稲田大学が極秘裏に準備した胡錦涛演説と卓球ペア戦~ん、極秘?!

2008-05-08 10:29:21 | そのほか情報流通(ほかにこんな問題が)
 早稲田大学の水島朝穂教授が、胡錦涛氏の早稲田大学での演説に反対している(※1)。いくら、チベットの件があったとはいえ、大学での講演くらいは構わないのではないか?どんどん質問をしたり、プラカードでアピールすればいいのではないか、最初、そう思った。しかし、水島教授の反対理由を読むうちに、こりゃ、反対するのも当然だと思えたので、紹介することにした。

【明日(5月8日)、中国の胡錦濤国家主席が大隈講堂で講演を行う。結論からいえば、私はこの来学を歓迎しない。むしろ、大学理事会は、大学としての見識を発揮して、これを断るべきであった。しかし、理事会は胡錦濤来学を演出し、福原愛選手(スポーツ科学部)+福田首相vs胡錦濤氏+中国選手の卓球のダブルスまでセットした模様である。これで、メディアは和気あいあいムードを演出するのだろうが、内閣支持率19.8%(共同通信5月2日)の福田首相の起死回生になるとはとうてい思えない。そんな茶番劇に協力する大学に、情けないを通り越して、悲しみすら覚える。

  一般に、外国の賓客が来学し、講演を行うときは、事前に教職員に対して参加を募る案内が届く。限られた範囲の人々を集めるような講演会でも、関連科目の担当教員には招待状が来る。学生の参加を募ることもある。しかし、今回は、講演会があることすら伏せられ、前日になっても公式ホームページに情報提供は一切ない。少なくとも私の所属する法学部の中国語関係の教員に対して講演会への参加案内はなかった。法学部がそうなのだから、全学的に中国関係の教員・研究者に参加を呼びかけるということはなされなかったとみてよい。全学に中国語を履修する学生はたくさんいるが、そういう学生たちに講演会への参加がアナウンスされることもなかった。大隈講堂に入れる早大生は、1998年11月の江沢民主席来学時のような、一般公募の学生たち(その個人情報の扱いをめぐって訴訟にまで発展したところの)ではなく、40人前後の「身元の確かな」中国留学経験者だけである。彼らには、事前に「政治的な質問はしないように」という趣旨のことが伝えられたようである。
  そして、明日、大隈講堂の一階前よりの座席を埋め尽くすのは、胡錦濤主席と一緒に来日した中国共産主義青年団の精鋭200人とみられている。昨日、軽井沢で静養した彼らは、元気いっぱいで「警護任務」につく。胡錦濤氏はこの青年団の出身で、1984年にその第一書記(最高指導者)に登りつめた人物である。中国共産党のエリート養成機関であり、まさに彼らは胡錦濤氏の「親衛隊」といってよいだろう。この親衛隊があたかも学生の聴衆のように拍手を送る。明日の夕方のニュース映像には、早大生が拍手しているように映るのだろうが、中国製の「サクラ」である。
   このように、 早大の教職員も学生もあずかり知らないところで、「早稲田大学は、胡錦濤主席を歓迎する」という行事がとりおこなわれる。これは相当な疑問符である。】

もちろん、警備上の問題からある程度秘密にする必要はあるだろうが、では、そこまでして招待するべきだったのか、とも思う。少なくとも、学内手続きを経ないやり方、現首相の人気取りに一役買うことへの無批判さには疑問がある。



※1:http://www.asaho.com/jpn/index.html






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宣伝下手な日弁連~人権の擁護者として堂々と語れ!

2008-05-08 02:05:43 | そのほか情報流通(ほかにこんな問題が)
 皆さんは、当番弁護士制度って一度は、聞かれたことがあると思います。逮捕されて一体自分がどうなるのか、不安に思ったり、冤罪なのに警察に自白を迫られたりしたときに、弁護士を呼びたいって思いますよね。そんなときに、全国の弁護士会が無料でその日の当番担当の弁護士を派遣してくれる制度です。当番弁護士を呼んでくれっと言えば、1回は無料で身柄をとられている警察署まで弁護士が駆け付け、接見してくれる制度です。

 国費で弁護人をつける国選弁護は、ついこの間までは、逮捕・勾留中は利用できず、起訴されて初めて利用できる制度だった。したがって、約20日に及び逮捕・勾留中の期間中に、強引な取り調べを受けて、偽りの自白をさせられてしまった者も多かった。

 そこで、弁護士会は、捜査段階である逮捕・勾留中に、無料で弁護士を派遣し、直ちに相談を受け、場合によっては、私選弁護を受け、また、資力のない人にはリーガルエイドである扶助協会の立て替え制度を利用してもらうことで私選弁護を引き受けるというシステムで、違法捜査の被害者をできるだけ減らそうと試みてきた。

 この当番弁護士制度は、92年には6500件だったが、2006年には6万7000件にまで増えた。勾留請求(逮捕=最大3日間の身柄拘束=だけで身柄を釈放されずそのまま通常さらに20日間身柄を拘束することを勾留という)された件数と比較すると47%にも上るという。

 この当番弁護士制度には、最近まで国費が出ておらず、完全に弁護士会及び弁護士がボランティアとして行っていた。司法改革制度の中で、段階的に国費が投入されるようになっているが、それでも「死刑または無期若しくは長期3年を超える懲役または禁固の事件」が対象に過ぎない。それ以下の事件については、結局、国費は出ない…。

 弁護士会は、こうした状況をきちんと市民に説明し、国費負担で起訴前段階での弁護を行える制度を導入するよう訴えるべきだ。

 そのほかにも、弁護士会は、消費者法制などの研究・提言、人権救済申立事件など様々な活動をしているが、それらも全くのボランティアだ。

 弁護士会は、そのような活動についても、もっと市民に分かってもらえるよう努力するべきだ。堂々と宣伝し、本来、国費をつけるべき部分は国費をつけるよう市民に訴えかけるべきなのだ。

 零細事業主たる弁護士が労力だけでなく金銭的負担までしていたのでは、その分野の活動を伸ばすことはできない。各弁護士の誠意の範囲内でやれることをやるしかなくなるからだ。もちろん、信じられないような努力をしている弁護士やそれを支える弁護士会も多い。

 たとえば、今年5月、日本は、国連人権理事会の新人権審査制度「UPR(普遍的定期的審査)」による審査を受ける(※1)。これは、国連憲章、世界人権宣言、人権条約などを基準として、その国の人権状況を審査するものだ。日本は刑事司法制度を中心に、先進国としては異例の人権侵害国家であり、厳しく審査されるだろう。

 しかし、この審査ははるかジュネーブで行われる。日本政府は政府報告書を提出するが、そこには政府に都合のよいことしか書かれていない。そこで、日弁連が政府報告書の誤りなどを指摘するカウンター報告書を提出し、ジュネーブでプレゼンをすることになっている。ここには、弁護士4名が出席する。もちろん、弁護士会が経費を負担するが、全額ではない。航空運賃さえ、出席弁護士の一部負担となっているのが実態だ。事前の準備などにかける労力も含め、出席する弁護士、支える弁護士の負担の大きさは十分、理解してもらえると思う。

 日本に関する審査は、日本時間で5月9日午前7時半~10時半までの間、行われる予定だ。インターネット中継(ウエブキャスト)される予定(※2)。もしかしたら、生中継もありかも…。いずれにせよ、政府代表と日弁連代表のいずれが説得力のあるプレゼンができるか、ぜひ、見てほしい。

 話がやや脱線したが、このようなジュネーブでの活動も、一部の弁護士の善意によって成り立っている。いや、それぞれの分野でそれぞれを得意とする弁護士がそれぞれの善意を発揮して人権擁護に取り組んでいる。

 このことを多くの市民に知ってもらわなければならない。

 本当に政府が市民のための政策を行おうと考えるのであれば、批判は歓迎すべきはずだ。自らでは目が曇ってしまいがちな問題点を第三者であればこそ発見することができ、早期に改善すれば、市民のためにもなるはずだ。

 したがって、日弁連の人権擁護活動に国費による援助がなされても全く不思議はない。むしろ、そうすることで、政府が真に人権活動に取り組んでいることをアピールできるはずだ。

 弁護士の誠意に頼らないシステムをつくるために弁護士会が自らの活動を宣伝することから始めましょう。

(PR:ジャーナリストの誠意も大事だが、それに頼りっぱなしの制度では、権力には勝てない。権力を監視するマスメディアを実現するための1冊…「マスコミはなぜマスゴミと呼ばれるのか-権力に縛られたメディアのシステムを俯瞰する」(※3)。好評発売中) 
 


※1:http://www.nichibenren.or.jp/ja/kokusai/humanrights_library/upr/data/upr_gaiyou.pdf

※2:http://www.upr-info.org/-Webcast-.html

※3:http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4877983716/hanmotocom-22







★「憎しみはダークサイドへの道、苦しみと痛みへの道なのじゃ」(マスター・ヨーダ)
★「政策を決めるのはその国の指導者です。そして,国民は,つねにその指導者のいいなりになるように仕向けられます。方法は簡単です。一般的な国民に向かっては,われわれは攻撃されかかっているのだと伝え,戦意を煽ります。平和主義者に対しては,愛国心が欠けていると非難すればいいのです。このやりかたはどんな国でも有効です」(ヒトラーの側近ヘルマン・ゲーリング。ナチスドイツを裁いたニュルンベルグ裁判にて)
★「News for the People in Japanを広めることこそ日本の民主化実現への有効な手段だ(笑)」(ヤメ蚊)
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